恐らく清水寺や金閣寺と並んで、京都に来る全国の修学旅行生がほぼ確実に行くであろうホットスポット「三十三間堂」。

凄まじい数の仏像が並んだ写真は教科書でもお馴染みで、テストでも “ここはどこでしょう?” みたいな感じで問われがちな場所だ。

恐らく全日本人が知っている場所であり、全人口のかなりの割合が来たことがありそう。しかし私は40歳にして初めて来る機会を得た。

・初

JR東海による「そうだ 京都、行こう。」の今年の夏のテーマが仏像なのだが、当然のごとくここもピックアップされており、そのプレスツアーで連れて来てもらったのだ。


中には修学旅行生が沢山いた。やっぱ普通の学校なら行程に入れてるもんだよなぁ。かく言う私も修学旅行は奈良・京都だったのだが、寺は1つも行けなかった。

まず、なぜか全行程の8割くらいが奈良だったのだ。しかも奈良では激しい雨の降る中を、傘もレインコートも無しに、錆びきって歩いた方が楽なレンタルのママチャリを何時間も漕がせられるという苦行が待っていた。

行き先は、何処とも分からぬ広大な畑のど真ん中にある、誰のものとも知れぬ古墳だった。着いたら、雨で濡れてもはや何も描けなくなった紙に、畑の中の古墳をスケッチさせられるというプログラムで、意味不明が極まっていた。

残り2割で訪れた京都では、京都駅前のよくわからん店でラーメンを食った後に清水寺の手前の坂まで行って時間切れで帰るという展開。

全てがあまりに意味不明で信じがたいほど不毛だったので、想い出となる土産も相応のものであるべきだと考え、2千円くらいの目出し帽を買って帰ったのだ。

楽しそうに「三十三間堂」を見て回る修学旅行生を見ていたら、あまりにもクソだった私の修学旅行を思い出してしまった。

そんなわけで総勢1032体もの仏像群を目にするのは今回が初めてなのだが、これほどのものを子供の頃に目にできるというのはマジで恵まれたことだと思う。


・検索システム

凄まじい迫力に圧倒されていたが、見慣れてくると、ちょっと思うところが出てくる。


後ろの方とか全然見えなくね?


全部外見が違うらしく、しかも全て国宝。それならば奥の方の像もよく見たいものだが……と思っていたら、本堂で面白いものを見つけた。

それが “「国宝 千体千手観音立像・二十八部衆像・風神像・雷神像」検索システム“。


本尊の裏の順路沿いにあるのだが、こいつはマジでヤバい。システムの名称の通り全ての像が配置通りに掲載されており、タッチパネルで選んでその詳細を見られるというもの。

館内は一切の撮影等が禁じられていたため、その場で1度見て暗記したのを外でパンフの余白にスケッチした画面がこんな感じ。本物はもうちょっと細かく像の名前が書かれていたりしたと思うが、まあそこは瞬間記憶からのスケッチを清書した図なので。


この画面から、例えば「第一群」の部分を押すと、そこに含まれる100体の像の一覧が表示され、そこからさらに任意の1体を選んで詳細を見られるという感じだったと思う。

これを操作して初めて知ったのだが、驚くべきことに千手観音たちにはそれぞれ個別の名前があるらしい。番号が振られているのは知っていたが、よもや名前があったとは。よくもまぁ1001体分の名前を思いついたものだ。

それにしても、仏像の数が多いのもあって、この検索システムの情報量はあまりに膨大だ。どういう経緯でこれを作るに至ったかは不明だが、ヤケクソ気味なレベルの気合を感じて思わず笑ってしまった



惜しむらくは、あまり目立たないのか何なのか、スルーしていく観光客が多い点。この調子では全ての像を閲覧しきった者が存在するのか疑わしい。ぶっちゃけ、関係者以外には1度も閲覧されていない仏像のページがあってもおかしくない。

このシステムはもっと注目されていいと思う。タッチパネルはたった2台しかないのだが、皆さんが「三十三間堂」にお越しの際は、是非この検索システムを弄(いじ)ってみて欲しい。

参考リンク:そうだ 京都、行こう。三十三間堂
執筆&写真:江川資具
提供写真:JR東海
ScreenShot:三十三間堂

▼お寺の人から色々と興味深い話を聞いた。建物にほどこされた鎌倉スタイルな免振構造だとか、1001号の話だとか。