天岩戸(あまのいわと)は日本で最も有名な洞窟と言っても過言ではない。なんたって古事記・日本書紀で、天照大御神が隠れた場所である。弟の須佐之男命のヤンチャにブチギレて洞窟に隠れた天照大御神を、神々が楽しげな雰囲気で誘い出したという「天岩戸神話」はあまりに有名だ。
しかし、実際に天岩戸を見てみたところ、私(中澤)は思わずにはいられなかった。「ここに引きこもるのはキレすぎだろ」と。
・バリバリの観光スポット感
天皇の先祖が降り立った「天孫降臨」の地と言われる宮崎県の高千穂。パッと見、何の変哲もない田舎なのだが、広がる田畑と山の中を走っていると、里山の景色に不自然なほど目につくものがある。立て看板が……
標識が……
青看板が……
全てが猛烈にアピールしているのだ。「天岩戸ありまっせー!!!」と。
そこで天岩戸神社に行ってみると、さっきまでと雰囲気がガラッと変わった。通りは商店街みたいになっているし、鳥居の前にガンガンバスが止まっている。完全に観光スポットですやん。
とは言え、さすが神話で名高いスポットだけあって、鳥居をくぐると神聖な雰囲気がある。高千穂は山に囲まれている上、その日は真夏日だったので、道中はさながら蒸し焼き状態だったのだが、鳥居をくぐった瞬間スッと涼しくなったのだ。これが神オーラ……?
・天岩戸を見る方法
天岩戸の洞窟は神社の拝殿の裏から見ることができる。で、その拝殿裏へは、拝殿横にある裏口から神職の案内で入ることができるようだ。
この案内への参加に受付や参加料はなく、決められた時間に集合場所に集合するだけでいい模様。案内の開始時間は9時からほぼ30分ごとに16時台まで15回。12時から13時だけは昼休み的に空いてる。
・ミニツアー開始
思ったよりも気楽な形っぽいので集合場所の休憩所で待っていたところ、神職の方がその場にいる人に声をかけて案内開始。天岩戸だけではなく、神社の大木などの説明もしてくれ、ちょっとしたツアーみたいになっている。
とは言え、天岩戸は、初めてしめ縄が使用された神話からの禁足地。入る前のお祓いで一気に厳かな雰囲気へと変わった。
・写真NGの拝殿裏へ
お祓いが終わると、いよいよ拝殿横の扉が開かれる。入っていくと、拝殿の建物に沿ってテラスのような遊歩道が設置されていた。その遊歩道を進むと、ちょうど拝殿の真裏に当たるくらいの場所が展望台のようになっていて、御賽銭箱が設置されている。
賽銭箱の先を見ると、はるか下に川が流れている。ここで神職の方の説明。対岸に天岩戸があるらしい。そこで対岸を見てみたところ衝撃を受けた。おいおい、よくあそこに引きこもったね。
対岸に洞窟があるというから、地面に接地した穴を想像して下を見たのだが、実際にしめ縄がかかっているのは切り立った崖の中腹で、洞窟と言うより裂け目みたいな感じ。たどり着くだけでもそれ相応のクライミング技術が必要なように見える。
そんな状態なので、腰を落ち着けられる場所があるかどうかすら分からない。百歩譲って奥にあったとしても、高層ビルの窓ふきみたいになりそうだ。ここに引きこもるのはさすがにキレすぎだろ。
・ロッククライマー神アマテラス
引きこもるというエピソードから、なんとなくインドア派のイメージのあるアマテラスだが、ひょっとしたらクライミングガチ勢のアウトドア派だったのかもしれない。まあ、オラオラ系のスサノオの姉ちゃんだしな。
色んなところで引用されるあの神話。大体、清純派でおしとやかなアマテラスが世を憂う感じで引きこもっているが、現地の雰囲気が物語る行間は少し違ったのであった。現場からは以上です。
執筆:中澤星児
Photo:Rocketnews24.
▼天岩戸神社
▼近所には、アマテラスが引きこもった際に八百万の神が集った「天安河原」もある
▼この川が天岩戸の前を通る川