
「迷子になりたい」、少し前にそんなコラムを書いた。スマホがある限り、日常で迷子になることはほぼなくなった。便利で楽にはなったけど、土地勘は乏しくなり頭の中に上手く地図が描けなくなっている。はたして利便性は、私たちを賢くしているのだろうか?
そんな疑いを持った私(佐藤)は、スマホのアプリ制限を使って、あえて地図アプリをオフにして、行ったことのない場所を訪ねることにした。
まずは手始めに近いところで、東京・雑司ヶ谷の鬼子母神へと向かう。JR目白駅からわずか徒歩12分。未知とはいえ、迷うわけがないほど近距離なのに、私は見事に迷子になった! おかげで脳内に上手く地図が描け、一気にこの辺の土地勘を得ることに成功した。
・迷ってもいい
実をいうと私は結構前、もしかしたら10年くらい前の40代の頃から迷子になりやすくなっている節がある。地図アプリを見ていても、道を間違うことがしばしば。歳と共にその頻度が高くなっている気がするのだ。
なおさら、地図アプリを欠くことができないはずなのだが、なんだかちょっと煩わしくも感じていたんだよなあ。正しい道を行こうとするがあまりに、周りの景色を見るゆとりはなくなり、理由もなく先を急ごうとしてしまう。
迷ったとしてもゆっくりだったとしても、別にいいじゃないか。日本国内で目的地にたどり着けないなんてことは、そうそうないんだから、慌てず急がず、街の様子や付近の景色を楽しむくらいのゆとりを持って行こう。今日はその手始めに、鬼子母神に向かうのだ、地図なしで。
・地図なしで鬼子母神へ
さすがに、予備知識ゼロで最寄駅すら知らない状態で行くのは難しいので、パソコンで目白駅から近いことを確認した。中野駅から電車に乗って、まずは目白に行こう。
出発前に、まずは地図アプリをオフにする。Androidのフォーカスモードで「マップ」をオフ!
よし、これでもう地図は見られないぞ。やったぜ、迷子になる準備は万端だ。
それで目白はどう行くんだっけ? わかっているけど、一応路線図を見る。券売機の上に掲出されているこれを見上げるのは、久しぶりな気がするな。
新宿乗り換えで目白駅へ、中野からだと210円だな。
ということで、ここまで半分自動的に着きましたよ。まあ、電車を乗り継ぐだけだからね。ここからが戦いの始まりだ!
駅にある案内版を見ると……。
あれ? 見当たらん。まさか書いてないとか? そんなわけがない、あの有名な鬼子母神。観光名所としても知られているのに、載ってないなんてことはないだろう。
この時、私はどうしても見つけることができなかったが、あとからこの写真を見返したら、右下の方にありました……。
わからんから、いきなり交番のお世話になることに。お巡りさんに尋ねると、丁寧に教えてくれた。「目白通りを右に進み、橋を渡った先に目白警察署があるので、またそこで聞くといいですよ」と教えて頂いた。
ありがとうございます! 普段は道を聞くこともないけど、尋ねると丁寧に教えて頂けて本当に有難いなあ。
学習院大学の西門を通過して、まずはひたすら真っすぐ。
警察署らしき建物が見えたので、そこを曲がって真っすぐ行くと、鬼子母神の案内板が見えるんだよな?
この道あってる? 警察署で曲がって真っすぐ、その先に案内板がある気がしないんだけど……。
え? もう迷った? ここはどこだ。お巡りさんの説明では曲がるのは1回だったのに、1回曲がってもゴールに近づいている気がしない。わかんねえ、もうわかんねえ。
あ、そうだ、どこかで都電荒川線にぶつかるんだったよな。これか? 上を走ってるのが荒川線? それにしちゃ電車の来る気配がないな。
とりあえず、目についた道を真っすぐ進む作戦で来たんだけど、あれは「Seibu Group」って書いてないか? もしかして池袋? なんで!?
荒川線だと思っていたのは、西武線っぽいな。そして間違いなく池袋に近づいていってる。
あ、「TOBU」だって。この先は池袋だ。多分だけど、鬼子母神とは逆方向に向かって歩いている気がするなあ。とりあえず、来た方向に引き返そう。どこで間違えたんだ。ナゾだ、ワナか?
大きめの道を歩いていたら、雑司ヶ谷歩道橋が見えてきた。多分こっちの方角であってるはず。池袋からは離れられただろう。
お! 参道! でも、あれは「大鳥神社」の参道だな。でも、何か近づきつつある気がするぞ。
さらに直進したところで「鬼子母神西参道」の看板が見えてきた! やったぜ!
この先が目的地なのでは? でもなんで “西” 参道なんだ。東側から入ることになると思ってたのに。もしかして大回りしたのかも。
参道を進んだら、ここか!? 鬼子母神は。
一度境内を通過して、本来入ってくるはずだった道から、今一度入り直した。着いた~!
本来であれば12分程度でたどり着くはずだった道を約1時間かけてしまった。でもいい、なんか迷ってるのが楽しくて、ゲーム感覚で見知らぬ道を彷徨うのが楽しかったから。
ミッションコンプリート、まあこれは初級編かもな。とはいえ、現在地がわからないだけで、こんなに迷ってしまうとはね。
西参道とは逆の参道から出た先に、都電荒川線。あれ? 本当は往路でぶつかるはずだったのに、なんで復路で……。
東京メトロ雑司ヶ谷駅があった。ここで乗ってしまってもいいけど、もう少し歩いてみよう。
やや! 橋に遭遇した。あ、そういえばお巡りさん言ってたな。橋を渡れって。なのに、私は渡らずに脇道に入ったもんだから迷ったんだな。人の話はちゃんと聞こう。こういうところに、我ながら加齢の思い込みを感じる。反省です。
そしてさらに道を直進して行ったら、なんと元の目白駅に帰ってきた! ああ~、つながった! 自分の中で脳内の地図がしっかりとつながったぞ。西参道から鬼子母神に入ったことも理解できた。
気持ちイイ! 小さなことだけど、とてつもなく大きな達成感を覚える。楽しいな、コレ! 地図を見ないだけなのに、脳内に街のスケールがしっかり描かれた。これだよなあ、昔は当たり前にできていたことなのに、スマホに頼り過ぎているせいで、“勘” が働かないんじゃないかな。
ちなみに、帰社後に撮影画像をAIに読ませて、私のたどった足跡を分析させてみた。そうしたところ、どうやらこんなルートを通っていたらしい。
私が荒川線だと思って向かっていたのは西武線で、東だと思って進んでいた方角は北だった。あらためて自分の方向感覚のなさに愕然とする……。
だが、迷うことの面白さを味わえたので、これに懲りずにまた別の場所へ、地図アプリなしで出かけるぞ。みんなもやってみてくれ。金をかけずに日常を楽しむ、ほど良い遊びだ。
執筆:佐藤英典
Photo:Rocketnews24
Screenshot:GoogleMaps
佐藤英典


































































