多彩なメニューから料理を選ぶのが楽しいフードコート。好みの違う複数人で行っても、各自が好きな料理を頼めるのが魅力だ。東京では「ヤエパブ」をはじめとするオシャレフードコートでのちょい飲みが人気と聞く。

しかしこの日の筆者はひとり。料理のシェアもできないし、荷物を席に残して立ち歩くのも少々不安なもの。ひとりでも楽しめる場所はどこかにないものか……と探して池袋の中華フードコート「沸騰小吃城(ふっとうしゃおちーちぇん)」にたどり着いた。結果、そこは天国であった。


・池袋、第三の中華フードコート「沸騰小吃城」

池袋駅から徒歩5分、ビルの3階に位置する「沸騰小吃城」。エレベーターで階上に上がると、すぐに飲食フロアが広がっている。

店内には小さな調理ブースが並び、屋台街を模している。飛び交う中国語と、読めない漢字に気分が盛り上がる!

しかし客はこの中を歩き回るのではなく、テーブルに着席してオーダーする。料理の配膳も店員さんが行う。本物の屋台ではなく、テーマパークのような演出と言った方が近い。

席に着くとQRコードを渡される。手持ちのスマートフォンで読み取れば、日本語メニューを閲覧可!

香港・東北・広東・西安・沙県といった地域ごと、あるいは前菜・麺類・一品料理といったジャンルごとに、数えきれないほどのフードメニューが並ぶ。その数およそ250以上! ドリンクを含めれば300を超えると思う。

名前だけではわからない料理も多数あるが、ほとんどが日本語訳と写真つきなので想像しやすい。数百円のメニューを1品から注文できるから、いろいろ組み合わせて楽しめる。これぞフードコートの真骨頂! 注文履歴や合計金額も閲覧可で便利。

初めてなので「食べられそうな量」と「珍味すぎないもの」という観点で、オーソドックスな料理をバランスよくオーダーした。



まぁ、筆者が読者なら「ひよってんじゃねーよ」と言いたいと思う。せっかく来たんだから「臭豆腐」とか「鴨血の辛にんにく」とか「夫妻肺片」とか食ってみろよ、と。

「夫妻肺片」とは何やら猟奇的な香りがするが、料理人が夫婦でメニュー開発したことを示すもので、牛モツのごま和えだという。


ともかく筆者はひとりだ。ものすごく辛いなど、食べられない味 / 量だった場合、残すのは非常に失礼なことだと思う。「グループのうち誰かは食べられる」というリスク分散も不可能。これはリスクヘッジである。

「鴨の頭煮込み」などのディープグルメは避け、味を想像できるものをチョイスした。


さっそく中国東北地方の串焼き料理「羊肉串」(2本 / 税抜340円)が来た! マスク越しにもはっきりと感じられるスパイスの香りがすでに辛い! 目に染みてシバシバするほどだ。

……ってか長いな!!!!


どれほど辛いだろうかと想像したが、噛みしめるとジュワリと広がる旨み。意外なことに「辛い」のではなく「塩っぱい」のでもなく、まさに「スパイシー」。ハーブやペッパーがブレンドされた複雑な味が広がる。

羊肉の臭みもまったくなく、軟らかい肉で食べやすい。美味である! ビールが進みそう。



続いて到着したのが「干し大根と豚肉入り水餃子」(税抜527円)。写真でも、もくもくと湯気が出ているのがわかると思う。

調理ブースの位置にもよるが、テーブルの目の前で調理し、完成の合図と同時にてきぱきと配膳されるので出来立てホヤホヤである。スピーディなライブ感がある。

飛び散り注意のジューシーな水餃子ではなく、しっかり具が詰まっているタイプ。干し大根がコリコリとした食感を生み、なんだか楽しい。クセのない、あっさりと素直な味つけで食べやすい。



さらに甜品(デザート)から「芋圓芋泥椰乃西米露」(税抜480円)が届いた。読み方はわからないが、タロイモ&ココナツ!

食後を待ちきれなくて味見してしまったが、甘いココナツミルクにいろいろな具が入っていて、これも美味しい。筆者の知識では具材の説明は不可であるものの、とにかく芋っぽい食感だけわかった。

オーダーしてあるのはラスト1品。大勢で食べるのが基本の中華料理店で筆者はひとりだったわけだが、まったく気にならない。

いい意味で他人に関心のない、距離感のある接客がとにかく心地いい。客は勝手に楽しんでいるし、店員は自分の役目が終われば気ままに過ごしている。さっきまで席で飲食していた人が、おもむろにバックルームに入っていくカオスっぷりも中国らしい。

日本の飲食店は気配りが素晴らしいが、それはいつも客を「見ている」からであって、正反対の「視線を感じない」という心地よさもあるなぁ。

……と人間観察していたら「煎餅果子」(税抜527円)が届いた。中国式クレープだといい、筆者は春巻きのようなものをイメージしていた。メニューが載っていたカテゴリーから想像するに、たぶんスイーツではなく、おかず系……


ふぁっっっ!?


え、ちょっ、待っ、デカッ……!


箸と比較すると、直径がおよそ10cmはあることがおわかりいただけると思う。恵方巻きのような、ロールケーキのような、巨大な巻物が2本!



具材はソーセージをたっっっぷりのレタスで包んだもの。パリパリに揚げた春巻きの皮のようなチップスがアクセントを加えていた。

手に持って食べるのかと思ったが、ソースもついていたので割ってみる。ワンタンのようなもちもちした皮に、タマゴが少し加わっている。

とりあえず皿に分けて1/4を食べた。味はスイートチリソースのような、タバスコのようなピリ辛。

野菜中心なので意外にイケるかと思ったのだが、先に水餃子も食べており、粉物である皮がなかなかにボリューミー。胃袋を圧迫してきた。

さらに1/4を食べた。まずい……いや、そっちの「まずい」じゃない。美味しいんだけど食べきれない……。

残すのは失礼とか言っておきながら自分がピンチである。麺類とか炒飯とか頼んでなくて本当~~~によかった。もう今後の予定とか体調とか帰路とか無視して食べるしかない。


と肝を冷やしていたら、なんと、なんと、持ち帰りも可! おずおずと声をかけると、店員さんが目にもとまらぬ早業でテイクアウト容器にまとめてくれた。「さも当然」といったその自然な動きに涙が出そう。神!!!!



・ビギナー歓迎のライトなフードコート

最後にQRコードを持ってレジに立ち寄り、料金を支払って完了。4品を頼んで食べきれないほどの料理が届き、支払いは2061円也。

本場中国の喧噪(けんそう)や猥雑(わいざつ)さには欠けるが、店員さんとの会話ほぼなしのモバイルオーダー、日本語メニュー完備、おひとりさま問題なし、のライトな中華フードコート「沸騰小吃城」。

ビギナーでも入りやすく、戸惑う場面はまったくない。それでいてメニューは本格派。すべてのメニューを制覇するまでには何年もかかるだろう。「いいとこどり」の現代的な新感覚フードコート、再訪問必須だ。


・今回ご紹介した飲食店の詳細データ

店名 沸騰小吃城
住所 東京都豊島区西池袋1-43-7
時間 月・水~日曜日11:00~翌9:00 / 火曜日11:00~23:00

執筆:冨樫さや
Photo:RocketNews24.