間違えた~! むさこ(武蔵小杉)に行くはずが、むさこ(武蔵小金井)に来ちゃったじゃないか!

いや待てよ、本当はむさこ(武蔵小山)に行くはずだったんだっけ? とにかく、むさこ(武蔵小金井)から、むさこ(武蔵小杉)までおおむね25キロ。電車で最短50分はかかるっていうのに、どうすんだコレ~~ッ!

……と、間違えたフリをして、武蔵小金井にやってきた。3つの場所、それぞれに良さがあると思ったので、1日でそのすべてを訪ねてみたら、それぞれの良さを体感できて、めちゃくちゃ楽しかった!

・むさこ(武蔵小金井)

武蔵小金井・武蔵小山・武蔵小杉、これらは「むさこ」と略されるがゆえに混同されがち。実際、私(佐藤)は上京前まで、武蔵小金井に友人がいた関係で、むさこといえば小金井だとばかり思っていた。しかし上京後に小山も小杉もあると知って、やや困惑した覚えがある。

ということで私にとって馴染の深い、武蔵小金井から今回の探訪を始めたいと思う。最寄のJR中野駅から中央線1本で行けることも、親しみを感じる理由である。


この街に初めて訪ねたのは20代の頃のこと、25年くらい前だったかなあ。当時は駅がまだ高架化していなくて、中央線沿線は「開かずの踏み切り」がたくさんあったはず。ここをはじめとする多くの駅が高架になっておかげで、線路渋滞も相当緩和されただろう。あの当時の駅の面影はほぼない


駅の北側の景色に覚えがあるような~、ないような~……。具体的に、何がどうとは言えないけど、なんか来た覚えがあるなあ。


さて、最初に向かったのは「都立小金井公園」である。歴史的建造物を復元・展示する野外博物館「江戸東京たてもの園」に行ってみたい。東久留米駅西口行きのバス(西武バス)で14分。そこから歩いて、たてもの園へ。


そのバスが1分後に来るとのことだったが……。もう来てた! ヤバい、急げッ!!


危うく乗り遅れるところだった。滑り込みセーフ! で、5番目の停留所「小金井公園西口」で降りました。都立小金井公園は総面積80ヘクタールの広大な敷地を有し、小金井市だけでなく小平市・西東京市・武蔵野市にまたがっているという。


最近の異様な暑さのせいで、触知案内版は使用不可になっていた。常時日陰になる場所に設置されているものは、使用可能だったが。


広大でかつ緑豊かな公園。その一部は鳥獣保護区にも指定されている。


SL展示場発見! 3~11月の土日祝日。それから都民の日(10月1日)の10~16時に柵の中に立ち入ることができるそうだ。間近で見たかったけど、今日は月曜なんだよねえ。


で、その月曜日というのが問題でして、目的の江戸東京たてもの園は……。


月曜は休園日でござったよ! せっかくそれにふさわしい格好できたつもりだったのに。不覚!


目的のひとつを失ったけど、公園にはほかにも見どころたっぷり! なにしろ広いので、1日いても飽きないかも。


「いこいの広場」から「こども広場」に抜けたところで興味深い看板が目に入った。「見えない貯水池」だって!?


この広場の下には「浸透桝(しんとうます)」があり、豪雨の時に大量の雨水が石神井川に流れ込むのを防いでいる。浸透桝で貯えきれないほど雨が降った場合は、この広場に水が溜まって池の役割を果たすそうだ。


近頃はゲリラ豪雨も珍しくない。きっと、この見えない貯水池が川の氾濫を防いでいるのだろう。まさしく「縁の下の力持ち」、いや「芝生の下の貯水池」だな。


広いだけでなく施設が充実していて、立派な遊具があったり、「ふわふわドーム」や「ソリのゲレンデ」もあるそうだ。近くにこんな立派な公園があると、子どもたちは遊び場に困らなくていいね。


この日は休みだったけど、「サイクリングセンター」では有料で自転車の貸出も行っている。施設の充実っぷりがハンパない!


見えない貯水池が水を流す石神井川、その上流端が公園の北側にある。この先にあるそうなのだが……。この辺は広場の方と違って、森が深いなあ。


あった! ここが一級河川石神井川の上流端。


思ったよりも水量がある、どこからこの流れはきているだろう。さらに上(かみ)へとたどる道があれば、その源を見てみたいものだ。


小金井公園を離れて南に進むと、玉川上水に出た。そのほとりで「名勝 小金井桜(櫻)」の記念碑を見つけた。

小金井はサクラの「名勝」として、大正13年に国から指定を受けたそうだ。その起源は江戸時代までさかのぼるのだとか。昭和初期には花見の名所としてにぎわっていたとのことだが、環境の変化によって樹勢は衰退し、全盛期の面影はなくなったという。


2024年は名勝に指定されてから100年を迎えるそうだ。現在も古木の後継樹の捕植が行われており、小金井桜の復活を目指している。桜並木の復活は容易なことではないと思うが、遠からぬ未来、満開の桜が玉川上水に咲き誇ることを願っている



・カブトムシ大発生!

次の目的地に向けて歩いていたところ……。

おや? カブトムシ! ひっくり返ってのたうち回っている。ヤバい、このまま起き上がれなかったら死んじゃうよ! 今、助けてやるからな!!


これでもう大丈夫だ。でも、なんでこんなところにカブトムシがいるんだ。どこかの家から脱走したのか?


ふと目の前の木を見ると……、いる!


いる!


いる!


カブトムシがたくさんいる! めっちゃたくさんいるじゃないの!?


すぐそばにお母さんと娘さんがいらっしゃって、お母さんが「たくさんいるんですよ!」と興奮気味に話しかけてきた。理由は不明だが、この木とその隣の木にうじゃうじゃカブトムシがいて、娘さんが落ちてしまったカブトムシを捕獲していた。

「こんな道路のそばで落ちてたら危ないから、小金井公園のクスノキに逃がしてやろうと思って」と虫かごに入れていた。ご自宅ではすでに何匹か飼ってらっしゃるそうで、カブトムシ好きの娘さんが木から落下したカブトムシに気づき、それが1匹や2匹でないことに驚いたそうだ。


島根の田舎で生まれて50年、近くに山がたくさんあったけど、いまだかつてこれほどまでにたくさんのカブトムシを目にしたのは初めてだ。しかもこんな何でもない住宅街で。夏休みは始まったばかり、娘さんにとっては忘れられない夏になったのかも。



・手づくりソーセージとハムのお店

さて、次の目的地に到着。いつか来たいと思っていた、手づくりハムとソーセージのお店「ケーニッヒ本店」である。常時50種類のハム・ソーセージ・肉惣菜を製造販売しており、2階にはレストランも併設している。ここでお昼を食っちゃうよ~!


ランチメニューは全7種。全部ウマそう! ホットドッグもカレーもいいな。サイドメニューのバター入りプレッツェルも気になる。う~ん、悩みますなあ。


選んだのは7種の自家製ソーセージを味わえる「7種のウィンナー」(税込1700円)、ランチにはドイツ風コールスローとスープがついている。


ソーセージは粗挽き・しそ・チョリソ―・ペッパー・ガーリック・ポーク・ケーニッヒの7種類となっている。ちなみに「ケーニッヒ」とはドイツ語で王様を意味している。


短時間とはいえ、この暑さの中を歩くのは疲れる。ゴリゴリ体力を削がれたところで食べる極上のソーセージは絶品! 1本食べただけで体力ゲージがみるみる回復しちゃう!


ビールを飲みたい衝動を抑えて、ソーセージを堪能しました。こちらの商品はオンライン通販も行っているので、気になる人はチェックして頂きたい。



・むさこ(武蔵小山)

武蔵小金井を存分に楽しんだので、次のむさこに行こう。あと2つもむさこがあるので、ゆっくりしてられない。次は武蔵小山である。

JR中央線で四ツ谷まで出て、そこから東京メトロ南北線で約1時間だ。


東急電鉄武蔵小山駅、この街に取材で何度も来ている。小金井に次いで馴染のある街だ。


東京一長いと言われるアーケード商店街「武蔵小山駅商店街パルム」は、街を象徴するスポットのひとつ。


パルムは後ほど来るとして、今日は逆の西側に行く。都道420号線を北に行き、目黒本町5丁目の交差点を西に入っていく。平和通りを真っすぐ行くと、今、どうしても行きたい場所があるのだ。


それは銭湯「月光泉」! 汗だくになったので、ひとッ風呂浴びちゃうぞ!


入浴料(税込520円)でサウナも入れてしまう、ありがたい銭湯である。看板の文字から、店の歴史の長さをうかがえる。


銭湯といえば、浴室壁面の銭湯絵が定番なのだが、ここはペンキ画ではなく、タイル絵が飾られている。休憩スペースにもタイル絵があって、ペンキ画よりもノスタルジックな雰囲気だ。

ゆっくり漬かりたい……。ジェットバスで身体をほぐしたい……。けど、私には次のむさこが待っているので、サッと入ってサッと出た。汗を流せたから良しとしよう、うん。


風呂に入ったら甘いものが食いたくなったので、パルム商店街に戻ってきた。いつ来てもお祭りみたいな活気があるな。


商店街には興味深いお店がいくつもあって、取材で何度も訪ねている。たとえばここ「スチームクラブラボ」は蒸し蟹を食べられるお店。卓上のスチーマーで、自らカニを蒸せるお店だ。


タケヤ・デザートイン」は学生服店の店先で自家製ジェラートを販売するお店。風呂上りにウマいジェラート食べたかったけど、今日はお休みでした、残念。


甘いモノを求めてもう1軒、総重量3.5キロのキングパフェを食べられる「王様といちご」に来た。さすがに1人でキングは無理なので、今の気分にふさわしいスイーツを頂くとしよう。


頼んだのは「バナナスプリット」(税込1200円)と「アイスコーヒー」(税込450円)。


縦割りにしたバナナの間にはソフトクリームがてんこ盛り! ホイップクリーム・チョコソース・チョコスプレー、それからプリッツまで刺さっていて、パフェに負けない華やかさである。


冷たい! 甘い! ウマい! 風呂上りだから、なおさらウマく感じる。完全に体力回復した。よ~し、最後のむさこに行くぞ!!



・むさこ(武蔵小杉)

最後は武蔵小杉。おそらく3つのむさこの中ではもっともメジャーな気がする。


東急目黒線急行で小山から約11分、東急電鉄武蔵小杉駅に着きました。


私の思う武蔵小杉はこんな感じ。駅のすぐそばに高層マンションが立ち並ぶ街、それがこのむさこである。


けど、あえて駅を離れます。というのは、タワマンだけがむさこではないから。この街にも歴史を感じる建物がある、「京濱伏見稲荷神社」もそのひとつ。


1951年に京都伏見稲荷の神示で建立された比較的新しい神社で、境内には108体の狐像。そして京都の伏見稲荷と同じように、朱色の鳥居が連なっている。


きつねは、お米をねずみから守ってきたことから「おきつねさん」と呼ばれ、神の使いとされてきた。108体の像はそれぞれ表情も動きも豊かで見ていて飽きない。数えていないので、本当に108体あるかわからないけど、とにかくたくさんのおきつねさんがいらっしゃる。



・河川敷は青春

最後に、今回のむさこ探訪にふさわしい場所、多摩川河川敷にやってきた。武蔵小杉駅からはずいぶん離れたけど、どうしてもここを見に来たかった。なぜなら……。


河川敷って青春やん? なんか、トキメキを感じるのは気のせい? 気のせいじゃないよね! 河川敷のある環境で育った人にはわかないかもしれないけど、ない方からすると、間違いなく青春なんよ。


ただ草っぱらに座って写真撮るだけで、なんかいいんだよね。青い空と緑の草と俺!


ちょうど電車が走ってきた! せや! 電車も一緒に撮ったら、もっと青春!! 撮るしかねえ!


電車も一緒に撮るには、スマホをもっと高い位置に構えないと。あいにく三脚を忘れてきてしまったので、急きょ菅笠を三脚代わりにすることにした、笠の真ん中にスマホをセット! タイマーじゃ上手くいかないので、動画撮影だ!


よし、準備完了! あとは電車を待つだけ。3~5分に1本走ってるみたいだからすぐに来るはず。


ほら来た! 絶妙な構図です!!


いい画だ、青春だよ、これが青春!


いい画が撮れて満足したので、そろそろ帰ろう。


おっと最後にもう1つ。多摩川浅間神社にお参りして帰ろう。


急こう配の石段を上がっていくと、その先に立派な社。駅を出てすぐのタワマン周辺も見どころがあるとは思うけど、少し離れると歴史あるスポットがいくつもある。やっぱりここもいい街だ。


社の前には、河川敷を一望できる見晴台があった。いい景色だ、そしていい1日だった。


景色を眺める私の脳裏には、長渕剛の「しゃぼん玉」が流れていた。

「いったい俺たちはノッペリとした都会の空に♪ いくつのしゃぼん玉を打ち上げるのだろう♪」(「しゃぼん玉」より)


広大な小金井公園のあるむさこ(武蔵小金井)、都内最長のアーケード街パルム商店街のあるむさこ(武蔵小山)、青春を感じさせてくれる河川敷のむさこ(武蔵小杉)。

どのむさこも最高だ! むさこ大好き~ッ!! 全部いいむさこ! みんなでむさこに行こ~!!


参考リンク:公益社団法人「東京都公園協会」、名勝 小金井桜の会ケーニッヒ王様といちご多摩川浅間神社江戸東京たてもの園
執筆:佐藤英典
Photo:Rocketnews24
Screenshot::GoogleMaps

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