先日、中国へ旅行した際、私はあらかじめ「ちょっと高めの帰りの航空券」を購入していた。なぜなら死ぬほど疲れていることが予想されたからだ。
この航空券が他の便と比べて割高だった理由は「現地出発時間が遅く、電車で家まで帰れる時間に到着するうえ、羽田空港着」だから。中国最終日を満喫したあと適正時間に帰宅できることを考えると、多少割高でもメリットのほうが大きいと考えたのである。
が……! カンのいい読者はすでにお気づきのとおり、飛行機は遅れた。本来は機内食をご紹介する本シリーズ企画であるが、今回は番外編という位置付けでご覧いただけると幸いだ。いま思い出してもハラワタが煮え返りそう!
・むごすぎる仕打ち
約2週間滞在した中国最終日を満喫したのち、上海の浦東国際空港へ向かった私。
慎重派のA型なので、かなり早めの到着である。いいんだ。私、空港大好きだから。
最後の記念に自撮りをしたり、空港グルメを満喫するなどしているうち、あっという間にチェックインタイムとなった。中国ホンマありがとう、また来るからね〜!!
無事に出国手続きを終え、搭乗ゲートへ向かう。出発時刻は18時35分。搭乗開始は17時50分とのことである。
ところが……!
17時50分どころか18時を過ぎても搭乗開始はおろか、そもそも搭乗ゲートに職員の姿がない。にわかにザワつき始める搭乗ゲート周辺。18時15分を過ぎたころ、ついに乗客の何人かが「どうなっとんねん」と空港スタッフに詰め寄った。
中国語がよく分からないのであくまでもニュアンスでのお伝えになるが、スタッフの方の返答は「遅れてますので」的なシンプルなものだった。あくまでもニュアンスではあるが、「申し訳ない」みたいな雰囲気は感じられなかった……ような気がした。違ったらすみません。
特に外国だと、飛行機が遅れること自体は全然珍しくない。しかしこんなとき、一番の問題は「自分の乗る便は本当にこれなのか?」という不安を抱え続けなければいけないこと。「遅れてま〜す! お待ちくださ〜い!」と永遠に叫び続けてくれる日本の航空会社って、やっぱレベル高ぇな、と思う。
かくして飛行機が飛び立ったのは、予定を1時間半過ぎた20時であった。もう終電間に合わねぇよ……!
・機内はお通夜ムード
「電車で都心へ行ける時間に到着する」という理由でこの便を選んだ乗客は、決して私だけじゃないハズである。機内が重苦しいムードに包まれていたことはいうまでもない。
羽田へ到着予定は0時ごろと予想され、運が良ければ浜松町くらいまで行けるかもしれないが、「こんな高い金払って、待たされて、なぜ浜松町までダッシュせねばならないのか?」と思うと、怒りで歯茎から血が出そうだった。
「乗客の歯茎出血など意に介しません」とでも言うかのように(ニュアンスです)、目の前に置かれた機内食。我々をこんな目に遭わせた航空会社の機内食に手をつけたくはなかったが……
腹ペコだったので仕方なく頂戴することに。メニューはミートソーススパゲッティ、よく分からないジュース、よく分からないスナック2つ。
う、う、う、うまいっ…………!!!!!!
・世界一のびたパスタ
この「水に1週間浸しときました」みたいなパスタは、ナポリタンの名店『パンチョ』の人も裸足で逃げ出すレベル。 “世界一のびたパスタ” と呼んでも過言じゃないかもしれない。
業界きってのアルデンテ好きとして知られる私が、このようなホニャホニャパスタを「めっちゃウマい」と感じるとは信じられない。ソースが甘くてひき肉ゴロゴロ。ズッキーニっぽいヤツもいい仕事している。ウマい。やたらウマい。
このよく分かんないジュースも……
オレオ風のビスケットも……
よく分かんない揚げ菓子も、とにかく全部おいしかった。今からめちゃくちゃ使い古された表現を使うけど、みんな私のこと語彙力のないライターだと思わないで聞いてほしい……「空腹は最高のスパイスである」。
・知られざる深夜の羽田
そんなこんなで羽田空港に到着。帰国の余韻に浸る間もなく、血眼で自分の手荷物を探す乗客一同。
が……「運が良ければ浜松町くらいまで電車で行けるかも」という願いも虚しく、終電はちょうど走り去った後だった。最高の便を選んだはずが最も避けたい時間に到着してしまう……旅ってレ・ミゼラブル。
日本人である私は「もう深夜バスしかない」ことに一瞬で気づき、猛スピードでチケット売り場へダッシュ。幸運にも “最後の1席” だったらしい新宿行きのチケットを購入することができた。不幸中の幸いである。
しかしながら、羽田空港の深夜のバスチケット購入(自販機のみ)があまりに難易度の高いミッションでビックリしてしまった。日本人の私ですら「分かりにくい」と感じたのだから、外国の方にはお手上げだと思う。
現に私は何人かの外国人の方から「バス乗り場はどこか」「チケットはどうやって買うのか」と尋ねられたし、数時間先のチケットしか買えず途方に暮れている家族連れなどを目にすると、日本人として「申し訳ない」って気持ちになった。
オーバーツーリズムやらで迎える側も大変だとは思うが、 “空港から市街地までの移動” という異国を訪れた人が最初に直面する試練を、もう少し手厚くサポートしてこそ真の “おもてなしの国” なのではないか、と僭越ながら感じた次第だ。
新宿からタクシーで自宅へ。せっかく高いチケットを買ったのに、プラス1万円もの出費を強いられるとは夢にも思わなんだ。とはいえ機内食がおいしかったから……まぁ勘弁してあげましょうかね。
執筆:亀沢郁奈
Photo:RocketNews24.
▼私が散財した浦東空港の高い自販機