あなたは宗教の勧誘を受けたことがあるだろうか? 私(あひるねこ)はというと……実はある。というか、私の地元ではそれなりに多くの人が受けた経験があると思われる。なぜなら一時期、勧誘の男性2名が駅前で手当たり次第に声を掛けていたからだ。

この勧誘に対し、私を含めほとんどの人は無言でその場から立ち去るのだが、ある日たまたま元級友が声を掛けられている場面を目撃した私は、そのシンプルにして問答無用すぎる断り方に衝撃を受けたのだった。

・駅前での宗教勧誘

これは私が高校を卒業した直後くらいの話なので、もうかれこれ20年近く前である。なので現在こういったことが起きているのかは不明だし、もしかしたら多少の記憶違いもあるかもしれないがご了承いただきたい。


当時、駅前などの人の往来が多い場所で、よく外国人男性2人組が宗教の勧誘をしていた。驚くことにその2人は、駅から出てくる人ほぼ全員に「チョットイイデスカ?」と片言の日本語でひたすら声を掛けまくるのだ。

私の周りでも話しかけられたり、その現場を目撃したりする友人は多かったので、それなりに有名な存在であったと思う。路上で本やポスターなどを持っている人を見かけることは今でもたま~にあるが、居酒屋のキャッチレベルで勧誘してくるケースは、少なくとも私は経験がない。

ちょうどこの日も駅から出たら2人組がいて、私の前を歩いている人たちに「チョットイイデスカ?」を連発していた。もちろん私も話しかけられたので、軽く会釈だけしてスルーさせてもらったのだが、それから少し遅れて駅から出てきたのが元級友のTくんだ。

・主役登場

Tくんとは小中学校が一緒で、小学生の時は同じクラスになったこともある。家にも何度か遊びに行ったが、個人的にはちょっと変わったヤツという印象が強い。どこが? と聞かれると困るのだが、クラスの中でも考え方や言動に一癖あるタイプだったと記憶している。

そんなTくんと、宗教勧誘の外国人2人組がカチ合うのだ。一体どんなバトルに発展してしまうのか? 私は固唾をのんで両陣営の動向を見守った。何も知らずに歩いてくるTくん。完全にTくんをロックオンする勧誘サイド。そして……


「チョットイイデスカ?」


・バトルスタート

先に動いたのは2人組だった。Tくんの前に立ちはだかり、お馴染みのフレーズを繰り出したのである。離れていても聞こえるほど大きな声だ。これに対し、Tくんはどう反応するのか? 他の人たちと同じように無視して通り過ぎるのか?

ところが……Tくんが取った行動は、まったくもって予想外なものだった。相手が「チョットイイデスカ?」と言い終えるか終えないかの刹那、彼は一言、こう言い放ったのだ。


「ノー!!!!」

・一閃

ノー、つまりNOである。と同時にビシッと突き出される手のひら。こんな明確な拒否の意思表示が他にあるだろうか? 「チョットイイデスカ?」に対し、Tくんは「よろしくねぇ!」と断言したワケだ。これと比べると、私の先ほどの対応はひどく曖昧に思えてくる。

勧誘した2人組の方も、まさかこんなに強く「NO」と返されるとは思っていなかったのだろう。一瞬ではあるものの、明らかに2人ともフリーズしていた。その横を颯爽と歩き去っていくTくん。スゴイ、これ以上ない完全決着である。

・見習いたい

多くの人が何も主張することなく、無言のまま2人組をやり過ごすなか、Tくんは自分の意思を誤解されようのないシンプルな言葉で表現した。嫌なことは嫌だとハッキリ言う。簡単なようで実に難しい態度だが、これができるとできないとでは、人生の幸福度も変わってくるのかもしれない。

執筆:あひるねこ
Photo:RocketNews24.