今や、松屋のカレーと言えば「ごろごろ煮込みチキンカレー」。期間限定商品からレギュラー化し、レギュラー化以前からの人気もあいまって、余裕で頂点に君臨している。
戦乱の世は終わり、チキンによって天下は統一された。と思っていたが、松屋が一部の店舗で新型のカレーをテストしているらしい。
しかもビーフカレー。マジかよ。クオリティ次第ではビーフ復権もあり得るかもしれない。戦乱の世の予感……! さっそく食べてみることに。
・2種
今回テスト販売されているのは「ビーフカレー」と「松屋ビーフカレー」の2種。どちらも東京と神奈川の一部店舗のみで、それぞれ合計10軒ずつだ。
まずは「ビーフカレー」をゲットすべく、対象店舗の一つ、江戸川橋店へ。外からポスターが見える。あれだな。
松屋では新しいカレーが入ると、既存のカレーが消えることがある。今回入れ替わりで消えたのは「オリジナルカレー」関連なもよう。
券売機でメニューを見ると、ふおおおおおお、全部ビーフになっとる。しかもバリエーション豊富じゃん! ハンバーグオムレツ食いてぇ!!
しかし今回は新型カレーのクオリティを試すのが目的。一番シンプルなのを買うことに。並盛500円。テイクアウトした。
続いてやってきたのは「松屋ビーフカレー」対象店舗の1つ、秋葉原店だ。お店の外にデカく案内が出ていた。
お値段は並盛が税込み680円。“お店で1食ずつ手鍋で煮込みご提供。” とある。おそらく、この部分が「ビーフカレー」との違いなのだろう。
こちらもバリエーションが豊富。
ゲットしたのは、もちろん一番シンプルな奴だ。
・比較
持ち帰ってきたのがこちら。蓋のシールにはどちらも「ビーフカレー並盛」としか書かれておらず、外見的には同じモノに見える。
蓋を開けるとこんな感じ。色や香りでも区別がつかない。恐らくカレーとしてのモノは同じなのではなかろうか。
より詳しくチェックすると、「ビーフカレー(500円)」の方は肉がそれなりにしっかりと形状を保ったままゴロっと入っているのに対し……
「松屋ビーフカレー(680円)」の方に形状を保ったままの肉は1つも入っていなかった。
たまにカタマリっぽいものがあっても、ちょっと力が加わると繊維が崩れてドロッとスプーンから流れ落ちていく感じ。
完全に煮込まれまくってルーと一体化しているのだ。なるほどね、180円分煮込まれてるって感じか。
両者の違いは実際に食べてみると、より明確に感じられる。まず、ベースとなるルーは松屋らしいオイリー感強めのモノ。辛さもしっかり感じられる。
「ビーフカレー」は、対「松屋ビーフカレー」比でサラっとしており、使用されているスパイスの解像度が高く感じられる仕上がり。
対して「松屋ビーフカレー」は、対「ビーフカレー」比で粘度が高め。どこを食っても肉の繊維が漂っているためビーフの風味が濃厚だが、そのかわりスパイスの風味はビーフに浸食されて解像度が低下している。
味わいが違っているのは間違いないが、クオリティは同等。肉が溶けだしまくって全体に行き渡っているのを好ましく感じるか、それとも肉はカタマリのままであってほしいか……という感じ。
・嵐の予感
1つ確かだと思うのは、こいつが松屋のビーフ系カレー史上、一番仕上がっているということ。
創業ビーフも悪くは無かったのだが、なんかこう、ビーフなのに味の深みや重厚さは ごろチキに負けていたと思うし。
松屋め、ビーフを撤廃してチキンに下ったと思いきや、裏で研究を重ねてビーフのクオリティを練りあげていたもよう。
ごろチキは確かにウマいが、どこまでいってもチキン。肉そのものの打撃力の軽さからは逃れられない。この重厚な肉フレーバーはビーフにしか出せない。
ただ、繊細なスパイスの風味をしっかり感じさせる能力では、ごろチキがリードしているようにも思える。
どちらが良いか……実に難しい問題だ。もっと何度も食べ比べる必要がありそう。
何にせよ真に重要なのは、現在頂点に君臨するごろチキに比肩しうる存在がビーフ界から生まれつつあるということ。ビーフ勃興の兆し。嵐の予感がするぜ。