
グルメ記事を書いていると、ごくたまに、ある種の無力感に襲われることがある。どう考えても美味しいとわかりきっているものを前にした時、「余計な言葉を並べる必要があるのか」と思ってしまう。言葉を並べるのが仕事なのだが、なかなか感情は制御しがたい。
例えば今回取り上げる、有名ラーメンチェーン「天下一品」の新商品、「こってり唐揚げ」についてもそうだ。この商品は従来の唐揚げメニューがリニューアルされたもので、なんと同店の代名詞である「こってりスープ」が配合されているらしい。
ネタバレすると、美味しかった。グルメ記事で早々にネタバレをかます人間は稀かもしれないが、少し考えればわかる通り、絶品だった。
とはいえ、これだけで記事を終えてしまっては紛うことなき暴挙なので、己を律してもう少し詳しく書いていきたい。
この「こってり唐揚げ」は、2022年10月11日より一部店舗において先行発売されており、全国発売は11月4日からとなっている。詳細は公式HPを確認してほしい。価格は店舗によって異なるが、5個入りの単品が450円とのこと。
今回はUber Eatsを利用して東京・中野店にアクセスし、ラーメンと合わせて注文した。ちなみに筆者は唐揚げという料理も「天下一品」という店も大変好んでいるが、リニューアル前の同店のそれはなかなか食べる好機を得られずにいた。
損をし続けているような、負債を増やし続けているような心情をずっと抱えていた。同店の唐揚げに親しんでいる人に妙なコンプレックスもあった。だがリニューアルを経た今、全ての人間は平等に同じスタートラインに立っている。もはや令和の徳政令である。感謝しかない。
さておき、そんな晴れやかな気分の筆者のもとに、「こってり唐揚げ」の実物が届いた。特徴的なのは、「天下一品」ではお馴染みのにんにく薬味と、それに加えてマヨネーズが付け添えられている点だろう。
公式HPを覗いてみると、計5通りもの「お勧めの食べ方」が記載されている。折角なので、そのお勧めに従うことにした。
まずは最初の食べ方として、何もつけずにそのまま口に入れる。パリッとした食感のあとに、しっかりついた下味と、まったりとしたコクが口の中に広がった。
想像よりは穏やかなテイストで、ジューシーながら食べやすい。こってりスープの存在を強烈に感じ取れるわけではないものの、逆にその塩梅が功を奏しており、唐揚げのフォーマットにささやかなオリジナリティがくるんであるような絶妙な仕上がりになっている。
ともかくこの時点で十二分に美味しいし、それは十二分に予測できていたことだ。が、「こってり唐揚げ」の真価はここからである。
次に、にんにく薬味をつけて食べる。パンチのあるフレーバーが唐揚げの香味に上乗せされ、濃厚さが増す。親和性が高いなどというレベルではない。シンデレラの足にガラスの靴がはまったのを知った王子の気持ちである。
何もつけない方がしつこくなくて良いという人もいるかもしれないが、少なくとも筆者の味覚は唐突にファンタジックな比喩を紡ぎ出す程度には浮かれている。そもそも「天下一品」の味を好む者であれば、このアレンジも高確率で気に入ることだろう。
続いてはマヨネーズである。言わずと知れた唐揚げの名パートナーだが、「こってり唐揚げ」との相性も抜群だ。とろみのあるマヨネーズの風味が、にんにく薬味とは異なるジャンクさで彩りをもたらしてくれる。
このあたりから、「こってり唐揚げ」がやや落ち着いた味わいであるのは、アレンジによる伸びしろを見越してのことなのではという推測が生まれつつあった。そして4番目のアレンジを試してもなお、その推測は潰えるどころか、むしろ筆者の中で強固になった。
付け添えの調味料を試し終えたとて、忘れてはならないのが冒頭でも触れた「天下一品」の代名詞、こってりスープだ。唐揚げを落とし込むと、慈愛すら感じさせる大らかさでスープがそれを受け入れる。
ラーメンのスープに慈愛を感じ始めたらいよいよ末期なのかもしれないが、ここが死に場所でもかまわない。言わば「こってりフォンデュ」とも呼ぶべきこのアレンジ法は、それくらい幸福な境地にこちらをいざなった。ざらついた旨味が衣に絡んでたまらない。
しかし、まだ終わりではない。公式HPに記載されている最後のアレンジ法は、「お好みの組み合わせ」とのことである。この文言を、性根のひねくれたウェブライターというフィルターに通すと、「薬味とマヨネーズとスープを全てつけろ」という裏の意味が出力される。
そういうわけで、出力されたそれに従うことにした。結果として、欲望にまみれた足し算の極致であるにもかかわらず、すさまじく美味だった。薬味のパワフルさ、マヨネーズの風味、粘っこい鶏ガラスープが、溶け合うように見事に調和した。これが至高とすら思える。
一方で、ここまで書いてきた通り、それぞれのアレンジにそれぞれの良さがあることも確かだ。要するに「こってり唐揚げ」は、何をしても、何もせずとも、何にせよ美味しいということである。
それにしても、こうして記事に起こしてみると、何だかんだ己の体験を整理し直せるものである。そこへもって、皆さんにも「こってり唐揚げ」の魅力を伝えられていれば、何よりも喜ばしい。
今さらネタバレすると、言葉を並べることはやはり意義深い。またいつか、「天下一品」のわかりやすい新メニューを前に、うだうだ書きたい所存である。
西本大紀










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