毎日バカバカしい記事を発信している我がロケットニュース24編集部であるが、いくらアホばっかりの事務所とはいえ、毎日くだらない事件が起こるわけではない。スランプに陥ったり、マンネリになることだってある。

ロケットニュース24に異動してきてから約半年が過ぎ……私の身にもマンネリズムの波が襲ってきた。いつもの事務所、いつものメンバーと顔を合わせるだけでは、新しい発想なんて生まれやしない。

そんななか飛び込んできたのが、住める芸術作品『三鷹天命反転住宅』でテレワークができる……という情報である。この建物のテーマは「発想の転換」。ここで仕事すれば、新しいアイデアが生まれて、あっと驚くおもしろ企画が浮かぶのではないか?


・暮らせる芸術作品でテレワーク

東京・三鷹市にある『三鷹天命反転住宅 イン メモリー オブ ヘレン・ケラー』は、荒川修作とマドリン・ギンズというアーティストによって作られたカラフルな集合住宅。アート作品でありながら、実際にここで暮らしている人たちもいる。

以前は、部屋に入るには3泊4日で約7〜8万円の宿泊利用が基本だったのだが、コロナ禍を経てテレワークプランが誕生!

・利用時間は平日11時から17時まで
・最大4名まで利用可能
・利用料は1部屋1万1000円

となっている。

費用や日程を考えると10万円の宿泊プランはハードルが高いなあと思っていたので、テレワークプランはお手頃でうれしい! 今回は、中銀カプセルタワービルに住んでいたこともある、ロケット古参ライターの千絵ノムラさんと2人で利用することに……。

ノムラさんとは初顔合わせ、私はめちゃくちゃ人見知りなので緊張する。


・家とは思えぬカラフルさ

実際に天命反転住宅に着くと……めちゃくちゃカラフルでかわいい!

都心から離れたロードサイド沿いに突然、おもちゃの家みたいな建物が出てくる。いつもの古い雑居ビルの汚い事務所ではなく、こんなかわいい場所で働ける、それだけでテンションが上がる。自分が一気に都会のクリエイターみたいな気分になるから不思議だ。

敷地の中に入ると……エレベーターや廊下、階段の手すりに至るまで超カラフル。

マンションやアパートといえば、シンプルでシック、みたいなイメージとは真逆だ。たぶん、こんなにカラフルなのはここと楳図かずおの家くらいではなかろうか。私とノムラさんは廊下を歩いてる時点で100回くらい「カワイイ」と言った気がする。

テレワークの部屋に通されると……ポップで近未来チックで、それでいてレトロなかわいい空間が広がっていた!

まず靴を脱ごうとすると、床がポコポコと波打っていて、まっすぐじゃないことに気付かされる。

ざらついた床に一歩踏み出すと、土踏まずがほどよく刺激されて、まるで青竹踏みを踏んだときのような気持ちよさにビックリ。

こ、これが暮らせる芸術作品……! 


・ガイド

部屋を利用する前に、部屋の使い方と『三鷹天命反転住宅』の注目ポイントをガイドしてもらえる。アートとはいっても、高尚で難しい話は一切ないのでご安心を。

ここは暮らせる家なのですが、実は収納が少ないのです。一番大きいのがこの緑の引き出しなんですよ」

「天井を見ると小さな輪っかがたくさんあります。ここにフックをかけてバッグをかけたりできるんですよ」

「それぞれの部屋をどう使うかは自由なのですが、実際に住むとなったら荷物をどこに置くかなど、利用しながらぜひ考えてみてくださいね

と、体験して楽しむことを重視している感じ。しかし、何がどこに置いてあっても、もはや疑問すら抱かないロケットニュース編集部とはえらい違いである……。

ちなみに『三鷹天命反転住宅 イン メモリー オブ ヘレン・ケラー』という不思議な名前は「与えられた環境・条件をあたりまえと思わずにちょっと過ごしてみるだけで、今まで不可能と思われていたことが可能になるかもしれない(=天命反転)」という考えに由来するそうな。また、不可能を可能にした人物として、ヘレン・ケラーを創作のモデルにしたからだとか。


・部屋にある不思議なものたち

部屋は中央のダイニングの他に、小さな部屋が3つ、そしてバス&トイレのエリアという作り。それぞれ色合いや構造が異なっている。

ダイニングの中央にはハンモック、そして登り棒とハシゴがある。

ここを登ったりしてもいいそうな。30年ぶりに登り棒に登ろうとしたが……体が重すぎて無理!

黄色い小部屋はなんと床も含めて球体みたいになっている。ちなみにここで話すと、向いている方向によって声の反響が変わって、聞こえ方が全然違う。

そしてオレンジのカーテンがある部屋は、一見何の変哲もないように見えるけど……


障子を閉めるとここだけ和室みたいな空間になる!

そしてカーテンを閉めると、昼も夜も夕方みたいな雰囲気になる。ノスタルジーの部屋って感じだ。

ピンクの壁の部屋は、床が畳敷きになっていて、奥には床の間や枯山水を思わせるような砂利敷きのスペースがある。ここにお花とか置物を飾ったら雰囲気が出そう。(※こちらは3LDK typeのお部屋になります)


・テレワークなのに体を使う!

しばらく場所を変えつつ、作業をしてみて思ったのだが……

この部屋はただ暮らしているだけでめちゃくちゃ体を使う!

そこかしこに段差があったり、傾斜がついていたり、黄色い球体の部屋は踏ん張らないと先に進めなかったりと、足腰がすごく鍛えられる感じがするのだ。しかしこうして体を動かしながら、ただ過ごしているだけで楽しい。


・ついに生まれた! 新しい発想!

発見の連続なので「ここの部屋すごいですよ!」「これは何なんですかね?」などと会話が生まれた。

そして、ノムラさんと古い建築とか街歩きの会話がおおいに盛り上がり、雑談から新しいネタを思いついたのである!

まあ、思いついたのは「小さい頃、父親に置き去りにされた場所をグーグルマップで調べて行ってみる」というネタなんですけど……。もっとオシャレなネタを思いつきたかったけど、ロケットニュース脳になっているのかもしれない。

自分の中では単なる思い出話だったことが、発想を変えると記事のネタになる……。これこそ「天命反転」なのかもしれない。

リフレッシュ感とワクワク感がすさまじく、あっという間に6時間が経過。ガイドの方が「テレワーク利用したあと、宿泊で予約する人が多い」と言っていたのも納得。

ただかわいらしいだけではなく、そこにいるだけで楽しい気持ちになる不思議な空間なのだ。そして、体をたくさん使うので、子供の頃に遊んでいたジャングルジムや公園で暮らしているような感覚になる。

後半、「楽しい」「帰りたくない」「宿泊で来たい」と何度言ったか分からない。公園やテーマパークを後にする子供のような気分で部屋を後にした。


・テレワークもいいけど…

ちなみに、電源とWi-Fiは完備。キッチンのレンジとポットやお茶類は使用可能。

ただし、宿泊者用のシャワーや洗濯機、調理器具などはテレワークだと使えないので注意。

正直、体をたくさん使える部屋なので、じっと座ってテレワークをするだけではもったいない! 4人まで利用可能なので、グループでアイデア出しをしたり、気分転換をするのがよさそう。住んでいらっしゃる方もいるので大騒ぎはダメだけど。

私も今度はプライベートで、できれば宿泊で来たい……! なんとなく日常がつまんない、仕事がマンネリしてるって方はぜひwebサイトから予約を。テレワークだけでなく、ワークショップのプランもありますよ。

参考リンク:三鷹天命反転住宅
執筆:御花畑マリコ
Photo:RocketNews24.
© 2005 Estate of Madeline Gins. Reproduced with permission of the Estate of Madeline Gins.
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▼どの駅からも離れた場所にあるので、駅からはタクシーを利用。運転手さんに住所を伝え「国立天文台の近くのカラフルな家です」と特徴を伝えると「ああ、あの可愛い建物ですね!」とすぐにわかってもらえた

▼実はトイレにはドアがない! マキタの掃除機をオンにして、音を消すというアイデアで乗り切ってるらしい

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