肉料理は様々あれど、ハチャメチャに “王様” 感があるのはやはりステーキだ。熱々の鉄板の上でジュージューと唸りをあげる様は、まさに王(キング)。他の肉料理では得られない圧倒的な満足感を胃袋のみならず、体全体で味わうことができる。

そんなステーキを割と気軽に、かつガッツリと食べられる「いきなり! ステーキ」において現在、『王様(キング)のステーキ』なる商品が販売されていることをあなたはご存じだろうか? 王様のステーキってお前……めちゃめちゃキングやないか。これは食べに行くしかあるまい。

・ステーキ王

「いきなり! ステーキ」が、2022年11月10日から12月12日までの33日間限定で販売している『王様のステーキ』。その正体は、牧草牛特有の臭いが少ないというオーストラリア産「ショートグレイン」を使用したサーロインステーキだ。

ただでさえガチキングなステーキが、自ら “王様” と謳(うた)うなんてちょっとタダ事ではない。その理由を探るべく、私(あひるねこ)は『王様のステーキ』の300グラムをミディアムレアで注文。王に集中するためライスは抜きにした。

・王との謁見

しばし待って運ばれてきたステーキ王は、これぞステーキ! というべき完全無欠なルックスだ。肉の厚みも申し分なし。五感がかつてないほど研ぎ澄まされ、そのすべてが目の前の肉汁したたるステーキに集中していくのを感じる。

ただ、実際に食べてみるとこの『王様のステーキ』、思ったよりもだいぶサッパリしているのだ。赤身は柔らかく、それでいて食べごたえは存分にあるものの、サーロインと聞いて想像するようなジューシーさは希薄。非常にあっさりした味わいである。

いつもなら卓上のステーキソースをたっぷりかけるところだが、むしろこの肉は塩だけで食べた方がウマいように思う。それかワサビ。

脂身もしっかりある割には嫌なしつこさがなく、これなら300どころか600グラムくらい余裕で食べられそうである。王を前に、無意識のうちに士気が向上しているのかもしれない。


だがそれだけに……皆さんも気にならないだろうか? このステーキのお値段。『王様のステーキ』っていうくらいだから、きっと料金の方もキングサイズなんでございましょ? それでは発表しよう。『王様のステーキ』の値段は……


定量カット200グラムで税込1800円! オーダーカット価格は1グラム当たり9円である!

つまり今回の場合、オーダーしたのは300グラムなので税込2700円ということになるが、実際には319グラムで税込2871円だった。さ、さすがステーキ王……! こんなお高ぇサーロインステーキが他にあるワケ……


と思ったら普通にあった。

・上がいた

20日間熟成させた『国産牛サーロインステーキ』の方がぶっちぎりで高かった。こっちは王なのに。でもまあ相手は国産牛ですからね。そういうこともありますよね! と思ったらなんと……


レギュラーのサーロインの方が高かった。

な、何だとォォォォオオオオ! 1グラム当たり9.35円ンンンンンンンンンン!! マジかよ……『王様のステーキ』のはずなのに、店のどのサーロインステーキよりも安いじゃねーか。どこが王やねん。

しかし、逆に考えてほしい。こんな謙虚な王が他にいるだろうか? 王であるにもかかわらず、自分を通年販売されているレギュラーメニューの下に置くってアンタ、普通はできませんよ。そう、これです。これなんですよ! 王の器っていうのは!!

王の王とは思えない謙虚な姿勢にむせび泣くしかない私。ただ……。むせび泣いておいて何だが、『王様のステーキ』よりも普通に『ワイルドステーキ』を頼んだ方が満足度も高いし安い。これが私の包み隠さぬ感想だ。

・王を選ぶ意味

たしかに『王様のステーキ』はウマいが、『ワイルドステーキ』なら同じグラム数が1000円安く食べられるワケで(300グラム税込1804円)、加えて他の記者も指摘するように、以前と比べて味がよくなっている。

それを考慮すると、『王様のステーキ』にそこまで注文する価値があるのかは疑問が残るところだ。だったら『ワイルドステーキ』で十分だよと、シンプルに思ってしまった。

個人的には前回、数年ぶりに食べた『ワイルドステーキ』の方が、トータルの満足感はだいぶ上だったかな。王とは思えぬ謙虚な姿勢を見せた「いきなり! ステーキ」の『王様のステーキ』だが、どうやら値段以外の部分も謙虚になりすぎてしまったようである。

参考リンク:いきなり! ステーキ
執筆:あひるねこ
Photo:RocketNews24.