先日の「かっぱ寿司」を運営する「カッパ・クリエイト」社長による不正競争防止法違反の疑い。そして逮捕と辞任の報道。

これを受け、ネット民は “各回転寿司屋のやらかし歴一覧” のようなもので盛り上がっている。スシロー、元気寿司、くら寿司、運営会社のゼンショーが別ブランドでやらかした はま寿司……もう全滅やないか!

大手のイメージが下がる中、逆に “前科無しな寿司チェーン” 的な感じ(本当に一切無いのかは知らないが)で評価の上がる、やや規模と知名度が控えめな寿司チェーンたち。そこで気になる名前を見かけた。埼玉が本拠地だという「がってん寿司」だ。

・マジかよ

私は埼玉県民なのだが……ふむ、見たことも聞いたこともねぇな。ググってみると、熊谷に本部がある株式会社アールディーシーが運営しており、埼玉を中心に関東全域に展開しているのだそう。

埼玉限定というわけではないが、埼玉が本拠地なのは間違いなさそうだ。10年ほど埼玉県民をやっているが、終ぞ知る機会がなかった。しかし、単に私が知らなかっただけで「ぎょうざの満州」並みに埼玉的には常識な可能性は否定できない。

当サイトで誰か行ってたりしないだろうか? と思い検索してみたところ、来店した記事は0本だが、2014年にオリコンの顧客満足度ランキングで1位を取っていた。

だいぶ昔の話といえど底力はあるのだろう。いよいよ気になったので近所に店舗が無いかチェックしてみたところ……意外な事実が発覚した。


毎月2回はフェアのレビューをする際に利用している はま寿司 から徒歩7分程度の距離に1件! さらに、何かとよく利用する ららぽーと にも、ブランド違いの「承知の助 by がってん寿司」なる店舗が!!

マジかよ……完全にどこかで視界に入っていたはずだ。が、1度も意識していなかったもよう。ごめんよ「がってん寿司」、何か知らんけど10年近くスルーしてたわ。はま寿司 よりGoogleでの評価が高いのが地味に草

まあ、こういうのってそれなりにあるよな。近所にあっても一切意識を向けること無くスルーしまくってる中~小規模チェーン店


・初来店

ということで噂の「がってん寿司」に初来店!


スタイルは回転寿司……なのは間違いないが、回っているのはメニューのみ。注文した寿司はレール越しの寿司職人によって握られ、ダイレクトに手渡された。半回転・半回らない寿司といった感じだ。


メニューを見ると、どうやら毎月のように何かしらのフェアを展開するタイプの運営方針ではないもよう。季節ごとにメニューを入れ替える感じなのだろうか? 10月の頭に訪れたところ、メニューには「秋を味わう」と書かれていたので。


トップを飾るのは「かつおたたき(264円)」。そして「金目鯛湯霜造り(495円)」など。「くじらごま油にんにく岩塩(330円)」は面白い。回転寿司チェーンでクジラとかレアじゃん。

値段的には大手チェーンより高いが、問題はクオリティだろう。できれば全部試してジャッジしたいが、予算的に難しいので「秋の5貫握り(951円)」をオーダーした。

「かつおたたき」「金目鯛湯霜造り」「キングサーモン」「生しらす軍艦」「紅鮭いくら軍艦」が1つずつ入っている。イイ感じに網羅していると思う。


・デフォルトが大切り

まずは「かつおたたき」から。


なるほどねって感じ。これは他のネタも共通なのだが、ここの1貫はデフォルトで スシローや はま寿司 の大切り枠のサイズがある。

値段は大手より高いが、でもこのサイズならOKかなってなるのだ。そしてちゃんとウマい。うめぇぇええええええ!!! って感じではなく、ほどよく全てに納得がいくクオリティ

スペシャルなフェアのメニューというわけでもなく、恐らく秋の間はずっと売られるのであろう季節の恒常品としてこれなら強いと思う。

が、例えばこの「かつおたたき」は単品だと1皿2貫で264円なので、1皿1貫換算なら132円。ぶっちゃけ言うほど高くはない。

続いては「キングサーモン」。他店と比較して飛びぬけた何かを感じることは無いが、相変わらず大切りサイズがデフォで爽やかな味わい。


ちょっと良いなと思ったのが「金目鯛湯霜造り」。


湯霜造りは、身だけでなく、皮と皮下の脂のウマさも同時に味わえるスタイル。焼霜というのもあるが、湯霜なので熱湯で加熱したのだろう。

このスタイルをとる場合、味はともかく(皮は基本的にウマい)として、皮のハードな食感と全体のバランスとの折り合いつけ方というのも重要なテーマだと思う。

幅を広く長さは短くしたり、その逆なり、皮をメインにするなり。けっこうお店の特徴が出る点ではなかろうか。少なくとも私は、皮系が出てきたときはその分量に注目し、他店との比較のポイントとする。

「がってん寿司」の湯霜造りは、ビジュアルの通り皮は添える程度。しかし、このくらいで十分に身と同じくらいの存在感は発揮している。いいんでないの? 好ましく感じた。


・マグロは

続いてはド定番のネタもチェックだ。マグロである。やはり値段は大手より高めと言わざるを得ない。1皿2貫で300円からだ。ここも会社の規模がモノを言うと思うのだが「がってん寿司」はどう勝負しているのだろう。


とりあえず「まぐろ三昧(550円)」をオーダー。「ちゅうとろ」「とろびんちょう」「まぐろ」が1貫ずつ乗っている。


相変わらずいいサイズだ。具体的に単三電池と並べるとこんな感じ。


正直にいこう。赤身の「まぐろ」と、真ん中の「とろびんちょう」は普通。ピンクなのが「ちゅうとろ」か。これはちょっと良かった。

どれもサイズがデカいというのが強みだろう。でも、もし大手で100円とかのフェアが実施中だったら、そっちで食った方がいい。平時なら、どっちで食ってもコスパは一緒だろう


・光り物

定番と言えば光り物も外せない。どれもクセがデフォルトであるので、人によってはNGだったりするが、逆に寿司は光り物しか食わんという人もいるしな。

ということでメニューを見ると、すげぇ気になるやつが。「とろさばの棒寿司(264円)」。しかし残念ながら完売とのこと。まだ昼過ぎだが、人気なのだろうか。


無いものは仕方が無いので「〆とろさば(198円)」をオーダー。


はっきり言って、これは大勝利だ。まず1皿2貫でコスパが良い。サイズは相変わらず大手の大切りと同程度。クオリティも高い!

トロットロのプリンプリンだ。今まで食った回転寿司屋の〆鯖の中で1番うめぇ。食った瞬間に笑っちまったぜ! 棒寿司の売り切れといい「〆とろさば」のクオリティといい、鯖が得意なのかもしれない。


・独自性

とまあこんな感じで、デカさと鯖のクオリティは目立つが、その他のコモンな寿司ネタについては大手と大差ないというのが正直なところ。しかし、飛びぬけて「がってん寿司」に強みを感じたポイントが1つある。

それは圧倒的な独自性を感じるいくつかのネタだ。まずはこの「くじらごま油にんにく岩塩(330円)」。


クジラをニンニク、岩塩、そしてごま油で食ったのは初めてだが、これは良いぞ! 無限に食える。臭みはゼロ。馬肉の刺身を食ってる感覚に近い。優れたクリエイティビティを感じさせる。


もう1つは「漬けまぐろ(385円)」だ。


デカいのはもういいとして、漬け具合が実に絶妙! 表面にのみ染みているタレは、何もつけずに食べて丁度いいというパーフェクトな濃度

赤い部分は全くタレが侵攻しておらず、マグロのうま味が残っている。これは理想的な漬けマグロの握りだ。常にこのクオリティならマストな1皿だと思う。

世の中には中心までタレが沁みてタレの味しかしなかったり、タレの味が薄すぎて醤油がマストみたいな、どちらにしろクソみたいなクオリティの漬けマグロを出す店も多いからな。良い漬けマグロを出せる店は押さえておきたい。


最後に、魚ですらないがこれも推しておきたい。「柿大根(198円)」。

ジャキジャキの大根の甘酢漬けに、甘い柿。へぇぇえええええって感じ。さっぱり甘くて美味い。最後のシメにイイかも。

という感じで、それなりに基本的なネタと、ちょっと気になるネタをそれぞれそれなりに試してみた感じだが、いかがだっただろう。

低価格競争には弱いと思うが、その分確かな創造力と1貫ずつの品質とサイズで勝負している感。食べる側も上手く見極めると満足度を最大化することができるタイプではないかと思った。

つまり、いくつかの定番ネタはコスパで勝るその辺の大手チェーンで食べつつ、いくつかの大手にはないクオリティや創造性を感じさせるネタは「がってん寿司」で……みたいな。

そんな感じで上手く日常の寿司ローテに組み込めば、確かに満足度は非常に高いものになると思う。クジラと漬けマグロと鯖の気分の時は、また再訪しようかなって。棒寿司も試したいし。

参考リンク:がってん寿司
執筆:江川資具
Photo:RocketNews24.

いくら軍艦。ウマいけど、単品として(2貫495円)価格に対するクオリティ的には、ちょっとお高いかなって。やはりこの辺の単価が高いモノは、会社の規模がコストに与える影響がデカいのではないかと。


生しらすどこで食っても違いは出ないと思う。そもそも凄まじい速度で劣化が進むネタなので、味に差が出る以前に、品質の問題で食える状態じゃなくなるじゃん。ただ、回転寿司屋が季節の恒常品で生しらすを入れているのは珍しいと思う。


▼ビジュアル的にウマそうだから頼んでみた「たっぷりきのこ呉汁(264円)」。減塩が極まってる感じ。高血圧に悩む人が病院で食ってそうな味だった。

個人的にはバチバチに高濃度な味付けが好きなタイプなので、ちょっと微妙だった。キノコと共に、入ってる大豆や大根の風味も1軍入りするくらい薄めの味付け。そういうコンセプトなのかも。マズいのではなく、Not For Meだったのかなって。