アメリカは銃社会。これは「寿司は和食」と同じくらい普遍的なあたり前すぎる概念であろう。「アメリカ旅行に行く」と知り合いに告げると、100%の確率で「気をつけなよ?」と言われるのも、アメリカが銃社会であることと無縁ではないハズだ。

今回、私、P.K.サンジュンが宿泊したのは、現地の人が「しょっちゅう銃撃戦があるところ」「最悪の治安地域」というシアトルのダウンタウン。結果として銃声を耳にしたのだが、あれは本当に銃声だったのだろうか?

・格安のドミトリーを押さえたら

私がシアトルを訪れた理由はズバリ、ポケモンGOのイベントに参加するため。もちろん自腹での参加となるため、裕福とは程遠い私は少しでも旅費を抑えるため、格安のドミトリーを手配した。

男1人の旅行だし、基本的には寝るためだけに帰る部屋。ホテルだとかなり遠いのに最低でも1泊150ドル(2万1000円)かかるのに対し、私が抑えたドミトリーは市の中心街であるにもかかわらず、4泊で約150ドル。ハッキリ言って破格といえよう。

というか、当初は場所も「メチャメチャ遠くじゃなきゃいいや」くらいしか考えておらず、あくまで基準は料金のみ。無論、そこがシアトルで最悪の治安地域だとは知る由もなかったのである。

・マジでヤバいところらしい

……が、出発の数日前、シアトル在住のポケモンGO友達にホテルの場所を告げると「……本当に?」というリアクションが返ってきたではないか。友達曰く、日本でもニュースになったアジア人が殴打された地域もピンポイントでそこらしい。

さらには「普通に銃声が聞こえるところ」「日本領事館からも近づかないでくれとアラートが出る地域」「ホームレスがとんでもなく多いエリア」だとのこと。なんなら「車にマシンガンが乱射されることもある」とのことである。

この時になって初めて「え、そうなの?」と不安になっては来たものの、私に経済的な余裕は一切ない。「まあ、でも銃声なんて聞こえないっしょ」とタカをくくってシアトルに降り立ったことを告白しておく。

・落書きは危険のサイン

さて、私がシアトルのタコマ空港に到着したのは現地時間の22時10分。友人は「旦那を迎えに行かせるから!」と何度も言ってくれたが、私は丁重にお断りしていた。だって、悪いもの。気を使っちゃうもの。

結局、私は電車でホテルまで向かうことになったのだが、友人からは「ホテルまでダッシュして」「誰に声をかけられても無視して」と言われていた。そして「落書きが増えてきたら危ないと思ってよ!」と言われていたのだが。駅を降りると……


落書きだらけやんけ!


さらに言うと、比較的大きな駅であるにもかかわらず、降りたのは私を含めて3人ほど。駅前には怖ろしいほど人の気配はなく、ちょっとした郊外の駅まで乗り過ごしたような感覚だ。

……が、ここは紛れもなくシアトル最凶のダウンタウン。足早にホテルまで直行し、その日はそのまま深い眠りについた。……と言いたいところだが。

久しぶりの海外旅行の興奮と時差の関係で、なかなか眠りにつけない。スマホをいじりつつ時間を潰していると……


パンッ


……え? 窓の外から銃声らしき音が聞こえてきた。おそらくそこまで至近距離ではないものの「マジで銃声聞こえるやん」と震えつつ、その日は何とか眠りについた。

・明るくてもデンジャラス

さて、翌朝。明るくなってからホテルの周囲を散策してみることにした。やはりと言うべきか、辺りは落書きだらけで、お世辞にも「平和そうな地域だな」とはとても思えない。

さらに言うとハイウェイの高架下は特に怪しい雰囲気で、街中のところどころが小便臭かった。友人が言っていた「シアトルで最悪の治安地域」というのも納得のデンジャーな雰囲気である。

で、翌日も時差ボケで眠れずにいると何度か「パンッ」と銃声らしき音が何度か聞こえてきた。ぶっちゃけた話、ここまで頻繁に炸裂音が聞こえてくると「本当に銃声なのか?」と疑わしく思っていたのだが。

明くる日、友人に「花火なんじゃないの?」と聞いてみたところ「シアトルは独立記念日以外は花火禁止だから」とのことである。やはりあれは銃声だったのか? 確かに数分後にサイレンの音がウーウー鳴ってはいたが、確かめる術がない。

・フライデーナイトフィーバー

で、極めつけは金曜日の夜、すなわち “フライデーナイト” である。この日も午前2時くらいに目が覚めてしまい、スマホをいじっていると、


パンッ パンッ パンッ パンッ パンッ パンッ パンッ パンッ パンッ パンッ


……と、およそ1秒ごとにジャスト10連発で銃声らしき音が聞こえてきた。ホテルの目の前ほど近くから聞こえてきていないことはわかったが、それが何ブロックくらい離れた場所からの音なのかは、いまだに謎のままだ。

結果的に、私が宿泊したシアトル最凶のダウンタウンでは、毎晩必ず銃声が聞こえてきた。なんなら金曜日の夜は10連発もあった。……が、私に銃声を聞き分ける能力がないため「絶対に銃声なのか?」と言われたら、正直に「わからない」と答えるしかない。

ただし、友人はあっさりと「それ銃声だから」「たぶん思ったより近いところで撃ってるから」と言っていたことを付け加えておく。「お願いだから夜は出歩かないで」と言われていたのも、いま思えば本気のお願いだったのだろう。

・銃声だった……っぽい

とはいえ、明るくなってからはさほど怖い思いはせず、ヤバそうなヤツは両手で収まるくらいの人数に遭遇しただけである。というか、日中は安全な地域に出かけていたので、基本的に怖い思いはしなかった。

それでもダウンタウンでは、煙草をくれと声をかけてきた黒人の女性(断ると俺が捨てた煙草を吸っていた)、目がガンギマリしている白人男性(ひたすら徘徊していた。最終日はなぜか顔が泥だらけだった)などなど「絶対に絡んだからダメなヤツ」がいたことも事実。注意するに越したことはないはずだ。

というわけで、なかなかスリリングな体験だったシアトル最凶ダウンタウンでの4日間。当然ではあるが、上述した話は1つも盛っていない事実である。でもまあ、全然次も泊まれるし「2度と行きたくない!」とは思いませんでした。

執筆:P.K.サンジュン
Photo:RocketNews24.

▼旅の思い出。銃声は聞こえたけれど、また絶対にシアトルに行きたい!