東京都千代田区の「学士会館」といえば、東京大学の発祥地であり、日本野球の発祥地であり、旧七帝大(北大・東北大・東大・名大・京大・阪大・九大)の卒業者のみが入会を許される学士会の本拠地だ。
現在はレストランやホテルなどとして一般利用されていて、2020年には佐藤記者が人気ドラマの撮影場所となった201号室でステーキ丼を食べている。そんな学士会館が年内いっぱいで営業を終了するそうだ。
そこで今回は、1928年の開業当時の原型を今なお保つ “泊まれる有形文化財” こと学士会館に宿泊することに。閉館前に超ノスタルジックな雰囲気を味わい尽くしてきたので報告したい。
・学士会館
都営三田線・新宿線・東京メトロ半蔵門線「神保町駅」のA9出口から徒歩約1分の場所にある学士会館。夜は建物全体がライトアップされ、どこかミステリアスなオーラが漂っている。
南玄関の半円大アーチなんかとくに強烈。もはやダンジョンの入口にしか見えない。ちなみに玄関前には「東京大学発祥の地」の石碑が建っている。
ついでに紹介しておくと、北玄関のスグ近くに建っているのが「日本野球発祥の地」のモニュメントだ。1872年(明治5年)にアメリカ人教師が生徒たちにベースボールを教えたのが始まりらしい。
・2024年12月で休館
さて、関東大震災の復興中に建ちあがった学士会館は、震災の教訓を活かして当時では珍しい耐震・耐火の鉄骨鉄筋コンクリート造りを採用。戦後はGHQに接収され、米軍の高級将校の宿舎として使用されるなど激動の時代を駆け抜けてきた。
開館から100年近く経って老朽化が目立ち、耐震補強の問題が深刻になっていたこと、また道路(白山通り)の拡張計画もあって、隣地所有者と共同で再開発が行われるようだ。昭和初期の雰囲気を体験できるのもあと少しである。
・宿泊
チェックインは21時まで。この日は仕事を終えてギリギリに到着した。優雅な赤絨毯を駆け上がってフロントへ。今回はシングルルーム1泊素泊まりで1万1000円である。
最近は宿泊費が高騰していてビジホでも1泊2万円くらいするもの。駅近の歴史的な建物に宿泊できて1泊1万1000円はかなり良心的だと言える。もちろん予約は困難。実を言うと、私も数カ月前から狙っていてやっと予約できた感じだ。
エレベーターも良い……けど、せっかくだから階段で上り下りしよう。ってか、見学だけでも楽しいのに宿泊できるのはヤバい。
学士会館の建築のコンセプトは「会員の戻るべき家」だという。家庭のような親しみやすさや落ち着きのある演出を心がけたそうだ。長い廊下に照明が一直線に並んでいて奥行き感を演出している。
本当にどの廊下も長い。そしてモダンで賢い雰囲気。絨毯も渋い。開業当時の華やかさを物語っているから、どこを切り取っても絵になる。重厚感がありながらも温かみを感じるのだ。
それでは客室へ。
…………
まさにクラシック……! 小説に出てきそうなレトロモダンな客室である。なんでも会館建築以来のオリジナルデザインを色濃く残したという。往時の面影をそのまま残す空間で、歴史と伝統を丸ごと味わえそうだ。これはたまらねぇぇ。
天井は高くて(3m)開放的。バス・トイレは別々。隅々まで清掃が行き届いていて気持ちがいい。
疲れていたので、さっそくチェックイン時にもらった入浴剤を使ってゆっくり風呂に入り……
…………
悠久の歴史を感じながら深い眠りについたのだった。おやすみなさい。
・まさかの展開
──そして翌朝、ザッザッザッという大きな音で目が覚める。オイオイなんだなんだ。「まさか泥棒か!」と思い、急いで体を起こして音がする方に目を向けると……
めっちゃ窓拭いてるゥゥウウウウウ!
衝撃である。なんせ寝ぼけている状態で目の前に現れたのがほぼスパイダーマンなのだ。そうでなくても、いきなり窓の外(しかも4階)に人間がいたら誰だって驚くだろう。一瞬、マジで夢かと思った。
・ドラマ撮影地も見学
そんなこんなで身支度をして、ドラマの撮影で使われた201号室をチラ見してからチェックアウト。ちなみに朝食のオススメは目の前のロイヤルホストとのことでした。
というわけで、単に快適な宿に泊まりたい方にはオススメできないが、ゆったりとした時間が流れる歴史的な建物で過ごしたい方はぜひチェックしてみてほしい。予約が埋まってしまう前にぜひ!
・今回ご紹介した施設の詳細データ
名称:学士会館
住所:東京都千代田区神田錦町3-28
執筆:砂子間正貫
Photo:RocketNews24.
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