2023年4月1日から自転車利用者のヘルメット着用が努力義務化されたけど、みんなヘルメットしてる? 私(中澤)は普段自転車に乗らないのだが、ふと出くわす自転シャー達は誰もしてない。つけてるのはウーバーばかりなり。

確かに「努力義務は無視しても大丈夫」というような話だけはSNSで見た気がする。でも、本当に努力義務って守らなくても何も問題がないのか? 気になったので弁護士に聞いてみた。

・素朴な疑問

改正道路交通法が施行される直前、「努力義務は守らなくても罰則がない」という話がSNSで流れてきた。だから、自転車に乗らない私でもその話は知ってるんだけど、逆に言うとそのことしか知らない

自分にかかわりそうな最小の範囲だけの知識を得て「ならいいか」と考えるのをやめたのである。でも、よく考えたら努力義務って何なのよ? 本当にスルーして平気なものなの?

例えるなら、数学のテストで答えだけカンニングしたようなものなので何も問題ないのかが全くうやむや。一応、法律だしな。そこで弁護士のFさんに確認してみたところ……

Fさん「まず、努力義務とはいえ、安全性の観点からヘルメット着用が有用であることは明らかですので着用すべきであることは言うまでもありません。

ただ、改正後道路交通法におけるヘルメット着用に関する条文は『ヘルメットの着用に努めなければならない。』であり『着用しなければならない』ではありません。そのため、ヘルメットを着用することを含め、どういった対応を行うかについては、最終的には個々人の裁量に委ねられているということになります。

また、着用せずに運転したことに対する罰則は規定されておりませんので、ヘルメットを着用しなかった、あるいは着用のための努力を怠ったからといって何かしらの行政罰や刑事罰を受けることもありません」


──ということは、やっぱり守らなくても何も問題がないということですか?


・問題になるケース

Fさん「今回の法改正で影響が出るとすれば、ヘルメット無着用の事故における損害賠償の問題ですね。

事故で自転車の運転者が死傷した場合、損害賠償の問題が生じます。ヘルメットを着用していれば怪我しない、あるいは軽い怪我で済むこともあるわけですから、ケースによっては自転車側の損害額が低く認定される方向に作用する可能性はあります。

もちろん、道交法改正前においても、裁判所がヘルメット無着用を理由として過失割合や損害額を考慮するケースはありました。ただ、今回の法改正により、事故の相手方からヘルメット無着用を理由とする過失相殺がなされるケースは多くなると考えられ、実際にも、ヘルメット無着用が過失割合や損害額の判断に影響を及ぼすケースは増えてくるのではないかと思います」


──なるほど、事故った場合はノーヘルであることも絡んでくるかもしれないと。


Fさん「同じく業務のために従業員に自転車を使用させているような雇用主(会社や個人事業主など)においても注意が必要です。雇用主は従業員に対して安全配慮義務を負いますが、努力義務であったとしても、この安全配慮義務を根拠付ける要素となる可能性があるためです。

例えば、従業員がヘルメットを着用せずに業務において自転車を運転していることを知りながら、全く注意せずに放置していたとします。その結果、自転車事故が発生し、従業員が怪我をしてしまった場合、雇用主は従業員に対する損害賠償義務を負う結果となることも考えられます。

今後の裁判例などを見ていく必要がありますが、少なくとも、業務において自転車を使用する雇用主においては、従業員に対してヘルメット着用を周知しておくことが好ましいかと思います」


──とのこと。



国語辞典によると、事故の言葉の意味は「ふだんとは違った、悪い出来事」。事故って本人の注意だけでは防げない部分もあるから質が悪い。

今朝、自転車同士の衝突でノーヘルの男性が死亡したという事故がニュースで流れていたが、影響を及ぼすのは安全面の話だけではない様子。というわけで、罰則はないけど、問題がないわけではなかった。

参考リンク:テレ朝news
執筆:中澤星児
Photo:Rocketnews24.
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