突然だが、皆さんはスズメバチのことをどう思っているだろうか? 大半の人は「怖い」と答えるだろうし、筆者もそう思っている。ところが世の中には「愛を持って接すれば、ハチなんてまったく怖くない」という人もいるらしい。

その代表とも言えるのが、長野県東御(とうみ)市にある『蜂天国』だ。

世界一のハチの芸術館を自称する本施設。気になって訪れてみたところ……想像以上にインパクトのある作品の数々に驚いたり笑ったり、とにかくギネス級の衝撃を受けまくったぞ!!!!

・ハチの巣だらけの異空間

玄関から入ると、まずは手前の建物で入場料(大人300円、中高生100円、小学生以下無料)を支払う。

建物は売店も兼ね、ハチミツやお菓子などが並んでいる。

専門店のハチミツって食べたことないんだよな。「あとで買おう~」なんて呑気に考えながらもスリッパに履き替え、展示スペースに入った。


踏み込んですぐに雰囲気が一変した。思わず「うわっ」と声が出る。

理由はこの光景だ。


左の棚や鳥居の奥、右側の木にぶら下がっていたりする黄土色の丸い塊

これらはすべて巨大なハチの巣なのである!


特に大きいのが、鳥居の奥に飾られている巣だ。木彫りの干支の像の背中から生えるように形成され、テッペンは天井近くまで伸びている。

ヤバすぎる。混乱のあまり筆者の頭の中のキムタクが「ちょ、待てよ」と言う。嘘だろ? こんなに大きいハチの巣、世の中に存在するわけないだろ??

──しかし何度見ても、バカでかいハチの巣が、木彫りの干支像の背中にくっついて、大量にならんでいる。自分で言ってても正直意味がわからない。


大きすぎる巣の謎はすぐに解けた。モニターにて制作の様子の動画が流れていたのだ。

どういうことかまとめると、ハチには巣の凹凸を埋めようとする習性があり、複数個を並べて固定することでひとつの巨大な巣を作れるのだという。

その習性を利用し、蜂天国では毎年夏になるとキイロスズメバチの巣を集めて合体させ、木彫りの干支像に貼り付けるという活動をしているらしい。


…………。


なんで?


…………いや、たぶん我々のような才能無き者にはわからないのだろう。なんにせよハチの巣は写真で見る以上に迫力があるし、数十個の巣を思い通りの形に組み合わせてひとつにするなんて魔法みたいな話じゃないか。

2022年は寅年なので、こちらの可愛いトラちゃんに巣がくっつけられる予定なのだという。


お盆付近になると製作が開始され、窓の外にトラが吊り下げられて巣の合体作業が執り行われるということ。尋常でないほどの大量のハチが見られるそう。


ちなみに、我々の疑問への答えになるのかは分からないが、「蜂は尊敬に値する!!」という館長の熱すぎるほどの蜂天国への想いが書かれていた。


・まだまだ続くよハチの巣作品

干支の部屋の奥にもまだまだ展示が続いている。あまりにも多いのでかいつまんでご紹介すると、まずは置物や木などにハチの巣が1個取り付けられた作品が大量に並んでいる。

ハチの巣が発生していた場所(民家の軒下など)の写真と共に飾られているものもある。

これらは巨大ハチの巣作品の原点的存在。元はと言えば、オーナーが自宅の裏山にできたハチの巣を縁起担ぎで酒瓶に取り付けたことがきっかけ。ハチが懸命に働く様子を見て饒舌(じょうぜつ)に尽くせない喜びと感動を覚えたのだという。

その後の研究で環境さえ整えれば何にでも巣を取り付けられると発見し、あらゆる置物と組み合わせて作品を作るようになったのだそうだ。


次の部屋には、なんだコレ!? 新幹線って書いてあるけど…………

平成12年作成「新幹線あさま号」ということ。120個の巣を合体させて作っているそうで、本当に人間が乗れちゃいそうなぐらいにバカでかい。

あまりのサイズにのけ反って「ヒィ~~!」って言ってしまった。これだけ大きいハチの巣を見せられたら、この先なにが出てきても驚きますまい。


・ギネス認定作品、あらわる

そう思っていたら、なにやら気になる案内を見つけた。

「2階へ 蜂富士あります」

なるほど「蜂富士」か。なかなか面白いこと言うじゃないのよ。そろそろ頭の中のキムタクが「本当に待ってください」なんて言い出しそうだ。



──って、本当に富士山デケぇぇぇ~~~~!!!!

高さ3776cm。つまり4m近くもあるのだ。

なんと巣の数160個&ハチ16万匹による合作で、世界一のハチの巣としてギネス認定を受けているという。

ここまでは笑ったり呆れたりしながら眺めていた筆者だが、すっかり参った。これを本物の芸術と言わずして何と言えば良いのだろう。蜂天国のハチへの情熱は間違いなく世界一だ。


富士山の周辺には他にも巨大作品が並べてある。

巨大作品コーナーは非常に見ごたえあるものばかりなので、上の3点以外は皆さん自身の目でたしかめに行って欲しい。


巨大作品後も小型作品の展示スペースが2部屋ほど続く。思いつく限りの置物にハチの巣が張り付けられたアート合計1600点以上も見られるというのだから、300円の入場料が安く感じてしまうな。


最後に売店でさくらのハチミツを購入して帰ることにした。

他にもレンゲやリンゴ、栗など様々な花のハチミツが販売されている。試食をしながら選ぶことができるので、きっと口に合うハチミツを見つけられるはずだ。

会計中に会話した店員の方の「ここで働くようになってハチがまったく怖くなくなりました。可愛いなって思いながら見ちゃいます」というコメントが、蜂天国のすべてを物語っているかもしれない。

もしかしてハチって、我々が想像しているよりも怖くない……のか?

※ハチの巣を見かけたら絶対に自分では手を出さず、専門の業者に駆除してもらってください。

参考:蜂天国
執筆:高木はるか
Photo:RocketNews24.

▼夏が近くなると、ハチの巣集めのため専門職員が常時待機しているのだそう。

▼窓の外には巨大ハチの巣制作の痕跡が見れる。

▼コレは縁起が良いのか?

▼正面から見た瞬間に「ヒィっ」って悲鳴が出たダルマの巣。

▼詳細はわからないのだが、庭では廃タイヤを使った恐竜のモニュメントの制作が進められていた。