大手牛丼チェーンの「松屋」が、牛丼以外の店舗を運営していることはよく知られている。とんかつの「松のや」、カレーの「マイカリー食堂」、回転すしの「すし松」など。実はラーメンブランド「六厘舎」「舎鈴」の運営会社の全株式を取得して、ラーメン事業にも参入している。

そのラーメン分野でいえばライバルの「吉野家」が先行しているかもしれない。傘下の「株式会社せたが屋」をはじめとする約15ものラーメンブランドを展開しているからだ。そしてこの8月にまたひとつ、新しい分野の飲食店をオープンした。

それが「油そば」ならぬ「油うどん」の専門店『こん家』である。油うどん!? 油とうどんは本当に合うのか? 食べたらうどんの新境地を垣間見た! 実はこの店、ラーメンとうどんのスペシャリストがタッグを組んでメニューを作り上げたらしい。

・油うどんだと!?

このお店は2026年8月20日、東京・阿佐ヶ谷のパールセンター内にオープンした。実はその直前の阿佐ヶ谷七夕まつり(8月7~11日)で、この通りを歩いていた私(佐藤)は、開店準備中の店舗を目撃していた。


何か飲食店ができるとは思っていたが、それが「油うどん」とは予想できなかった。そもそも油うどんと言われる料理は聞いたことがないもんなあ。


油そばがあるのだから、うどんがあっても決して変ではない。でも、他に聞いたことがないから、看板に掲げているようにこのお店が「元祖」ということになるかな。


メニューを見ると、味付けは醤油ベースと塩ベースに分かれており、トッピングの種類も充実している。それらにどんな違いがあるのか? さらに、油そばではなくうどんになったことでどう味が変化するのか、想像がつかない。とにかく食べてたしかめるとしよう。


券売機で食券を購入して、席に着く。私が頼んだのは「スペシャル油うどん」(税込1400円)とやらだ。おそらく全部乗せみたいなものだろう。全部乗せゆえに、これを食べれば味が総合的にわかるんじゃないの?

卓上には、ラーメン屋でよく目にする「美味しい食べ方」がある。それによると、よく混ぜてもいいし、少しずつ混ぜて食べてもいいそうだ。


・ミスターラーメンとうどん評論家

提供を待つ間、ふとメニューの裏面を見ると、東京・駒沢の紹介制うどんスナック「松ト麦」の店主、井上こんさんの名前が記されている。

彼女はうどんマニア・うどん評論家としても活動しており、ここのうどんを監修したそうだ。そういえば、この店「こん家」は、おそらく彼女にちなんだ名前なのだろう。

彼女がうどん評論家として活動する以前、フリーライター時代にうちの姉妹サイト「Pouch」でも執筆して頂いたことがある

私も1度だけお会いしている。というのはiPhone行列のときに、1度現場に差し入れをしに来てくれたことがあったからだ。それまで特に接点がなかったにもかかわらず、有楽町のドコモショップ(丸の内)まで来て頂けたことが私はとてもうれしかった。

その彼女の名前がメニューの裏面にあることに驚いた。相変わらず、うどん業界でご活躍で何より。

そんな彼女と、せたが屋を設立し「ミスターラーメン」として知られる前島司氏が、油うどんを形にしたのだとか。2人のスペシャリストによるコラボとなれば、かなり期待できる。



・うどんの新境地

そうしている間にスペシャル油うどんが出てきた。パッと見た印象は油そば。でも中に潜んだ麺はうどんなんだよな。


トッピングは味玉・チャーシュー・生姜焼き・ネギ・明太子など。それから特製天かす「いか天玉」というのが潜んでいる。


まずはうどんそのものの味を知りたい。ってことで、丼の下から引きずり出して、そのままズルリとすする。自家製麺は、北海道産の「きたほなみ」や九州産の「チクゴイズミ」など、厳選した国産小麦をブレンドして使用しているそうだ。

麺は普通のうどんよりも少し太く、柔らかくモッチリとしている。どちらかといえばコシはなく、柔らかい。


提供時に「しっかり混ぜてお召し上がりください」と言われたので、それに従って全体が馴染むように十分に混ぜる。


改めて麺をすすり上げると麺の柔らかさの意図がわかった。コシに重きを置かずに麺と油が調和することを狙って、柔らかく仕上げているようだ。油だけでなく、さまざまなトッピングが麺に絡んで、一体となって口の中に飛び込んでくる。その食感が心地よい。


モッチリとしたうどんの食感に気を取られていると、忘れた頃にいか天玉のカリッとした歯ごたえが飛び出してくる。上手く設計された味の仕掛けは見事。そのサプライズが食事を楽しくしてくれる。油そのものの味は濃いはずなのに、食べてて重くなる感じがない。

さらに卓上の酢をかけて味変すると、一層サッパリとして、ますます箸が進む。


個人的に煮玉子の完成度の高さにも感動した。さすが有名ラーメンブランドが運営しているだけのことはある。


うどんはすでに料理としては成熟している。せいぜいトッピングを変えるくらいしか新たな道はないものと思っていたけど、そうではなかった

油うどんはまさしく新境地。従来の食べ方を踏襲しつつ、いままでにない方向性をしっかりと示している。今回は醤油ベースの味に挑んだが、次に訪ねるときは塩ベースのものを味わってみたい。うどん好きもラーメン好きも、ぜひ1度味わってみてほしい。


・今回訪問した店舗の情報

店名 元祖油うどん こん家
住所 東京都杉並区阿佐ヶ谷南1-48-16
時間 11:00~22:00(L.O.21:30)

参考リンク:PRTIMES吉野家ホールディングス松屋フーズホールディングス
執筆:佐藤英典
Photo:Rocketnews24