2025年12月20日から、箱根・芦ノ湖に新しい観光船が登場した。富士急の「箱根遊船 大茶会(だいちゃかい)」だ。

この船内は、絶対に誰にも予想できないと思う。 初見の乗客は、全員驚くに違いない

・大茶会

「箱根遊船 大茶会(以下、大茶会)」のデザインは、瀬戸内海汽船「SEA SPICA (シースピカ)」や富士急行「金波銀波(きんぱぎんぱ)」を手掛けた川西康之氏。


これから報道陣と共に乗船し、船内各所を解説して頂けることに。


・1Fデッキ

船名の由来は、豊臣秀吉による北野大茶湯。新造ではなく、1986年竣工の芦ノ湖遊覧船「十国丸」をリニューアルしたものだ。

「十国丸」を知る人々によると、当時は国鉄時代のボックスシートのごとき座席が並ぶ船内だったという。それがどのように生まれ変わったのか?

まずは1Fデッキから。乗船して最初に目に入るのが「茶店」だ。抹茶や緑茶の他、抹茶フレーバーのスイーツなどを注文することができる。


茶店周囲の壁は気合の入ったゴリゴリの金色で、輝いている。いきなり黄金の壁はインパクトが強い。

ここから左手に進むと、1F客室へ。よく開けた心地いい空間が広がっている。


お茶のイメージに合う緑色が、落ち着きと明るさを両立させているように思う。天井の照明を囲う緑の紐スクリーン的な装飾がテクニカルだ……! 提灯をモチーフにしているそう。

茶店周辺の黄金の壁からの流れでも、色調の変化に違和感を覚えることなく落ち着きある空間に移行したことに驚いた。この照明が、その辺りに寄与している気がする。

なお、客室部の両サイドは全て窓だ。これは1Fから3Fまで共通の仕様。採光性は圧倒的で、船内にいても芦ノ湖の景色がよく見える。



・2Fデッキ

次は2Fだ。「売店」前まで戻り、階段を上がろう。両サイドは黄金の壁。


恐らく、本船最大のサプライズ空間は2Fに広がっている。まず客室に入ってすぐの光景だ。ここは誰もが立ち止まって写真を撮ることだろう。


緑のストリングカーテンが両サイドの客席をさりげなく遮蔽し、正面に視線を誘導する。その先にあるのが黄金の壁と、精巧な和紙製の松。派手ながらも落ち着きと品のある和な雰囲気。

2Fの本気はここからだ。この松のある黄金の壁。ぐるりと回り込むと

黄金の茶室なのだ……! 「茶室 金風庵」という。靴を脱いで上がってよく、平時から客席として使用できる空間なのも凄い。茶室外周は縁側ふうの座席になっている。


この展開は誰にも予想できないだろう。初乗船する全ての乗客が圧倒されるに違いない。それっぽく床の間に掛け軸まである。あまりにも面白すぎる。



・過ごし方の選択肢

さて、ここで外から大茶会を見てみよう。後方にとても目立つ構造物がある。


これは3Fデッキの「茶室 緑風庵」。2Fの「茶室 金風庵」と対を成すような客席だ。


閉め切られてはいない半屋外のような空間で、靴を脱いで利用する。丸窓からは芦ノ湖が見える。金の茶室で感覚は麻痺しているが、これも他にはないタイプの客席だ。

1Fの居心地の良い客室の他、2Fと3Fのインパクトある2種の茶室。すでにこの規模の観光船の持つ要素として十分に思えるが、本船に込められた工夫はまだ尽きない。

ここまでお見せした他にも、屋内・屋外ともに多くの客席が設けられている。


それらは畳のようなシートだったり、ボックス席だったりと、それぞれ形態が異なる仕様。


これには、船内にたくさんの過ごし方の選択肢を設けることで、毎回異なる体験をしてほしいという狙いがあるそう。


つまり座る場所を変えれば、乗るたびに異なる乗船体験ができるというわけだ。何度でも美味しく味わえる工夫。

見て回っても面白く、座って過ごしても面白い。もちろん芦ノ湖の景色を堪能するもよしの「箱根遊船 大茶会」。観光船として驚くほど隙のない仕上がりだ! 芦ノ湖周辺を観光する際の、新たな目的の1つになると思う。

参考リンク:箱根遊船 大茶会
撮影・執筆:江川資具
Photo:RocketNews24.

▼「茶店」のメニュー。

「大茶会ボトル 緑茶」を提供いただいた。淹れたてのホットで提供され、本当に美味しいお茶だった。丈夫な造りのボトルで使い回せる。底部はゴムで覆われ、内部に飲み口付きの着脱可能な内蓋が仕込まれている。

菓子類や茶葉の取り扱いも。


▼旅客定員595名。


▼1F客室や階段など各所にある花は和紙製。


▼「茶室 金風庵」には炉畳もある。川西氏は、ここで本当に茶会を開きたいそう。


▼3Fには、バーカウンターのような設備がある。流し台も完備。何かしらドリンク等のサービスが提供可能な造りになっている。


▼屋外デッキにも多数のベンチや椅子が設置されている。


▼緑のシートは人工芝。茶畑をイメージした「茶畑だんだん」という。


▼一番上の朱色に塗られたウィング状の部分は、もしかしたら鳥居に見えるかもしれないが、無関係だそう。「十国丸」時代から存在する構造で、恐らく自動車のウィングのように、安定性に関連する役割を持つのではないかとのこと。リニューアルに伴い、デッキと同じ朱色に塗り替えられただけだという。


▼取材時点での時刻・料金表。


▼箱根観光といえば箱根神社。


▼富士急の提供ですので、十国峠パノラマケーブルカーもいかがでしょう。

眺めの良さは本物だった。十の国が見渡せるから十国峠というそうだが、本当に360度見渡せる。これは真鶴方面。

曇りで富士山方面はだめだったが、沼津方面に沈む夕日はよく見えた。

カフェがあるのだが、ここの「1059モンブラン(1000円)」はガチでお勧め。

モンブランのクリームが、良い苦みのある茶葉みあるフレーバーを有している。中には抹茶アイス。