魚って、どうしてこんなに個性豊かなんだろう? 筆者が初めて『ギマ』に出会った時、たった1匹の魚が持つ情報量の多さに 思わず関心してしまった。
見た目こそはハギにそっくりでかわいらしいのだが、擬音で表すとすれば、ネトネト、チクチク、ザラザラ、ギトギトって感じ。コレが自然発生しちゃうんだから進化ってヤバいよな。
肝心のお味はどんな感じだろう? ってことで、煮つけにして食べてみたぞ!
・ヌメヌメの魚に遭遇
筆者が『ギマ』と出会ったのは、いつも通っている魚屋さん。木箱の中に無造作に入れられ、1匹120円という安価で売られていた。
手のひらサイズぐらいなので全長15cmほどだろうか。ハギみたいな見た目だ。
魚屋さんによると「煮つけにすると肝が美味しい」ということ。さっそく3匹オーダーしたところ……ヌメりが半端ねぇ!!!!
トロトロってレベルじゃなく、スライムをまとってるんじゃないかってぐらいにヌチョヌチョとした粘液に身体全体が覆われていた。
持ち上げてもらうと、この通り。
これまでゴッコやアナゴなど ざまざまな粘膜を持つ魚を購入してきたが、ギマは過去最上級の粘り気だ。小さな体の一体どこに これほどたくさんの粘液を隠し持っているのだろうか?
ちなみに、一部界隈でギマは「陸上に立てて置ける魚」として知られている。
その理由は、腹びれが変化してできた2本の鋭いトゲ。
トゲと尾の3点で接地させることで、まるで置物のように平らな場所に置くことができるのだ。
腹びれ以外にも、背びれに1本大きなトゲが生えている。幸い毒はないので、ケガしないようにってことだけ注意しよう。
(余談だが、筆者が購入した個体のトゲにはアジが突き刺さって死んでいた……)
・ギマを食べてみた
普段であれば 魚は丸ごと買って自宅で捌くのだが、ギマに関しては魚屋さんの「皮がザラザラしてるから指紋がなくなるよ」「ビニール袋に穴開くよ」というコメントに恐れをなして、店内で処理をしてもらった。
あんなドロドロな粘液が車の中で漏れ出たら、大変な異臭騒ぎになってしまう。
──ということで、購入して持ち帰ったギマがこちら。特徴的なのが、小さな体の3分の1ほどあろうかという大きな肝だ。
身の方はといえば、外見と同様にハギに似ているかも。
ぶつ切りにして醤油や砂糖、酒と一緒に煮つけにしてみた。
ヤバかったのが脂の量だ。見てほしい、この透明な1cm近くある層を!
繰り返すが、手のひらサイズの小さな魚を3匹 醤油などと一緒に煮込んだだけ。つまり、すべて純粋なる魚脂である。おそるべし、ギマ。
まずは肝から食べてみる。
これは……魚界のフォアグラですね。
噛んだ瞬間にヌワ~~ッと口の中に脂が広がった。すでに大量の脂が煮汁に染み出してるというのに、肝の中にまだ残っていたのか!
甘くてクリーミーでめちゃくちゃ美味しい。魚臭さのような不快感は一切ない。
続いて身を食べてみる。
ムッチリ、サッパリとした印象だ。肝のジューシーさとのギャップが激しく、思わず煮汁の脂をまとわせて口に入れてみると……うん、めっちゃ美味いな!
総合して、見た目だけでなく味もハギにそっくり。食用としてあまり流通していないのが不思議なぐらいのいい魚だった。
ただし脂の量に胃腸が悲鳴をあげ、胃もたれ&胸やけで胃腸薬が手放せなかっただけでなく、翌日まで腹を下すことになってしまった。筆者のようにコッテリ系が無理なお年頃の方は、特に注意すべし!
執筆:高木はるか
Photo:RocketNews24.
▼ギマの歯。人間みたいで気持ち悪い。