「日本のブラジル」として有名な群馬県大泉町。住民の約2割が外国人という、全国的にも大変珍しい町である。いたるところで多国籍料理が楽しめるため、食べ歩きをするには打ってつけのスポットだ。

筆者はこの町で様々なブラジル料理をレポートしてきたが、駅前にいるタクシー運転手さんならもっといいグルメ情報を持っているはず。今回はタクシー運転手さんに大泉町でオススメの料理店を尋ねてみようと思う。


・意外な展開

「日本のブラジル」の玄関口・西小泉駅のすぐ近くでタクシー案内所を発見。日本人のタクシー運転手さんに「おいしいブラジル料理店までお願いします」と言ってみたところ……


ブラジルのお店はよくわからないです


との言葉が返ってきた。マ、マジかよ……まさかの展開にかなり困惑。運転手さんいわく、過去にテレビ取材で同様のタクシー依頼があったそうだが、実際にブラジル料理を食べに行ったことはないため、今回もうまく紹介できないかもしれないとのことだった。


気持ちを切り替えて今度は運転手さんがよく行くお店について聞いてみる。すると……


「それだったらいいお店を紹介できます」と即答。さらに運転手さんから「ランチ、ご一緒してもよろしいですか?」と、急きょデートのお誘い!

これは本当に嬉しい申し出である。さっそくタクシーに乗り込みオススメのお店へ連れて行ってもらうことに。

ちなみに運転手の名前は原田さん。四半世紀以上もタクシー運転手を務める大ベテランである。



車を走らせること約5分、到着したお店は蕎麦・ラーメンに定評のある「せとや」。古き良き時代の面影を残す外観が印象的だ。


お店のドアを率先して開けてくれる紳士な原田さん。グレーのスーツがビシッと決まっていてカッコイイ。ふと店先に目をやると “しばらくの間ラーメンのみの営業になります” と注意書きがあった。どうやら蕎麦は現在お休み中の様子。


・タクシー運転手さんとランチデート

入店後、メニューをチェックしてみる。ラーメンの種類はシンプルにラーメン・チャーシューメンのみ。プラス100円で大盛りにもできる。


5分ほどで筆者の注文した『チャーシューメン大盛り(980円)』が到着。向かいに座る原田さんが頼んだのは『ラーメン大盛り880円』。73歳という年齢にも関わらず、平然と大盛りをオーダーする姿に正直ときめいた。

ここのラーメン、何十年も通うほどおいしいんですよ」と、原田さんは微笑みをこぼす。その愛くるしい表情を見ていると、こちらまで幸せな気分になってくる。



・実際に食べてみた

それでは冷めないうちに食べていこう。透明感のある醤油スープが実に美しい。チャーシューが5枚以上も乗っかっていて迫力満点。太めのメンマもトッピングされていて結構嬉しい。


特別に原田さんのラーメンも見せてもらったところ、筆者のものと同じように醤油ベースでチャーシューは2枚入り。その他にも、ほうれん草や海苔などがトッピングされていて彩りは綺麗。昔懐かしい醤油ラーメンといった感じだ。


麺は平べったくてモッチリとした歯ごたえが特徴的。麺にスープがよく絡んでスルスルと喉を通っていく。メンマのコリコリ感と刻みネギのシャキシャキ感も合わさって大変美味である。


チャーシューはホロホロと柔らかくてとろけるウマさ。何枚でもペロッと食べられてしまいそうなほど味わい深い。これはヤミツキになること間違いなし。

あっという間にスープまで飲み干して完食。スッキリとしたキレのあるスープはこれまた絶品だった。



タクシー運転手さんと一緒にラーメンを食べる機会が生まれるとは……思いがけない展開が待ち受けていてビックリしたが最高に楽しかった

機会があれば再びデートをお願いしたいものである。次回は筆者がブラジル料理店を紹介して一緒に食べに行くのも面白そうだ。


・今回ご紹介した飲食店の詳細データ

店名 せとや
住所 群馬県邑楽郡大泉町仙石2-17-5
時間 11:00〜14:00
休日 水曜日・木曜日

執筆:古沢崇道
Photo:RocketNews24.