【実録】音楽業界の闇!『詐欺レーベル』に40万円以上貢いだバンドマンが見た衝撃の光景「事務所に呼ばれて行ったら……」(その2)


レーベルに所属し、初めてイベントに出た時、坂東太郎さんは愕然とすることになる。理由は以下の通り。

坂東太郎「15時くらいから夜遅くまで続くイベントは、トップの出番では全然お客さんがいなかったんです。ちなみに、順番はノルマから何枚チケットをプラスで買い取れるかで決まっていました。

客が増えるのは19時以降で、このゴールデンタイムに出るには、さらに3万円以上チケットを追加しないといけない。他のバンドの集客を見るに、ノルマがはけているようには見えなかったので、自分たちで買い取っていたんだと思います」

──ここでも金……。

坂東太郎「また、常連の出演者は確かに仲が良く、レーベル内ではある程度人気なんですが、メジャーに引き抜かれる気配はありませんでした」

結局、坂東太郎さんは、かなり間を空けて3回ほどイベントに出たっきりになった。すると、山田さんからの風当りはどんどん厳しくなったという。

坂東太郎「ミーティングではいないように扱われたり、SNSで私がコメントした時だけ返信がなかったり、小さいことの連続でしたが、1回1回精神的なダメージを受けてました。

そんな時、持ち上がったのがCDリリースの話です。CDをタワーレコードでリリースできると。さらに、事務所にスタジオがあり、無料でレコーディングできるとのことでした」

そこで、言われるがままに事務所に出向いた坂東太郎さんは、衝撃の光景を目にすることになる。

坂東太郎「住所の場所は普通のマンションの1室。チャイムを押すと、山田さんが扉を開けたので、そこでやっと住所が間違ってなかったことに安心したくらいです。

中に入ると、4つほどある部屋にレーベルのバンドマンたちがひしめき合って作業をしていました。そして、バンドマンたちが騒ぐ中、山田さんはリビングっぽい部屋にある家庭用PCを指さしレコーディングをするように指示しました。

噂のスタジオは、1人入ればいっぱいの狭い押し入れにネットショッピングで買ったような緩衝材を貼っただけのもの。そこにカツカツで歌録り用のマイクだけが立ってました。ただの押し入れなので汗だくで歌を録りましたね」

──事務所とは何だったのか……家でやった方がマシですね。

坂東太郎「はい。とは言え、CDをリリースすることは夢で、他で録ったものを認めてくれそうにもなかったので、当時慣れないDTMでなんとか録り終えました。すると、リリースするために、またお金が必要になったんです。1曲8万円くらいだったかな。もちろん、CDのプレス代などとは別に」

──払ったんですか?

坂東太郎「払いました。ここで諦めたら今まで耐えてきたことが全部無駄になると思ったので。最終的にそのレーベルには40万円くらい貢いでしまったかもしれません。

でも、そうまでしてリリースしたCDはタワーレコードの棚の隅に1カ月くらい並んだだけで全く売れずに姿を消しました。意味ないんですよね。リリースするだけじゃ。その時に、もうやめようと決心したんです。

ちなみに、やめる時にも解約料みたいな感じで10万円くらい請求されましたが、法律事務所に相談して内容証明を送ったらあっさり引き下がりました

・詐欺レーベルの見分け方

その一件により、自分の未熟さを思い知ったという坂東太郎さんは、バンド活動をコツコツ続けて見事デビュー。現在も音楽で生計を立てている。そんな坂東太郎さんが思う詐欺レーベルの見分け方とは?

坂東太郎「HPを見て、所属に知らない人しかいないところは、いくら良い情報が並んでいようが黄信号ですね。逆に小さい事務所でも、ミュージシャン界隈で知れ渡っているような人がいれば大体大丈夫です。

知らない人しかいないけど、どうしても気になるという人は一度会ってみるのも手ですね。ただし、ライブイベントに出演して云々という条件があれば、ノルマ、リリース、レコーディングなどの料金を全部聞き、自分で活動するよりお金がかかるなら、どんなにおいしい話をちらつかされても迷わず断ることをオススメします。

本当に売り出してくれる所属して意味のある事務所なら、リリースやレコーディング、流通、宣伝に関して通常一切お金は請求されません。アーティストにスタジオや力を貸す代わりに著作権料を折半して回っているものなので。それだけに売り上げに関してはシビアですが。

また、お金を取られなくとも、マルチ商法や宗教の勧誘が行われる場合もあるようですので注意してください。騙される人は、ウマくやったら甘い汁が吸えるかもと考えがちですが、1つだけ確実に言えるのは、詐欺レーベルに関わって得することなんてありません。後は自己責任で」


──ありがとうございました! 音楽業界が不況になり、メジャーアーティストでさえ食べていけない昨今だが、未だになくならない詐欺レーベル。

DTMや流通も進化し、自分だけでも十分リリースが可能な現代でも騙される人がいるのは、レーベルや事務所の不透明さと人の心の弱さが大きいのかもしれない。

Report:中澤星児
Photo:Rocketnews24.