有給休暇──。それは社会人に与えられた正当な権利。平日でも合法的に休めるという意味では、土日祝日よりも上位の存在だろう。遊んでもいい。勉強してもいい。ずっと寝ていたっていいのだ。

しかし私(あひるねこ)は思った。あえて会社に行ってみたらどうなるのか、と。そこで今回は、有給を取った上で普通に出社してみることに。そう、私はまだ見ぬ景色を見たいのである。

・有給日に出社

9月某日。この日は1カ月以上前から申請してあった私の有給日だ。幸いなことに天気も上々。出社するにはちょうどいいだろう。


いつもは面倒でしかない通勤電車も、今日ばかりはまったく苦にならない。なぜなら有給だから。仕事がないという事実だけで、人はこうも強くなれるのか。


普段は会社まで最短ルートで行って、最短ルートで帰っているが、この日は少しだけ遠回りをしてみた。すぐ近所に知らない店ができていたりと、意外な発見があるものだ。


そんなこんなで会社到着。もちろん編集部はみんな仕事中なので、邪魔にならないよう静かに入る。


お、やってんな。

・お疲れさまです

有給なのに出社してきた私を見て「え、どうした?」と怪訝そうな顔をするメンバーたち。ちょっと近くを通りがかったので寄らせてもらいましたと、サザエさんの家にやって来る客人みたいなことを言っておいた。



さて、ここで重要なのは絶対に仕事をしないということだ。有給休暇中に従業員が業務を行うと、場合によっては出勤扱いになったり給与が発生してしまうことがある。


こんなアホな検証のために会社に迷惑をかけるのは私としても本意ではないため、この日は特に意味もなく『ハンターハンター』を読み直すなどして徹底的に無為に過ごした。で、その結果わかったことがある。それは……


実は会社は超快適ってこと!


・メリットだらけ

当たり前だが会社には自分の席があり、自分のデスクがある。満席で入れないなんてことは100%ないのだ。そのうえ冷暖房、高速Wi-Fi完備。おまけに電源も利用可能ときた。天国かここは。


前に席に座っている砂子間も、最初こそ私の方をチラチラと気にしていたものの、しばらくすると自分の作業に集中してこちらには一切かまってこなくなった。他のメンバーも同様だ。

そこらのカフェと比べても、よっぽど静かで落ち着いた環境と言えるだろう。天国かここは。


『ハンターハンター』最新38巻まで読み直したところで顔をあげると、たまたま先輩記者のサンジュンが目に入った。いつも大した用事もないのに、ヘビのようにしつこく話しかけてくるお祭り男・サンジュン。たまには私の方から声をかけてみよう。


あひるねこ「サンジュンさん、何してるんですか?」

サンジュン「いや、仕事だよ仕事」


あひるねこ「仕事? 仕事ですって? 何で仕事なんかしてるんですか?」

サンジュン「え? いや……それが仕事だからだよ」

・愉悦

こんなにうまいコーヒーを飲んだのはいつ以来だろうか。そう、まるでそれは蜜のような……。ブラックコーヒーとは思えないほど甘美だったぞ。自宅では決して味わえない超極上体験であった。



それでは十分楽しんだので帰ることにします。みなさんはまだまだお仕事頑張ってくださいね! お疲れさまでーーす!!

・充実の一日

こうして私の人生初の有給出社は幕を閉じたのだった。今まで会社とはただの「仕事を強制される場所」だと思っていたが、仕事を放棄した途端、至高の快適空間に一変したのは面白い発見だったように思う。


働かない会社。それは日常のすぐ隣に横たわる究極の非日常……なのかもしれない。ただし! おそらく上司や人事には真顔で注意されると思うので、実行する際はくれぐれも自己責任でよろしく頼むぞ。約束だ!

執筆:あひるねこ
Photo:RocketNews24.

▼帰りはグリーン車で。いい有給だった。