いろんな界隈で問題になる「転売ヤー」。
有名なところでいえばライブのチケット、限定モデルのスニーカー、ブランドのコラボアイテム……などなど、金になると分かれば転売ヤーが群がってくるのが世の常。
本当に欲しい人が高い金を払ったところで、販売元には利益が還元されず、ただ転売ヤーが儲けるだけという負の経済が構築されている。
このところ転売熱が加熱しているな……とは思ったけれど、まさか自分の趣味の分野にまで転売ヤーがやってくるとは……。
・器集めという趣味
ここ数年来、私が地味に集めているのが「器」である。
最初はイッタラとか、白山陶器みたいなメーカーものの器を集めていたのだが、お店をめぐるうちに、だんだん作家物の器に興味が出てきた。
器好きの友人たちと、益子のほうの窯元まで遠征して買いにいったり、作家の展示会に行ったりしている。
余談だが、自分ふくめ、アラフォーぐらいの女性たちは、なぜか器とか着物とかに興味を持ちがちなのはなぜなのか。
昔からコレクターがいる分野だけあって器とか着物は奥が深く、ハマると底なしである。
・入場予約と購入点数制限
じっくり展示会で器を見て、お気に入りの器を選ぶ……わりとノンビリした趣味だと思っていたのだが、少し前から異変が起きていた。
人気のある作家の展示会はwebで日時指定の事前予約が当たり前、購入点数もひとり2点までなどの制限がついているのだ。
まあ、器のギャラリーは小さいお店が多いし、狭い店内で人がひしめくと器が落ちて割れたりする可能性があるもんな……と最初は思っていた。
個数制限だって、手作りだから大量生産はできないからだろう……と。
ところが、のんびりと土日の枠を予約していざ展示に行くと、器が少ししか残っていない……なんてことが続いた。
お店の人に聞くと「展示初日でほとんど売れてしまって……」などと、申し訳なさそうに言われるのである。
人気作家なら、展示初日の午前中の枠をおさえられなかったら、欲しいものは買えない……そんな状態だ。
まあ、グルメブームだし、器人気もすごいことになってんだな〜なんて思っていたが……。
ある器の展示会で、妙な動きをしている人に気づいたのである。
・器を動画で撮っている…?
同じような趣味の人って、不思議と服装の傾向が似てくるものだと思う。
しかし、その人はお世辞にも器が好きそうには見えないラフな服装であった。そして、器を動画で撮影しながら、外国語で画面の向こうの人とずっと話している。
日本での買い物の様子をインスタライブで流すインフルエンサーなどもいるので、その人もインスタライブか何かやってるのかな……? と思っていた。
それにしては、様子が変だし、めちゃくちゃ長時間滞在している。
ふと見ると、ときおり「メ○カリ」などのフリマアプリのサイトで何かを検索している。
ここでようやく気づいた。これは多分、転売ヤーだ……と。入場の予約や点数制限は転売対策のひとつだったのだ。
転売ヤーが狙うのは、わかりやすいブランド品とか、アイドルやアニメのようなファンの熱が高いものだけ……だと思っていたのでびっくりした。
丁寧な暮らしとか、ほっこりした趣味の分野は転売ヤーとは無縁だろう……。そんな予想は甘かった。まさか器にまで転売ヤーが群がっているとは!
・栃木の山奥まで来る転売ヤー
いやしかし、ブランド物のように、器は価値や人気がわかりやすい世界ではないのに、どこから人気をかぎつけるのか。
よっぽど器好きじゃないと「人気の器作家」なんて分からないだろうし、作家個人のインスタをフォローしてこまめにチェックしないと展示会の情報も入らない。
ちなみに、器のギャラリーは都内でも駅から離れた場所にあったり、地方だと車がないと絶対に行けない山奥にあったりする。伊勢丹とかパルコに並ぶのとは訳が違うのだ。
聞けば、益子の陶器市にも、現地の留学生をバイトで雇った転売ヤーが早朝から並んでいて買い占めがひどかったのだという。
趣味人たちに混ざって、そんなところにも転売ヤーが群がってくるとは……。その転売への恐るべき嗅覚と、情報収集能力が衝撃的であった。
・弊害出まくりで許せない
作家物の器は大量生産ではないので数も少ないし、時期によって作風が変わってしまうので、欲しかった器がいつまでもあるとは限らない。
もっといえば、食器は家族の人数分で同じものをそろえたいし、できればカップとお皿をセットで合わせたりしたい。点数制限があると、そろえることが難しくなる。
一期一会の世界なので、買い占められたり、点数制限があるのは、集めている側からすると最悪なのだ。
ギャラリーや作家にしても、転売対策に腐心しているようで、余計な仕事が増えているようだ。器好きも作家の作品を手に入れるために、展示会の情報をマメにチェックして、初日の予約を取らなくてはいけない……。
のんびりした趣味の世界のはずだったのに、完売を恐れて焦って物を買うようになって、なんだかなあという日々が続いている。
どうも、器だけじゃなくてハンドメイドの世界でも転売ヤーが跋扈(ばっこ)しているらしい。私達の癒やしをブチ壊しにするほっこり系転売ヤー、許すまじ。
執筆:御花畑マリコ
Photo:RocketNews24.