原宿は今も昔も若者のトレンドの中心地で、とくにグルメやスイーツは常に新しいお店が誕生している。どこを歩いても可愛らしいデザインの看板が目に入り、派手な盛り付けと美味しそうなニオイに誘われて、どこかしらのお店に入ってしまいそうになる。

そんな原宿、ラフォーレの真裏に老舗の貫禄を漂わせる大衆酒場がある。いや、厳密には “ネオ” 大衆酒場というヤツだ。そのお店「ビートル」は場所を知らずして、訪ねることは難しい穴場。

呑みだけでなく食事も充実していて、裏手にあるとはいえ原宿なのに、定食が1000円以下で食べられてしまう。たしかここは令和の原宿だったはずなのだが、まるで昭和の下町のようじゃないか。

・こんなところに!?

原宿には以前、老舗食堂がいくつもあったと記憶している。いくつかのお店は、新型コロナや昨今の経済情勢の影響で閉店を余儀なくされ、いつの間にやら、それらの老舗はなくなっていた。

最近になって再び和食を提供するお店は増えたものの、今風といういか令和向けにアレンジされ、どちらかといえば「映え」を意識した高価格メニューが多いように見受けられる。

そうじゃないんだよなあ。定食出すなら「こういうのでいいんだよ!」みたいな感じが欲しい。映えなくていい。全部茶色でもいいんだよ。


そんな私(佐藤)のような血脈にまで昭和が流れるおじさんでも、安心して利用できるお店があると知って、目印となる場所まで来た。ラフォーレ原宿の裏にあるというのだが、こんな街中にそんな店あったか?


ラフォーレを正面に見たら、隣のABCマートとの間を直進する。


この通りは「教会通り」というらしい。そこを進んでいったら、東京中央教会があった。なるほど、ここにちなんでその名がつけられたようだ。


坂道をのぼる途中の小さな路地を右折したところで、「酒と飯」と書かれた提灯発見。ここだな、大衆酒場ビートルは。本当に小さい路地にあるから、ほとんどの人が素通りしてしまうのでは。知る人ぞ知る、穴場といった感じ。

ビートルは、外食企業「プロダクトオブタイム」が運営する居酒屋ブランドで、2015年に蒲田で開業し、五反田・浦和・浦安・田町、それから仙台にも出店している。

ネオ大衆酒場の先駆けで、ビートルの登場以降、似た感じのコンセプトのお店があちこちにできて、「ネオ大衆酒場」というジャンルが確立されている。

こちらの店の外観は古く見えるが、実は2017年オープンで、老舗というにはまだ日が浅い。だが、昔からずっとそこにあったようなたたずまいだ。



・メニューは全部1000円以下

分かりにくい場所ではあるが、中に入ると8割程度席が埋まっており、あとからあとからお客さんが入ってくる。どうやら、この辺では昼時に重宝されているようだ。というのも、メニューを見ると定食が安いのである。


定食全部1000円以下! 原宿のラフォーレ裏、たとえ見つけにくい場所であるとはいっても、都心の繁華な通りからそう遠くない。こんな場所で、定食頼んで1000円でお釣りがくるとは!? しかもご飯大盛り無料です!

厳密には月替わりメニューの生アジフライだけ1250円とのことだったけど、それ以外は全部3桁。カレーなんて650円だからね、税込で。


定食以外もご覧の通り、オール3桁です。こりゃ「せんべろ」も可能だな。ラインナップも渋くて、昭和の大衆酒場そのままって感じ。個人的にはハムエッグがあるあたりにグッと来る。もちろん、ハムエッグ定食(お昼:750円)もあるぞ!


さらにデザートにはホームランバー! 子どもは無料で大人は220円。今、ないよね? スーパーやコンビニでも見かけなくなったけど、ここに来たらホームランバー食えるぞ~!


・生姜焼き定食を注文

注文したのは、「豚肩ロース生姜焼き定食」(850円)。


ご飯はもちろん大盛りで。普通盛りを知らないのに恐縮だが、もう少し量が多いと思っていた。とはいえ、昨今の米の値段を考えると、大盛りを無料で提供して頂けるだけで有難い。定食屋さんは、今が1番大変なときのはず。なんとか米の値段が落ち着くまで踏ん張って頂きたい。


生姜焼きは期待を裏切らない見た目をしている。マヨネーズがデフォルトでついているところも素晴らしい。わかってらっしゃる!


大判の肉にのった生姜の風味が、やたらと食欲をそそる。ひと口頬張ると、それでご飯を食う手が加速する。これなら大盛りもペロリだな。

生姜焼きもさることながら、味噌汁もちゃんとしている。ネオ大衆酒場といえども、基本がしっかりしていて安心できる味だ。この味だから、分かりにくい場所でもお客さんがひっきりなしに来るんだなあ。


そういえば、味噌汁の具材は大根とエノキだった。まさか原宿でエノキを食べる機会があるとは。クレープとタピオカだけが原宿ではないと改めて思い知らされた。


もう1つ好印象だったのは、お店で働く人たち。とても元気がよくて、活気ある昭和の食堂にいる気分を味わえた。最近はインバウンド向けに形だけ昭和レトロなお店が多いけど、ここは違う。古いものの良さを踏襲しつつ、今流にアレンジしているから、懐古的な古さだけではないものを感じられるのだろう。

とにかく、原宿で1000円以下で定食ならここがおすすめですぞ。


・今回訪問した店舗の情報

店名 大衆酒場ビートル 原宿店
住所 東京都渋谷区神宮前1-10-23 原宿ふらっとビル 1F
時間 月〜金曜日11:30~15:00、16:00~23:00 / 土日祝11:30〜23:00
定休日 12月31日、1月1日

参考リンク:プロダクトオブタイム
執筆:佐藤英典
Photo:Rocketnews24