観光客が増えすぎ、近年オーバーツーリズムが問題となっていた京都。渋滞、マナー問題、混雑、騒音、排気ガス……。それがコロナ禍で一変。

観光業界の苦境は察するに余りあるが、地域住民にとっては後にも先にもない、穏やかな時間が流れていたのではないだろうか。

混雑に加担している張本人がいうことではないが、旅行者にとっても「人がいない観光地」というのは魅力。「人出が戻ってきた」という情報と、「まだまだ厳しい」という情報が錯綜しているいま、現地の様子を確かめてみた。


・金閣寺

京都でも屈指の人気観光地、金閣寺。金ピカの舎利殿は「黄金の国ジパング」のイメージそのもので、外国人観光客の人気も高いと思う。

境内に入った途端に池があり、有名な「あの構図」が見られる。予兆もなく一瞬にして広がるパノラマは、何度も来ていてもちょっと感動する。砂利の広場は、みなが写真のために足を止める定番混雑スポットだ。

しかし11月上旬の平日10時には、なんと写真撮り放題!


意図せずとも人と人とのあいだにしっかりパーソナルスペースがあり、タイミングを見計らえば簡単に最前列で写真を撮れる。

庭園を散策するあいだも、自分の周囲に人がいない時間帯がたくさんある。


人とぶつかることもなく、ぶらぶら歩くことが可能。まるで近所の公園を散歩するようなノリで世界遺産を探索できるのである!! こんな京都、初めて!


・銀閣寺

続いては11月上旬の平日11時ころの銀閣寺。周辺の様子からは、やはり昼に近づくにつれ人出が増えてくるように見受けられる。


境内でも写真スポットは人とかちあう。譲り合わないと、ぶつかったり、人の撮影を遮ってしまったりする。


しかし庭園では、やはり人がいない瞬間がたくさん! 苔もゆっくりと観賞できる。奇跡のようなシチュエーションである。

周りに人がいない、というだけで感性が何倍にも鋭くなるような気がする。同じ場所の印象が180°変わるといっても過言ではない。深呼吸して、植物を観察し、木もれ日を浴びる。

「もっと早く歩きたいのに」「ぶつからないように」「人の写真に入っちゃった!」などという雑念がまったく湧かないのだ。


・清水寺

観光客の人気ナンバーワン(ガイドさん談)だという清水寺。時刻は平日昼の13時ころ。

この時間帯になると、さすがに人がいっぱい! 駐車場も観光バスで埋まっている。歩けないほどではないが、「混雑している」といっていいだろう。立ち止まったら迷惑になるのは確実だ。


これはしんどいなぁ……と思ったが、有名な舞台にまで進んだら意外な光景が!


ご覧のとおり、舞台自体が広いこともあるが、十分に歩いて回れる。


写真も撮れるし、最前列にたたずんで京都の街並みをゆっくりと一望できる。


前方に人が集まりやすいということはあるが、舞台全体が埋まるということはない。


コロナ前には行列必至だった「音羽の滝」も、ほとんど待ち時間なし。


参道に戻った13時半ころには、道幅いっぱいに人がいた。11月上旬のこの日、もっとも混雑していたのが「昼下がりの清水寺参道」だった。人波に続いてゆっくり進むしかない。

ところが産寧坂まで来てみると、タイミングにもよるが、ゆったり歩ける瞬間もある。修学旅行の学生は散見されるものの、いわゆる団体ツアーを見かけず、少人数のグループばかりなので静かなものだ。本当に混雑しているときに比べれば「こんなもんじゃない」という感じだろう。


・伏見稲荷大社

伏見稲荷といえば、なんといっても千本鳥居。写真映えするエキゾチックな風景が広がるとあって、外国人人気の非常に高いスポット。JRの駅を出たら数歩で鳥居、という特異な立地も特徴のひとつ。

実は筆者、駅を降り立った瞬間に、人種・国籍・年齢の入り混じった人・人・人の波にけおされ、そのまま改札にUターンしてトンボ返りしたことがある。

しかし、11月上旬の平日11時ころには歩く人も遠目に数えられるくらい。


有名な千本鳥居は、以前から奥に進むほど人が少なくなる傾向があったと思うが、前にも後ろにも人がいない、という瞬間がたくさんある。異世界のような神秘的な雰囲気。


筆者はまったく信心深い方ではないのだが、宗教的なシンボルから発せられる「人の思い」のようなものに、洋の東西を問わず感激してしまう。

これなら山頂まで行っちゃおう! と思ったが、コロナによる隠遁生活でダレきった呼吸器が悲鳴をあげ、3分の1ほどしか進めずに引き返した。


・その他の寺院も

早くから観光公害に着目し、完全予約制を取り入れている「苔寺」こと西芳寺。11月上旬には前日でもインターネット予約が取れる状況。


当日でも「空席」が目立つ京都定期観光バス。


紅葉の見頃を迎えつつある西明寺や


神護寺も、さすがに無人ということはないが、ゆったりした雰囲気。


・いまこそ京都

とはいえ11月から12月は紅葉シーズンで、そもそも京都は繁忙期である。秋が深まるにつれ、コロナや緊急事態宣言とは関係なく人出が増えることが予想される。また来年にはGo To トラベル再開の情報もある。

混雑を避けるには、休日よりも平日、午後よりも午前、車よりも電車や地下鉄、などの原則を守った方がいいのはいうまでもない。

時短営業の余波もあり、飲食店の活気はやはり乏しいところがあった。しかし京都観光の醍醐味である寺社仏閣に関していえば、混雑時の何倍にも満足度の高い京都を満喫できる。いまこそ「少人数で」「静かに」「自分のペースで」旅ができる京都がある。


執筆:冨樫さや
Photo:RocketNews24.