個人的に、数あるチェーン系コーヒー店の中でも近所にあると嬉しいのが「上島珈琲店」である。
カフェと喫茶店の中間みたいな居心地のよさ、フードメニューとドリンクの充実ぶり。客層が落ち着いているのもいい感じ。冷たい銅のカップで飲む看板メニューの「黒糖ミルク珈琲」も美味しいし……。
さて、そんな上島珈琲店も季節限定で凝ったドリンクを出しているのをご存知だろうか。2023年8月から販売しているのが「コーヒースパークリング ~芳醇オリーブ仕立て~」。
これがとてもじゃないけどチェーン店で出すようなメニューじゃなかったのである。
・オリーブオイル×コーヒー×炭酸
「コーヒースパークリング ~芳醇オリーブ仕立て~」は、アイスコーヒーを炭酸仕立てにして、なんとオリーブオイルをプラスしたもの。要素が多すぎる。
炭酸入りコーヒーは、ごくたまに見かける。ただ、江川記者がタリーズの商品でレポートしていたように、炭酸コーヒーはどうにも日本人の口になじまず、なかなか市民権を得られていないのが正直なところ。
ちなみに、オリーブオイル入りのコーヒーはスタバの一部店舗で販売されていたようだ。ひょっとしたら今後、流行るのかもしれない、オリーブオイルコーヒー。
ところが上島珈琲店ときたら、ただでさえ難易度が高い炭酸コーヒーにオリーブオイルを入れてきたのである。なんというウルトラC。消費者の味覚を信頼しすぎているんじゃなかろうか。
そもそも、冷たいコーヒーソーダにオリーブオイルを入れるのを想像すると、油が固まったりして美味しくなさそうというか……。まさに水と油の組み合わせだけど馴染むのか? という心配もある。まあ、そんな変わったもん、頼むしかないよね。
・えっ、クリームとアイスも入ってんの?
「コーヒースパークリング ~芳醇オリーブ仕立て~」はレギュラーサイズが850円、ラージサイズが970円という強気な価格設定(一部店舗では価格が異なる場合あり)。美味しくなかったら大人でも悔しくて泣いてしまうような値段である。
注文した「コーヒースパークリング ~芳醇オリーブ仕立て~」を渡されてびっくり。
コーヒーソーダの上に、生クリームとアイスクリーム、オリーブの実が載っているのである。えっ、コーヒーソーダにオリーブオイルだけでも情報量が多いのに、なんだこれ。
よく見たら飾りの葉っぱもバジルという芸の細かさ。私は上島珈琲店にいるはずなのに、高級フランス料理店でコース料理でも注文したような気持ちになった。斬新すぎるだろ。
まあ、実際はオリーブオイルもコーヒーソーダもイタリア名物なんだけど、この複雑すぎる組み合わせは高級フランス料理店って感じだったのだ。
かつてこれほど飲むのに緊張した飲み物はない。味の想像がつかなすぎて甘いのかしょっぱいのか苦いのかも分からない。
よく見ると底の方にオリーブオイルらしきものが沈殿していたので、グルグルかき混ぜてからひとくち……。
「うそ……意外と美味しい」
そこまでコーヒーの苦味は感じず、シュワッと爽やかなソーダの酸味の奥に、オリーブオイルの青い香りが弾ける。酸味が強い浅煎りのコーヒーを使ってるのかもしれない。
そして一見まとまりがなさそうに見えるコーヒーソーダとオリーブオイルをつなぐのがまろやかな生クリームとバニラアイスクリーム。これがあるおかげで、ソーダとオリーブオイルが分離しないし、いい仕事しすぎている。
最初はアイスを食べながらクリームソーダ風に楽しめるし、そしてアイスが溶けたら、ほどよい甘みとまろやかさのコーヒーソーダになる……。最後までちゃんとオリーブオイルの香りがするので、不思議な飲み物すぎて何度も口にしてしまった。上島珈琲店、すごすぎるだろ……。
余談だが、レギュラーサイズでも他の店のラージサイズぐらいのボリュームがあった。
・ただし好き嫌いは分かれそう
想像以上に美味しくてびっくりしたけど、万人受けするか……といわれたら答えに窮する味でもあった。
ハーブとか多国籍料理があまり好きじゃない、味覚が保守的な人が飲んだら「なんか変な味がする」と拒否しそう。あとはオリーブオイルの香り自体が苦手な人もたぶん好きじゃないと思う。
とにかく食への好奇心が旺盛で、新しい味が好きな人なら一度は試す価値はありそう。まず家で再現するのは難しいと思うし、専門店ならではの味になっている。
チェーン店なのに、そのへんのオシャレカフェもびっくりの超個性派ドリンクを作っちゃう上島珈琲店、個人的に応援している。