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先日、カンボジア・プノンペンにある日系のショッピングモールで背中を叩かれた。振り返ると、目のパッチリしたフィリピン系の南国女性がニッコリ……。

思わず微笑み返してしまうと、スレンダーな身体をよじった彼女は、ゆっくりした英語で大の日本びいきをアピール。プノンペンには友達がいないの。日本の話をもっと聞かせて! と食事に誘われた……。

自分でもびっくりするほど冷静に「ああ、またか」とシカトする私。女はしつこく話しかけてきたが「カンボジアにどのくらいいるの?」という質問に「15年以上いるよ。ケケケ」と薄気味悪く答えるといなくなった。

さて、私は決して皆さんにモテモテぶりを自慢したいわけではない。夏休み、東南アジアでケツの毛まで抜かれないよう警戒を促しているのだ!

・誰もが熟知する古くさい手口に騙される人々!

カンボジアではここ数年、判で押した同様の手口で、毎年大勢の日本人旅行者が百万円単位のお金を騙し取られている。

現地の日本大使館には、2011年から2014年5月までの3年半で、50人近い被害者が駆け込んでいるそうで、届けを出さず泣き寝入りした人は何人いるか見当もつかない。

実はこれ、はるか20数年前から、色んなガイドブックが口をそろえて注意を促している古典的詐欺。手口も結末もすべて一緒、半ば伝統芸能の域に達しているが、それでも騙される人が後を絶たない。

では、実際に彼らと交流するとどうなるのだろう? 実は最近、数名の被害者を間近で観察する機会があった。いずれも大使館に未届けの闇ケースだが、なかでも典型的な例として、昨年、プノンペン市内の安宿の受付で号泣していた、ある日本人女性のお話を紹介したい。

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・ワタシのお金で仲間のみんなを助けなきゃ!

初めての海外旅行でプノンペンを訪れた彼女。王宮近くでマレーシア人を名乗る男性から英語で声をかけられ、一緒に観光。仲良くなった。

翌日、自称マレーシア人の友人宅で食事をご馳走になり、食後、皆で楽しくトランプをしたところ、なんと連戦連勝。

「筋が良いねえ、天才だねえ」と褒められ、いい気になっていると「現地人のバカな金持ちがいる。俺らチームでカモってやろう」と、いつの間にかチームの一員にされていた。

その夜、仲間とブロックサインの練習を繰り返した彼女は、移動のさい細い路地を行ったり来たりされ、場所は全く覚えていないものの、ドラクエ気分で金持ちの家に乗り込んだ。

やって来た国籍不明の成金オヤジといざ勝負。しょっぱな僅かに勝つが、あっという間にすっからかん。しかし仲間たちから「奴の手は見切った。あとすこしで逆転できる」と執拗に迫られ「ワタシが動けば仲間が助かる!」と半ば自発的にATM行脚を決心……。

結果、ATMの金ばかりか、クレジットカードで宝石を買って換金させられるなどして、百万円以上の金をだまし取られた挙げ句「明日は僕らがタネ銭を出すよ。君の復讐戦だ!オーッ!」と、恩着せがましい決意表明の後、全員音信不通になってしまったとか──。

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・すっからかんにされて、まだ気がつかない人も!

思えばあからさまに不自然な流れだが、「怪しい」と思いながらも、博愛精神で相手をしたのが運の尽き。メンバー総出で後に引けない雰囲気を作られ、詐欺と気付いたのは一文無しになってから。外面が良く「断れない」日本人の性質を利用した巧妙な手口だ。

今年の春、ビジネスでカンボジアに来たある日本人男性は、ほとんど同じ手口で500万円以上も負け、ATMとクレジットカードで負け分を支払った末、ご丁寧に足りない金を日本まで取りに帰ろうとしたところ、知り合った日本人の説得でようやく思い留まったという(こちらも大使館には届け出ていない)。

事態を危惧した在住日本人の中には、観光客のふりをしてショッピングセンターでわざと声をかけられ、グループの顔を撮影した強者もいるが、警察が動く様子は今のところなし。

もうすぐ夏休み。国際交流も大切だけど、(いい歳こいて)路上で話しかけてくる奴を相手にしない。怪しい儲け話に足を突っ込まない。以上二点を守って海外旅行を楽しんでいただきたい。

Report : クーロン黒沢
Photo : Rocketnews24.

▼日本大使館の注意喚起。常にほぼ同じ筋書きが展開する
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▼数万ドルを奪われたビジネスマンの書いた反省文
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▼日本人の多いモールでカモ探しに励むメンバー(冒頭の女性とペア)
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