「お〜い、なんだこれ〜っ!!!!!!」
地味にゴミ掃除をしていた相棒Yoshioが、突如として雄叫(おたけ)んだ。相当に興奮している様子。どうした、何があったんだ……と駆け寄ってみると、なにやら家の床下を覗き込んでいる。そして彼はこう言った。
「なんか……穴が空いている!」と。
覗いてみると、確かに「穴」らしきものが見える。しかし、狭いうえに暗くて、全貌がよくわからない。ということで、床下の隙間に手を突っ込み、スマホでフラッシュ撮影して確認してみると──
え、なにこれ?
そこには、たしかに穴がある。それも人工的に掘ったらしき穴がある。壁面は直角になっており、人も余裕で入れる広さ。これは部屋? しかもよく見ると「フタ」らしきものまで確認できる。な、なんなんだ……!?
場所的には、この下あたりであるが……
気になりまくるので……
ブッ壊してみることにした!
\バキッ、バキッ、バキッ!/
そして……
床の下が剥き出しになった。ていうか、“床の下に、すぐ穴” 的な構造であり、まず私が思ったのは「家の床ってこんなにも簡単にできているの? 」ということ。断熱材とかもないの? さすがは100万円の家である。
ともあれ、穴……というか部屋の中に陽が差し込み、内部がよく見えるようになった。まあこれは部屋だな。さらに近づいてよく見てみると……
_人人人人_
> !? <
 ̄Y^Y^Y ̄
なにやら丸い、まるで石臼のようなコンクリート(?)の塊が。なんなんだこれは。なぜど真ん中に鎮座しているのか。もしや遺跡? それとも儀式に使う何らかのモノ? もうこれは徹底的に調査せねばなるまい。
私は部屋に潜り込み……
丸い物体を……
ひっくり返した!
_人人人人人人_
> すると! <
 ̄Y^Y^Y^Y^Y ̄
アニ「それ、基礎(きそ)だね〜」
解体現場でもよく仕事をするホービエン軍団のアニ(キ)さんが「家を作るうえでの基礎」であると瞬時に判断。なるほどたしかに……
他の部分にも似たようなコンクリがある。これが「落ちた」ようなかたちなのだな? それにしても、なぜ。というか、一体なんなんだこの小部屋は。
広さでいうと、大人2人は余裕で入れるくらいの空間であり、もしも追手が来た時に逃げ隠れる用途としては普通に使える雰囲気をしている。フタもあるし……。しかしながら、長時間この部屋の中にいるのはキツい。なぜって……
_人人人人人人_
> くさい! <
 ̄Y^Y^Y^Y^Y ̄
なんというか、獣臭(けものしゅう)がスゴい。また、それに混じってアンモニア臭もする。おそらくこの穴の中で、アライグマなり何らかの獣が小や大をしたのだろう。私は臭さに耐えられず、部屋から出た。
そうこうしているうちに、博識なIMAZUさんが運搬作業から帰ってきた。どんなことでも知ってるIMAZUさんなら、この穴の正体もきっとわかる。ねえねえIMAZUさん、この穴、何だと思いますか? すると……
IMAZU「肥溜め……かなァ? いや、ちがうな。肥溜めだったら、斜め方向に汲み上げるような構造になっているから肥溜めじゃないな。でも……クサッ! このツーンとした香り的には、肥溜めなんだよなぁ……」
けっこうな時間そこに潜り込んでいた私としては肥溜めと聞いて複雑な気持ちになったが、最終的なIMAZUアンサーとしては「わからんね〜」だった。あの天才IMAZUさんをしてでも解明できない謎の小部屋……。しばし私も考えた。
もしやこれは、肥溜めではなく「墓」なのでは? 「王家の墓」のような霊安室なのでは? なんだかエジプトはギザのピラミッドの内部を調査している心境にもなってきたが、これはある意味ミステリー。
一体なぜ、大人2人が入れるようなフタ付きの地下室がここにあるのか。そして、なぜそれを「簡単な床」で、さらに覆い隠す必要があったのか。もしかして、この中には便ではなく埋蔵金が埋まっていたとか──!?
しかし、それらすべての謎は、Yoshioが前オーナーに電話で確認したところ、いともアッサリと解明されたのであった。前オーナーいわく、こういうことらしい。
まず、この謎の地下室は、まさしく漢字の通り「室(むろ)」と呼ばれる場所だったそうな。前オーナー様が実際に生活していた大昔には、イモや野菜をこの室(むろ)に貯蔵していたとのことである。
フタがあるのも、その名残り。食べ物を入れた後にはフタをして保存……みたいな使い方。そもそも、この床を破壊した部屋そのものは、かつて土間(どま)だったそうで、室(むろ)へのアクセスも容易であったと。
しかし、いつしかこの家を貸しに出したところ、10年ほど前に部屋を借りた人が、この土間部分にフローリングを敷いてしまい(つまり部屋にした)、室の部分もそのまま埋もれてしまった──ということらしい。
てことは、この部屋の床部分、すべてをブチ壊したら土間が復活するのかしら? どちらかといえば、そのほうが良いなぁ……なんて思いつつ、我々は再び破壊した床のゴミ掃除などを再開したのであった。
一体いつ、この片付けが終わるのかなと思いながら。