今更ながらPS5を買った。かつて品薄だった頃の争奪戦に筆者は惨敗を喫し続け、「それなら一生買ってやるものか」と齢30を越えて無生物に対する反抗期を発症していたのだが、当然その反抗期が一生続くことはなかった。

理由は単純で、我慢できなくなったのである。魅力溢れる新作ゲームが登場するたび、筆者の反骨心はグニャグニャと折れ曲がり、最終的にはベビースターラーメンのようになっていた。

ともあれ、そんなこんなでPS5を手に入れたわけだが、しかし初めて起動した直後に予期せぬアクシデントに見舞われることとなった。PS5がキラキラしたまま動かなくなったのである。

・あるアクシデント

もしかしたら「反抗期を脱するや幻覚が見えだした30代の狂人」と思われているかもしれないが、少し話を聞いてほしい。PS5を起動し、初期設定を行っていた時のことだ。

システムソフトウェアとコントローラーのアップデートを終えたあと、画面にキラキラとしたエフェクトが映し出されたまま何も進展が起こらず、次の工程に一切進まなくなってしまったのである。

そこで調べてみたところ、筆者以外にも同様の症状を報告している人を多数発見することができた。どうやら2023年11月10日以降に発売された新型PS5において頻発している不具合らしい。

いくらキラキラしているとはいえ、必要以上に長時間見せ続けられると心が乱れる。たまらず電源スイッチを長押ししてPS5を強制終了させた。そうして再起動させたあとは何事もなかったかのように工程が進んだ。この解決法に関しても同様の報告が多数なされている。

ただ、あくまで強制終了は苦肉の策であり、推奨すべき処置ではない。不具合に遭遇した場合は、すぐサポートに連絡するのが理想的だろう。しかし、である。理想を持ち出すのであれば、そもそも不具合が起きないことこそが望ましい。

発売直後ならまだしも、すでに約半年が経過している。素人目に見ても、修正することがそこまで難しい不具合には思えない。そのうえ、広く報告されている不具合のわりに、公式側が大々的に周知しているようにも見えない。

もう少し何とかならないものかという若干の落胆を禁じ得なかったし、この件を皆さんと共有したいとも思い、時すでに遅くはあるが筆を執った次第である。



・恐るべしPS5

この話には続きがあって、筆者のPS5に対する印象がそれ以降上向くことはなかったかと言えば全くそうではなく、むしろ鮮やかにV字回復を遂げたということも書いておかねばフェアではなかろう。

何と言っても、ゲームのグラフィックの素晴らしさである。すでに大勢の人が言及している点ではあるが、それでも言わせてほしい。

正直、個人的にゲームのスクリーンショットを一目見ただけでは、PS4のゲームとの違いは、例えばPS2からPS3へ、あるいはPS3からPS4へ進化した時ほど歴然とわかるものではなかった。しかし実際に遊んでみると、やはり確かに違うのだ。

テクスチャの密度、画面の鮮やかさ、映像の滑らかさ。それらが織りなす「空気感」とも呼ぶべきものが、まるでディスプレイの奥に地続きでゲームの世界が広がっているかのような錯覚を抱かせる。



筆者は非4K環境において、「FINAL FANTASY VII REBIRTH」や「Rise Of the Ronin」といったタイトルをまだ序盤のみ遊んだだけだが、それでも十分「進化」は感じ取れている。

幼い頃はただ純朴に「ゲームの世界に入りたい」とよく思ったものだが、こうもリアリティレベルが上がってくると、「生活するには辛そう」とか「臭いがきつそう」といった妙にネガティブな所感まで湧いてくるから不思議である。

また、加えて特筆すべきはコントローラーに備わっているハプティックフィードバック、並びにアダプティブトリガーと呼ばれる機能だ。

これらについてもさんざん評判は聞いており、例によって「騒がれているが大したことはなかろう」と高を括っていたが、実際に遊んでみると筆者の硬い態度は生八ツ橋のごとくほぐれた。

ハプティックフィードバックとは、簡単に言うと「尋常ではなく緻密な振動」である。ゲームのキャラクターが大地を歩けば、歩みに合わせてコントローラーの中央部がかすかに震え、強風に煽られれば、全体がぶるりと震える。簡単には紹介しきれないくらい振動の種類は多い。

一方、アダプティブトリガーは「トリガーボタンを押し込む時の抵抗が状況に応じて変わる機能」。普段は抵抗なく簡単に押し込めるが、例えばまさに銃のトリガーを引くようなシーンでは、「グググ」と段階的に沈んでいくような重い感触を伝えてくる。

とにかくこのゲームハードは、こちらを没入させるための手段に事欠かない。PS4と明確に線を引かれる「次世代的な部分」はそこだと思う。恐るべしPS5である。



・注意点、やっておくべき設定

かくして何だかんだでPS5を楽しんでいた筆者であったが、遊んでいるうちに更に2つばかり「あらかじめ知っておけば事がスムーズに運ぶであろう点」に気付いたので、最後に付記しておく。上記の不具合と合わせて参考にしてほしい。

1つ目は、「思っていたより排熱が激しい点」である。どんなゲームを、どれくらいの時間プレイしているかにもよるが、例えば前出の「FFVII」を長時間プレイ中にPS5背面の排熱部分に手をかざしてみると、ちょっとしたストーブくらいには熱が吹き出ていた。

閉め切った部屋でプレイしていると、誇張抜きに室温ごと上昇しているような感覚さえ覚えることもある。PS5の置き場所には重々気を付けたいし、空調管理も大切だろう。

2つ目は、「ヘッドホンを着けてプレイする際は、PS5の3Dオーディオ設定を確かめた方がいい」点である。再び「FFVII」を例に出すが、同ゲームをヘッドホンでプレイしていた際、「キャラクターのボイスはクリアなのに、効果音はややこもって聞こえる現象」に遭遇した。

そしてその現象は、PS5の「設定」から「サウンド」項目に進み、「3Dオーディオ(ヘッドホン)」内の「ヘッドホンで3Dオーディオを出力」をオフにすると解消され、全てのサウンドがクリアに聞こえるようになった。

筆者の場合はオフにすることで事態が好転したが、ゲームの種類やサウンド環境、個人の好みによって変わってくるとは思うので、各々で実際に確認し、調節してもらいたい。



・新たな世界

さて、ここまでつらつらと書き連ねてきたが、レビューというより、まとまりのない緩い雑感のようになってしまった。それでもPS5の購入を検討している方にとって、少しでも役に立つ記事になっていれば幸いである。

改めて、筆者のPS5についての「現状の結論」を示すとするなら、「やや出鼻はくじかれたものの、買ってよかった」ということに尽きる。冒頭で「今更ながら」と書きはしたが、遅いからといって無駄などということは決してない。

重要なのは、新たな世界に飛び込むかどうかだろう。筆者は遅れを取った年月の分、PS5にしっかり時間を捧げたいと思う。反抗期の次は、「PS5孝行」と言ったところか。

執筆:西本大紀
Photo:Rocketnews24.