2024年5月15日より、ケンタッキーから「フリフリクリスピー」なる新商品が数量限定で発売された。カーネルクリスピーと専用スパイスを一緒の袋に入れ、振って混ぜ合わせてから食べるというものである。
なんだか物凄く既視感がある。既視感があるというか、マクドナルドの「シャカシャカチキン」に酷似している。加えてチキンの権威たるケンタッキーにおいて、今までこうした「シャカチキ」系の商品が存在していなかったことに少し驚きもある。
ともあれ、色々な意味で気になる「フリフリクリスピー」を実食しない手はなかろう。以降よりレビューするのでお付き合い願いたい。
私事で恐縮だが、筆者はかなりシャイである。しかしマクドナルドの店内で何ら人目を気にせず、遮二無二チキンをシャカシャカする程度には「シャカチキ」を愛好している。
「ゆえにケンタッキーよ、『シャカチキ』の聖域を侵すな」などと過激な思想をぶちまけたいわけでは決してなく、筆者はケンタッキーも同じく愛しているため、このたびの「フリフリクリスピー」には大変期待している。果たしていかなるクオリティなのか。
「フリフリクリスピー」について少々補足しておくと、前述のスパイスには「のり塩味」と「チーズ味」の2種類のフレーバーが用意されている。ポテト用などに単品で購入することもでき、その場合は各30円、カーネルクリスピーと合わせて買えば320円となる。
今回は2種類のスパイスを両方とも実食することにした。
・のり塩
まずは「のり塩」フレーバーとチキンを袋に投入していく。
「スパイス量はお好みで」との説明書きがあったので、筆者は目の前のチキンをありったけのスパイスで染め上げた。
そして袋を振る。あくまで気持ちの問題ではあるが、シャカシャカではなくフリフリする。郷に入っては郷に従えというやつである。
回数にして40フリフリはしたのち中身を確かめたところ、それでも袋の底にスパイスが余っていた。全投入したせいかもしれないが、致し方ない部分でもある。全くスパイスを余すことなくフリフリないしシャカシャカできる技術が開発されたなら、褒章物の偉業に他ならない。
やや不安を覚えつつチキンを取り出した筆者だったが、しかしその不安は一瞬磯辺揚げかと見紛うほどの海苔まみれの姿によって霧消した。魅惑的な装いと、かぐわしい磯の香気に誘われ、気付けばチキンにかぶりついていた。
その瞬間、カーネルクリスピー本来のにんにく醤油の味わいが弾けるや、それに負けじとスパイスのソルティーな風味が炸裂した。予想はしていたが濃厚である。とはいえ強い塩気の中にどこかまろやかさも感じられて、パンチがありながら整った仕上がりとなっている。
濃い味付けが苦手だったり、スパイスを無駄に袋の底に余らせたくない人は量を加減した方がいいかもしれない。だがこれはこれで間違いなく美味しいというか、むしろ濃ければ濃いほど普段のクリスピーとは異なる風情が感じられて良い。
どれだけ濃くともにんにく醤油と「のり塩」は全く喧嘩せず、新たな「和のクリスピー」をともに創りあげ、それをこちらに徹底的に浴びせてくる。一口食べてすぐに白米が欲しくなったくらいには「和」だ。正直ライスセットがないことに憤りさえ覚えかけた。
・チーズ味
一方、「チーズ味」の方は言わずもがな、打って変わって強烈なまでの「洋」だ。公式サイトによれば、チーズの王様とも呼ばれるエメンタールチーズを使用しているとのことで、噛んだ瞬間に洋食レストランに迷い込んだかのような芳醇な旨味が溢れ出てくる。
「のり塩味」よりはにんにく醬油との親和性が薄いかと思いきや、にんにく醤油とチーズの風味が口内でたちまち滑らかに溶け合い、高次元の調和に至るから不思議である。
もっと言えば、にんにく醤油のおかげで絶妙に「チーズ一辺倒のしつこさ」を遠ざけ、飽きの来ない造りにさえなっている。ライスセットが欲しくなった「のり塩味」とは違い、この「チーズ味」の方はアルコールのお供が十二分に果たせるようなテイストだ。
というわけで、新商品「フリフリクリスピー」は2種類のフレーバーそれぞれにおいて個性を発揮し、心を奪うハイレベルなパフォーマンスを見せてくれた。食べ終えた今となっては、この商品が数量限定であることが残念でならない。
それこそ「シャカチキ」のように恒常的に、人目を気にせずカーネルクリスピーをシェイクする日々を送りたい。「ケンタッキー様、どうにかなりませんか」と、尻尾をフリフリと振るような気持ちが筆者の中に渦巻いている。
参考リンク:日本KFCホールディングス 公式サイト
執筆:西本大紀
Photo:Rocketnews24.