“バンライフ” と言えば聞こえはいいが、実際に自分が仕事をしながら車中泊で長旅をしていると、「公共施設の無料の水やトイレを当てにしてルーズな生活をしている住所不定者」という悪いイメージがある気がする。

日本において「正式に車中泊してよい場所」というのは意外に少ない。「道の駅」での長時間駐車は迷惑になる可能性があるし、コインパーキングは管理上の理由から車中泊NGのケースがほとんど。公園駐車場などは職務質問まっしぐらだ。

そんな状況を打開すべく整備された「RVパーク」という車中泊専用施設があるのだが、東京には世にも珍しい “遊園地に泊まれるRVパーク” がある!


・「RVパーク東京 よみうりランド」

それは東京都稲城市に広大な敷地を有する「よみうりランド」だ。アットホームな雰囲気が魅力の遊園地として当サイトでもしばしば取り上げている。

場所は遊園地の裏手、広~~~い砂利の敷地だ。電車で来る人にはもしかしたら見慣れないエリアかもしれない。キャンプ場ではないので屋外調理や焚き火はできないが、車外にイスやテーブルを出してくつろぐことが可能。

目の前には「よみうりランド」の看板コースター「バンデット」のコース! ゴーッという地響きのような轟音と、乗客の黄色い歓声がすぐ上空で聞こえる。

まぁ、筆者は絶叫マシン大嫌いなので、乗客の悲鳴に胸躍るどころか緊張で胃が痛くなってくるのだが、ちょっと見ないような非日常的な風景ではある。

トイレは園内のものが24時間利用可能。遊園地だけあって明るく清潔そのもの。


さらに電源が使用できるほか、水道やゴミ捨て場の用意がある。実はこれかなり大事! 車中泊をしていると生活ゴミがいろいろと出てくる。公共のゴミ箱やコンビニでよく「家庭ゴミの持ち込みはご遠慮ください」の貼り紙を見かけると思うが、生活ゴミは本当に捨て場所に困るのだ。

利用料金は1泊1台(1名)5000円。1名増えるごとに1泊1000円の追加料金となる。

この価格には、一瞬ひるむかもしれない。実際に都市部以外でのRVパーク利用料は2000円から2500円くらいなので、肌感覚では相場よりもかなり高い。

これには理由があって「よみうりランド」と、隣接する「HANA・BIYORI」の入園料が含まれているのだ(アトラクション料金は別途)。

通常、おとな1名の「よみうりランド」入園料1800円(オンライン価格1600円)、「HANA・BIYORI」入園料1200円(オンライン価格1100円)。

しかもRVパークのチェックインからチェックアウトまで2日間入場できたので、実質6000円近い入園料がついてきている計算になる。もともと「よみうりランド」に入園する予定だった人には、かなり美味しい価格だ。

折しもウィンターシーズンは、園全体がイルミネーションで飾られる「ジュエルミネーション」を開催中。日が暮れてから閉園までが本領発揮だと言える。というわけで、さっそく入園してみよう!


・冬の夜を彩る「ジュエルミネーション」

右を見ても左を見ても、360°光の洪水!


なんだこれぇぇぇぇぇ


すんごいキレイ! 実質無料で見ていると思うと感激もひとしおだ。


普段は子どもたちで賑わっている、ものづくり体感施設「グッジョバ!!」もこのとおり。ファッションビルみたいになっている。

規模や知名度という点では、有名テーマパークと比較すると分が悪いかもしれない。けれど、混雑がないからのんびりと散歩気分で鑑賞できるし、なによりスタッフの振る舞いが素晴らしい。

あっという間に日が暮れる晩秋の夜でも、客が1組しか乗っていないアトラクションでも、それを感じさせないような底抜けに明るいオペレーション。遊園地で働いているという誇りが感じられる。

知らなかった……ロケットニュースで何度も記事になっているのも納得だ。いいところだな! 最高じゃないか、「よみうりランド」!


……と思った。ただ一点を除いては。



よく見ると、ひとりで来ている人、いないな……。


そう、筆者はこのイルミネーションの中でロンリー。ひとり旅の途中なのだ。どんなにキレイでも「すごいね!」「キレイだね!」と言い合う相手がいない。この感動をぶつけるのは、iPhoneのカメラだけだ。

そもそも遊園地やテーマパークは「ひとりで利用するのに難易度が高い場所」ランキングの上位常連なうえに、冬の夜のイルミネーションとはロマンチックな空気を演出するもの。多感な高校生の頃からディズニーリゾートにひとりインパークしていた筆者には屁でもないが、ノーダメージなわけではない。

…………さて、なぜか夜風が冷たくなってきたので車に戻るか。

なお、RVパークは街灯ひとつない広大な敷地なので、自分の車が見えないほど暗い。写真はiPhoneの底力で肉眼よりもかなり明るく撮れているが、実際には目の前を横切った黒い影(たぶん野良猫?)にびっくりするほどの闇だ。

車窓から見るイルミネーション……。私は人がいなくなった深夜の無人の遊園地ってちょっと怖いと思うので、さっさと寝ることにします。


・かなりおすすめ

なお、結果的にはイルミネーションが反射した東京の空はいつまでも薄明かりが続き、また風に乗って閉園後の音楽が聞こえてくるなど温かい気配が感じられ、筆者は朝まで爆睡であった。ホントいいところだな「よみうりランド」。

「ジュエルミネーション」を開催している2023年4月9日までは夜こそ本番。もとから「よみうりランド」や「HANA・BIYORI」に行く予定の人や、東京に車で来た人などにはかなりおすすめ。日帰り入浴施設「丘の湯」が徒歩圏内なので、お風呂に困ることもない。

ただし、可能なら親しい人と誘い合って来ることをおすすめする。遊園地もイルミネーションもお風呂も車中泊も、気心の知れた人と来たらきっと何倍も楽しいぞ。

※冬期間はRVパークの営業を縮小する場合があるため、事前に公式サイトを確認してください。


参考リンク:RVパーク東京 よみうりランド
執筆:冨樫さや
Photo:RocketNews24.