夏休みの観光スポットといえば、どこに行っても人・人・人。

まだまだコロナウイルスは猛威を振るっているものの、今年の夏は解禁ムードが漂い、人出が多くなってきた。この賑やかさが懐かしくもあるいっぽう、人がいない状況に慣れすぎて、混雑している場所に行くだけで疲れてしまう……という人も多いはず。

今回は夏らしさを感じさせつつ人がいない観光スポットを探している人に絶好のスポットを紹介したい。お台場の「東京国際クルーズターミナル」である。恐怖を感じるほどの絶景ぶりをご覧あれ。


・海外の大型クルーズ船が寄港する港

いきなり「東京国際クルーズターミナル」と言われても、ピンと来ない人が多いと思うので簡単に説明したい。

「東京国際クルーズターミナル」は2020年9月10日にオープンした客船ターミナル。2020東京オリンピックの開催を見据えて、超大型のクルーズ船も寄港できるという触れ込みで、東京の新たな玄関口として建設されたものである。

まあ「2020年」「クルーズ船」「東京オリンピック」というキーワードを並べるだけでピンとくると思うが、新型コロナウイルスや無観客オリンピックの影響をもろにくらった施設である。大きな話題にならなかったのもいたしかたなし。

私がその存在を知ったのは東京を1周する水上バス「いちにちゆらり旅」に乗ったとき。乗船地のひとつに「東京国際クルーズターミナル」があったのである。船で前を通っただけで、下船できなかったのだが、立派な真新しい建物が印象に残っていたので、実際に足を運んでみることにした。


・駅前から誰もいない

最寄り駅はゆりかもめの東京国際クルーズターミナル駅(旧・船の科学館駅)。台場駅のすぐ隣である。取材日は夏休み真っ只中ということで、ゆりかもめは家族連れやカップルで超満員。

同じ駅で、小学生の集団が降りたので「お、東京国際クルーズターミナルに行くのか?」と思ったが、正反対の出口へと向かっていった。日本科学未来館に行く社会科見学だったらしい。

駅に降り立つと……誰もいないし、何もない。

隣接する「船の科学館」は老朽化を理由に2011年から休館中だという。明るい夏の日差しのなか、残された大きな船の形の建物が寂しい。

駅から500mほど歩いたところに「東京国際クルーズターミナル」があるのだが……道中ですれ違ったのはマラソン中の男性ひとりだけ。

ウミネコの鳴き声と、貨物船のエンジン音、波の音だけが聞こえる。本当にここは夏休みのお台場なのだろうか……。

ターミナルの前についたけど、シーンとして人気(ひとけ)がない。

もしかしてターミナルは休館日なのかな? 船に乗る人しか入れないのかな? と思いつつ建物を見ていたら、玄関で職員の女性に

「ここは4階までありますし、デッキにも出れますので周ってみてくださいね」

と声をかけられた。なんかRPGゲームの村人みたい。誰でも入館は可能なようだ。


・いや増す孤独

ちょっと緊張しながら中に入ると……

誰もいない……

コロナ対策の自動アナウンスが流れるだけでシーーーーンとしている。

建物は1階から4階まであるが、2022年8月現在、お土産売り場やレストランはない。

中にあるのは自動販売機とトイレ、授乳室、待合スペースのみ。

建物は真新しく、全面ガラス張りで東京湾が見渡せて、明るく開放的なのだが……

どこのフロアにも誰もいない!

警備員さんやメンテナンス会社の人を除くと、すれ違ったのは2時間で3〜4人ほど

しかもみんな1周したらすぐ立ち去るようで、2度と巡り合うことはなかった。

繰り返すが、夏休みシーズン真っ只中のお台場である。

3階のスクリーンでは、ヒーリングミュージックとともに、なぜか極楽浄土を思わせる映像が流れていた。

人類が滅亡したあとってこんな感じかな……と思うくらい人がいない。

・明るくて静かな海の見える場所

しかし、知られていないだけで静かで本当にいい場所だと思う。

待合室に置かれている家具もセンスがよくて座り心地がいい。

デッキに出れば、東京湾が一望できる。静かで潮風が気持ちいい、なんとも心落ち着く場所だ。

ここでひとり物思いにふけるのもいいし、カップルで海を眺めるのもロマンチックだと思う。

ついでにいうと、誰もいないので海をバックにしたキメ顔の自撮りもはかどる。

忙しない東京とは思えないほど、静かな時間が流れている。

誰もいない待合室で仕事をしたけど信じられないくらいはかどった。

・いつもこんな感じなのか?

船の寄港がない日だから、こんな感じなのかな……と思って東京国際クルーズターミナルの公式サイトから「東京港 客船入港予定」を調べてみたところ……なんと2022年10月2日まで船は来ないらしい。

さらに、過去の入港実績を調べたところ……約2年で11回だけ! 船が来ている日の方が激レアだった。こんな立派な施設を作ったのに、なんとももったいない話だ。

コロナ禍におけるクルーズ船の厳しさを改めて知らされる形となった。

私の地元の長崎では、豪華客船の寄港が多かった。港に客船が来るにぎやかなムードは良いものである。早くコロナ禍が落ち着いて、にぎやかな船の旅が戻ってきますように。

とりあえずコロナが落ち着くまでの間、静かに海を眺めたい人、誰もいない場所に行きたい人はぜひ足を運んでみてほしい。

次にここに来るときは、にぎやかな場所になっていることを願いつつ。


参考リンク:東京国際クルーズターミナル
執筆:御花畑マリコ
Photo:RocketNews24.