おりゃーーー!

重ねた瓦に精神を集中させ、拳を一気に振り下ろす。テレビでは見たことがあるが、自分で挑戦するのは初めてだ。

福井県を訪れるにあたり、工場見学マニアとして気になっていた場所がある。それが、越前瓦を製造しているメーカー「越前セラミカ」だ。

ここでは事前に予約すると、越前瓦の製造現場を見学できるうえ、最後には瓦割りにも挑戦できるという。

・現在はわずか2社という越前瓦メーカー

越前セラミカは、1952年創業の越前瓦メーカー。福井県の厳しい雪や湿気にも耐えられるよう、高い強度と低い吸水率を持つ瓦を製造しているそうだ。

スタッフの方の説明によると、以前は地元に十数社あった瓦メーカーも、現在は2社になったという。

そんな貴重な越前瓦の製造現場を一般向けに公開しているのが、今回参加した工場見学である。


・ただの粘土が瓦になるまで

まずは映像を見ながら、越前瓦の歴史や特徴、製造工程について説明を受ける。

越前セラミカでは、原料となる粘土の配合から成形、乾燥、施釉(せゆう)、焼成、選別、梱包までを一貫して行っており、製造の様子を画面越しに見るのもおもしろい。

ただ、目の前には実際の工場がある。工場見学好きとしては、早く製造現場を見たくてワクワクが止まらない。


説明を聞いたら、いよいよ工場見学へ。

最初に目に飛び込んできたのは、瓦の原料となる大量の粘土だ。

触ってみると、手の中でギュッと固まる。

今はただの土の塊にしか見えないのに、これが頑丈な瓦になるとは不思議である。

採掘した粘土はそのまま使うわけではない。性質の異なる原料を配合し、大きな石などの異物を取り除いて、瓦作りに適した状態へ整えていくそうだ。

こうして作られた土を練り、金型に入れて大型の自動プレスで成形。

瓦の形になったものを十分に乾燥させ、釉薬を施し、窯で焼き上げる。

越前セラミカのトンネル窯は全長約61メートル。瓦は約24時間かけて窯の中を進み、最高約1200度で焼成されるという。

ただし、トンネル窯は常時動いているわけではない。火を入れるのは3~4週間ごとで不定期なのだそう。

そして、私が訪れた日は……


動いていなかったぁぁ! 悲しい!


タイミングがよければ、大型機械の音や1200度前後で焼成する窯の熱気を体感できるという。工場見学マニアにとって、これほど見たい光景があるだろうか……。あるだろうか……。あるだろうか……。

あぁ、この場所に瓦がズラーッと並び、長い窯の中へ送り込まれていくのか。想像するだけでも迫力があるが、やはり実際に動いているところを見たかった。いいもん、また来るもん。


・いよいよ瓦割り体験へ

工場見学を終えたら、お待ちかねの瓦割り体験である。

なお、ここで割るのは、製造不良になったものを瓦割り用に加工された専用の瓦だ。

というのも、本来の越前瓦は非常に硬い。スタッフの方によると、元プロ格闘家でも割るのに苦戦するほどだという。

そのため、体験用の瓦にはダイヤモンドカッターで溝を入れ、割れやすく加工しているそうだ。硬い越前瓦を削るための作業には手間もコストもかかるらしく、1枚500円という価格にも納得である。

まずは6歳の次女が、1枚の瓦に挑戦することになった。

コツを教えてもらいながら手を振り下ろしてみるが……


割れない!


たった1枚と侮っていたが、子どもの力ではなかなか手ごわい。そこで「足で踏むと割りやすいよ」と教えてもらい、今度は足で挑戦。

すると……


割れたーーー!


6歳でも見事に成功した。本人もすっかり空手家気分で、めちゃくちゃ楽しそうである。


・拳で2枚を割れるのか

続いては私の番だ。

私は5枚コースを申し込んでいたが、いきなり5枚すべてに挑戦するのは難しいらしい。スタッフの方から「2枚と3枚に分けてやってみては」と勧められた。ということで、助言に従い、まずは2枚。

普通に握り拳を作り、上から叩きつけてみると……



割れない。そして、手が痛い。


どうやら、関節を下にして叩くのではなく、小指側を下にした縦拳のような形で、真上から一気に振り下ろすのがコツだという。

アドバイス通りに、もう一度。



割れた! 2枚とも一気に割れた!!


めちゃくちゃ爽快である。拳に多少の痛みはあるものの、それ以上に自分の手で瓦を割ったという興奮が勝る。勢いに乗って、残りの3枚にも挑戦する。


稼働している製造ラインが見えなかったモヤモヤを拳に込めて一気に振り下ろす!


さきほどよりも痛いが、3枚とも無事に割れた。この爽快感はなかなか日常では味わえない。


・食品工場とはひと味違う、土地に根付いた工場見学

工場見学というと、食品や自動車の工場を思い浮かべる人が多いかもしれないが、こうした地域ならではの産業に触れられる工場見学も、マニアとしてはめちゃくちゃオススメである。

ただ、私には大きな心残りが残った。次こそは絶対に、窯が動いている日に訪れたい。

1200度のトンネル窯から伝わる熱気、大型機械が動く音、瓦がズラリと並んで運ばれていく光景。その迫力を、この目で見てみたいのだ。

もし次回も稼働していなかったら、その悔しさを拳に込めて、瓦を10枚くらい割れるんじゃないだろうか。

・今回訪れた施設の詳細

施設名 越前セラミカ
住所 福井県越前市池ノ上町5-12
内容 越前瓦の工場見学、瓦割り体験
瓦割り体験 500円~

参考リンク:越前セラミカ
執筆:夏野ふとん
Photo:RocketNews24.