これは金沢版トルコライスだ! ひと口食べて、そう思った。オムライスの卵にフィッシュフライと小えびフライが一緒にとじられ、上からタルタルソースとケチャップがかけられた味は、洋食風だけど日本的な懐かしさもある。まるで昭和の洋食店にタイムスリップしたかのようなハイカラさが感じられるのだ。
金沢ではコンビニ弁当にもなるほど親しまれているというハントンライス。それは北の大人のお子様ランチと言っても過言ではない。金沢の地元民の話によると子供の頃から慣れ親しんだ味なのだそうな。海鮮のイメージが強いだけに意外な名物と言えよう。
・ガチのご当地グルメ
ハントンライスの存在について教えてくれたのは金沢のサラリーマン・松下さん。生まれも育ちも金沢で金沢っ子歴40年以上の猛者である。
松下さんは子供の頃コンビニ弁当でハントンライスが販売されているのを見たことがあるそうで、歴史と広がりを感じずにはいられないが、そんなハントンライスの発祥の店の1つとされているのが『グリルオーツカ』なのだとか。
・地元民に人気
JR金沢駅から南に離れた片町の路地にある『グリルオーツカ』。観光客目線で言うとフラッと行合いにくい場所で、おまけにその日は雨が降っていたが、店は行列であった。
外観は古き佳き洋食店という感じ。どことなくドッシリした印象があるところに食堂オーラがにじみ出ている。外観からすでにウマそう。
・ガッツリ系
店内に入ると、机席だけどナチュラルに障子もあるのが良い味を出していた。生活臭がするというか、どことなく実家オーラが漂っている。
ハントンライスは税込1150円。メニュー表に書かれた名前の由来によると、「ハン=ハンガリー」で「トン」はフランス語でマグロという意味らしい。
その名の通り、カジキマグロフライ2個と小エビフライ2個が乗っている。サイズは普通でもガッツリしたボリューム。
・店主に話を聞いてみた
松下さんの話によると、ボリュームがありすぎるために現在の店主さんが小サイズ(税込1100円)を作ったのだとか。そんな店主さんは三代目で、創業したシェフのお孫さんの大塚正樹さん。
家族で店を切り盛りしており、訪ねた際はお母さんもいたので、ハントンライスについて話を聞いた。2人いわく、元は『グリルオーツカ』で賄い料理として食べられていたメニューだったそうだ。
確かに、ごった煮だけど確実にウマイやつな組み合わせの発想は賄いっぽい。でも、じゃあなんで発祥の店がいくつもあるのだろうか?
大塚正樹さん「この店で働いていた方が独立してお店を出す際に、賄い料理をメニューにしたいという相談があり、祖父が許可したらしいんですね。一般のお客さんに向けてメニュー展開された最初はそのお店で、その後、3カ月後くらいにこちらでもメニュー入りしたという流れだったようです。そのため、どっちも発祥の店ではあるんですね」
──とのこと。どことなくおおらかさを感じるエピソードは店主さんの口から聞けて良かった。
・変わらない味
ちなみに、店外のメニューでは「クリームスープ(税込580円)」もオススメされているのだが、こちらも当時から変わらない味だという。食べてみたところ、クリームスープにしてはあっさりとした味で、濃厚な味のハントンライスと一緒に食べるとスッキリしてバランスが良い。
雰囲気も含めて金沢の良心を感じる店だった。片町は地理的には兼六園や金沢21世紀美術館、石川県立美術館に近く、一本路地に入ると長屋のような街並みが残っている町でもあるため、史跡よりももっと庶民的な歴史を感じることができる。
『グリルオーツカ』もまた、そんな町に連綿と続く息遣いを感じることができるスポットの1つ。金沢に行った際はぜひ訪ねてみて欲しい。
・今回紹介した店舗の情報
店名 グリルオーツカ
住所 石川県金沢市片町2-9-15
営業時間 11:00~15:30、17:00~20:30
定休日 水曜日
執筆:中澤星児
Photo:Rocketnews24.
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