もつ鍋、寄せ鍋、キムチ鍋……この時期になると様々な『鍋スープの素』が販売される。ちなみに今年は、トリュフやガーリックを使用した商品が大人気なのだとか。

さて先日、輸入食品店にて何とも不思議な鍋スープの素と出会ってしまった。サッパリ意味が分からないとは思うが、落ち着いて聞いてほしい。

なんとこの商品! 『幽霊のような味』の鍋が楽しめちゃうらしい。

・どんな味だよッ

それは、神奈川県 秦野市でベトナム食材&料理の販売を行っている『Smile Shop』へ訪れたときのこと。ベトナムで人気の鍋スープの素が欲しいと伝えてみたところ……


こちらの商品を紹介していただいた。

値段は税込180円。聞くところによると現地では人気NO.1で、存在を知らない人はいないとされる商品なのだとか。


とりあえず、Googleの翻訳機能を使って何が書いてあるのかを確認してみたところベトナム流『タイ鍋』が楽しめるということが分かった。

ちなみに販売元は「味の素」とのことで、安心感を得ることができたのだが……


どうしても、気になってしまった。

左下の文章が……。


『 幽 霊 の よ う な 味 』

オイオイ。どんな味だよッ(笑)! 


ベトナムでは『 幽 霊 』を食べているってことなのか? マジで意味わかんないし、なにより怖えぇぇよ!

・言いようのない不安

とはいえ凄く味が気になる。パッケージ裏の調理方法を翻訳したので、それに従って「 幽 霊 鍋 」を作ってみよう。


用意する食材は、にんにく・トマト・玉ねぎ。それから、日本の鍋にはまず使うことのない食材「パイナップル」。


まずは食用油大さじ6~7で、にんにく & 玉ねぎ を炒める。とくに記載がなかったので、にんにくは2片 玉ねぎは1個を使用してみた。


火が通ったら、トマトのスライス1個とパイナップル1/4個を投入。

うん……。パイナップルが入った瞬間、言いようのない不安が襲ってきた。


強火ですべての食材を炒めたら、水1.5Lと鍋スープの素を投入。

ちなみに、ニオイはそこまで強くない。例えるならスパイシーで美味しそうなお菓子のような香りだ。


よくかき混ぜて沸騰させる。レモングラスを加えると美味しくなるとの記載があったのでこちらも加えてみよう。


さぁさぁ! こちらが完成した『幽霊のような味』がするらしい鍋スープだ。一袋で4人~5人前は作ることができた。


今回は、パッケージ写真をマネた具材+αをいれて煮込んでみることにした。

・パイナップルが……

いよいよ『幽霊のような味』と対峙するときがきた……。が、1人で食べるのは正直怖かったので友人を招集。ちなみに「ヤバそうな鍋をご馳走させて」とだけ伝えてある。

身構える友人達をよそにフタを開けてみると……


めっちゃくちゃイイ香り!


スパイシーで食欲をそそる香りだ。輸入食品特有の独特なクセはまったく無い。


さっそく食べた友人からは「めちゃくちゃ美味しい! ピリ辛と酸味あと引く甘さがクセになる。あと旨味がヤバい」と大好評。

「トムヤムクンっぽいけど、それよりも食べやすい。こっちのが好き」とも話していた。


遅れて私も食べてみたのだが、確かにこれは美味い。スパイシーな旨味がたまらない。それに後半感じる甘酸っぱい風味がハンパない中毒性を生んでいる。

恐らく、溶けだしたパイナップルが超イイ仕事をしているのであろう。これは日本じゃなかなか出会えない美味しさ。マジで凄い。


それから、安売りされていた鍋用の「牛肉」をいれたのだがこれが大正解。個人的に、瞬間的な『感動』は高級な牛すき焼き以上だと感じた。

てな感じで、とにかく美味しくて驚かされっぱなしであったのだが……肝心の「幽霊の味がする!」と答えた人物は1人もいなかった。

・となると

気になるのが、なぜ『幽霊のような味』との記載がされていたのか? ということ。

真相を探るべく、再度カメラの翻訳機能を使って『鍋スープの素』を調べてをみたところ……


クルナスパイシーネムネム

美味しいです


なんか、あのちゃん が歌ってそうな謎過ぎる可愛いワードがでてきた。これはこれで気になるところだが……


気を取り直してもう1度!


……


……


えっ……?


ははは 『 墓 』 のような味!?


もう勘弁してくれ……。「幽霊」に「墓」と流石に怖すぎる。このままでは埒(らち)があかないので、問題の文章を直接打ち込んでみた。すると……

chua(酸っぱい) cay tê tê(辛い) nêm là mê(味は愛)との文章がでてきた。恐らくこれが本来伝えたかった意味なのであろう。


一方で「幽霊のような味」をベトナム語に翻訳すると、以下のような結果がでた。

Có vị(味) như ma(幽霊のように)という意味らしい。


で、私の推測なのだが!


本来の文字であるnêm là mê(味は愛)が、カメラの都合によってnhư ma(幽霊のように)と誤認してしまい、今回のような恐ろしい文章が誕生してしまったのだと考えている。

お互いの語尾が『 mê 』『 ma 』でよく似ているからこそ誕生してしまった文章なのであろう。


にしても、たった1文字入れ替わるだけで『愛』→『幽霊』と、別の恐ろしい意味合いへと変わってしまうから面白い。ちなみに『墓 → mộ』とのこと。こちらもよく似てる(笑)。また1つ勉強になった。

・この冬ぜひ!

てな、ベトナムで人気の鍋スープの素であったが……実際食べてみて、憑りつかれそうになるほど美味しかったので、『幽霊のような味』という恐ろしい誤訳も、あながち間違いでなかったのでは? と感じている。

現地では超メジャー商品とのことなので、お近くのアジア食品店に行けば手に入るはず。また、通販サイトでも販売している所があったので気になったかたはぜひ購入して味わってみてほしい。

にしても……『クルナスパイシーネムネム』とは一体何だったのだろうか? いつの日かこちらの謎も解明したい次第だ。

執筆:イナバタクヤ
Photo:RocketNews24