今から十数年前のことだ。たこ焼き屋さんのメニューにあった『明石焼き』を食べたことがある。その時は「出汁に入れて食べることのほかは、これと言ってたこ焼きと変わりないのかな」という程度の感想だったように思う。
先日、明石に行く機会があったので「せっかくだし久しぶりに明石焼きを食べてみよう」と目に付いた店に入った。するとどうだろう。久しぶりに食べたソレは記憶の中にある明石焼きとは、全くのベツモノ。
記者は明石焼きについて、何もわかっていなかったことを思い知らされたのだ。
・地元では明石焼きと呼ばない……?
JRの明石駅を降りると、さっそく至る所でタコが出迎えてくれる。人の流れに従ってぶらぶら歩いていると、魚の棚商店街が見えてきた。
商店街のお店はいずれも明石の海の幸、練りものなどが所狭しと並んでいる。これぞ海辺の商店街といったていで眺めているだけでとても楽しい。
近年は明石のタコも漁獲量が低迷していると聞くが、とてもそうは見えないほどに、あちらもこちらも明石のタコでいっぱいだ。
寿司も美味しそうだなと思いつつ、この日は明石焼きを食べると決めていたのでグッと我慢。明石焼きはどこですかね……と思いながらしばらくアーケードを散歩する。
その時になってようやく気付いたのだが、至る所で「玉子焼き」の文字が目立つ。状況から察するに明石焼きのことだと思われるが、明石では一般的な呼び方なのだろうか。
不思議に思いつつ、レトロなたたずまいの『たこ磯』というお店に入ってみることにした。看板にはやはり「明石名物玉子焼」と書かれている。
お昼は過ぎ、おやつタイムにしてはやや早い時間だったが、店内は満席。地元の常連さんと見られる姿も少なくなく、人気のほどが窺える。
メニューはいたってシンプルだが、タコのみが入ったもののほか、タコとアナゴのミックスもあったのでそちらを注文(15個・税込1100円)することにした。
・驚きの連続
ほどなくして運ばれてきた明石焼きは、板の上に奇麗に陳列されていてなんとも可愛らしい。箸で持つとフワフワっと柔らかく、気を付けなければ破ってしまいそうだ。
記憶の中にある明石焼きはもっと丈夫なものだったので、慌てて箸を持つ手の力を緩めた次第である。だし汁に入れて食べると、これまたびっくり。
口の中でホロホロと溶けていくような感触だ。明石焼き、もとい玉子焼きはこんなにも繊細な食べものだったのかと驚かざるを得なかった。
タコとアナゴの味がしっかりしていながらも、出汁が優しい味なのでいくらでも食べられそうだ。二日酔いの時にも良さそうだなあ、などと思いながら食べていたらあっという間に完食。
この歳になるまで明石焼きの本当の姿を知らずに生きてきたことを少し恥ずかしく思いながら、でも、今知ることができて良かったなという満足感に包まれつつ店を後にした。
帰宅後明石市の公式サイトを覗くと、名称ほかその秘密について触れられていた。曰く、明石のまちを全国にPRするため「明石焼」とも呼ばれるようになったようで、玉子焼きの名の方が地元では一般的のよう。
またあの独特の舌触りは「じん粉」という、小麦粉のデンプンを精製した加熱しても硬くならない材料を使っているそうで、そこに秘密がありそうだ。
とにもかくにも、はじめてのちゃんとした明石焼き(玉子焼き)体験は驚きの連続。あの独特の食感と味わいを求めて、また近いうちに本場明石に出向いてみたいと思っている。
参考リンク:明石市
執筆:K.Masami
Photo:Rocketnews24.
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