
2024年10月4日より、ついに公開となった『シビル・ウォー アメリカ最後の日』。内戦が起きた現在のアメリカを舞台に、それを追うジャーナリストの視点で、荒れる米国内の様子を描いた映画だ。
アメリカ本国では春に公開。次期大統領選に向けた対立も相まってか、大いに注目されていた。日本でも楽しみにしていた人は多いのではなかろうか? 私も完成披露試写会にて視聴したが、本作は多角的な楽しみ方のできる意欲作だ! ネタバレ無しで、見どころについて触れていこうと思う。
・狭い視野
本作の最大の特徴は、意図的に我々視聴者側に狭い視野を強いている点だろう。『シビル・ウォー アメリカ最後の日』の主人公たちはジャーナリスト。
主人公たちは戦わないが、多くのシーンが兵士たちによる戦闘に占められており、アクションや戦争映画としての側面も有している。
例えば史実に沿った第二次世界大戦を描いた映画であれば、焦点が国家であれ1人の兵士であれ、一般常識として我々視聴者は戦争の流れを知っている。映画もそれを前提として広い視野での状況解説をはぶくことができる。
架空の……例えばエイリアンと人類との戦争であれば、多くの場合、いつどこにエイリアンが攻めてきて、地球各地の状況がどうなっているのかという大まかな背景が、何らかの形で説明される。
しかし、本作中で巻き起こっている米国内の内戦については、我々視聴者に与えられる情報が非常に限られている。ほとんど不明なままと言っても過言ではない。
なぜここまで内戦がこじれたのか? どういう理由で各州は分断・共闘するに至ったのか? 陣営ごとの戦力や市民への被害状況は……と、内戦というものを客観的に理解するための重要な情報は、作中でほとんど語られない。
かわりに視聴者に浴びせられるのは、主人公のジャーナリストであるリー(キルスティン・ダンスト)に見える範囲の、最前線の臨場感ある混沌だ。
崩壊した治安。錯綜する精度の不明な情報。銃社会ゆえの、兵士にとってすら脅威となる過激化した武装市民。もし大局的な情報が与えられていたら、本作全編を通して充満する濃厚な緊張感と恐怖は、その鋭さを失っていたに違いない。
見通しの悪い状況の中、次から次へとリーたちを襲う混沌と理不尽の数々……! 疲れすぎず、中だるみせずという巧みな緩急で進むストーリー。スリラー映画としてもよくできており、エンタメとしての質は高い。
・リアル感ある異常性
作中で見える範囲の米国は内戦で完全に平穏が崩壊しており、起きる出来事も登場する人々も、ほとんどが異常だ。
しかしその異常性は、内戦という異常事態や、多民族国家、そして銃社会であることを前提としてみれば、相応にリアル感がある。
そこが本作をただのエンタメではなく、メッセージ性のある視聴者に議論させるタイプの映画としても成り立つ要因となっているのだと感じた。
個人的に最もリアルな恐怖を感じたのは、PVで公開済みのシーンにもある「What kind of American are you?(どの種類のアメリカ人だ?)」のやり取りと、そこからの流れだ。
ネタバレ無しの記事ゆえ詳細には触れないが、ここは最も異常に思えつつ、しかし同時に真にリアルなアメリカも感じさせる巧みな演出だった。
いや本当に、いるんですよこういう「悪・即・斬」ならぬ「異・即・射」的なアメリカ人。
まあ日本人でも普通にいるので、これは人間に備わった普遍的な性質の1つだと思うのだが、日本だと射ではなく打や蹴で済みがちゆえ死までが遠く、緊張感が銃社会ほどではない。
異常と言えば、このような状態ですら前線に向かい続けるジャーナリストたちの姿にも、ある種の異常性を感じる視聴者もいるかもしれない。それも意図された演出だと私は考えている。
今の中年世代が子供のころに起きたロサンゼルス暴動や、21年の連邦議会議事堂襲撃事件など、現実に通じるところもあるアメリカにおいて、本作が注目され、議論されるのは当然のことだろう。
しかし我々日本人からすれば、文化や国民性の違いから、そこまでの現実味は無いのも事実。ぶっちゃけ日本なら、同程度まで国民同士が分断した状況でも、市民は普通に通学・出勤しているように思う。
だからこそ日本では小難しい視点であれこれと論じることもできるし、シンプルにスリルある戦争・アクション映画として見ることもできる映画になっているとも言える。
そんなに重くもなく、さりとて軽くもないため、ほどよい歯ごたえのある休日の映画に最適な1本ではなかろうか。
参考リンク:シビル・ウォー アメリカ最後の日
執筆:江川資具
Photo:RocketNews24.
▼日本版本予告
江川資具
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