スポーツ嫌い。やってる人も嫌い。なぜなら中学生の時、野球部にイジめられたから。高校の体育の授業ではバスケ部やサッカー部など体育会系のカースト上位がチームメンバーの取捨選択を勝手にしてたしな。まあ、私(中澤)の中学時代は25年前だから、今となっては遠い昔なんだけど苦手意識だけがずっと抜けない

したがって、私はオリンピックもワールドカップもほとんど見ない。必然的に、その先にあるスポーツを生観戦する機会もこれまでゼロだった。これはそんな私がスポーツを生観戦した話。生まれて初めて観戦したスポーツ……それは女子フットサルリーグであった

・25年前の大阪の田舎

私の生まれ育った町はクソ田舎だったため、子供カーストを支配するのはスポーツとヤンキーだった。で、あくまで当時の個人的感想を述べるなら、ヤンキーはバイオレンスな時はあるが態度は平等だったのに対し、スポーツマンは自分が有利な立場の時には高圧的な態度を取る人が多かったように思う。

体育の授業でもできない人に対しての圧が凄い。どちらも同学年のただの中学生なのに。思えば、現在、インディーズバンドマンである私がギターを手に取ったのも、そんな傲慢さの中で取捨選択されるのが嫌だったというのもあったのではないだろうか。

・ハードル

まあ、これは原因の話で、今となっては嫌いというほどの感情もない。ただ、なんとなく苦手意識だけが残ってしまっているのだ。スポーツマンと聞くと、自分とは違う人種に感じるような。そんな私が女子フットサルリーグ観戦に行ったのは知り合いに誘われたからだった。

ひょっとしたら、Jリーグやプロ野球だったら断っていたかもしれない。スポーツに興味がない人からすると、広い競技場に集まるスポーツガチ勢の中に埋もれて、豆粒みたいな選手を観戦して楽しむのはハードルが高いのである。

それに比べて、フットサルリーグはコンパクトそうだ。フットサルということは室内だし、サッカーに似てる分勉強しなくても大体のルールが分かる。あくまでスポーツを生観戦したことがない私の個人的なイメージだが、なんか気楽で見に行くハードルが低いように感じられたのだ。

・手作り感

事実、会場のさいたま市『サイデン化学アリーナ』に入ると、圧倒的な手作り感が漂っている。うむ、ハードルが低い。

席は1階で突き出すみたいにコートに近かった。野球で言うバックネット裏みたいな席である。何も知らずに来たのだが、どうやら本日は18時からの「さいたまSAICOLO vs 福井丸岡RUCK」がメインイベントなようだ。福井丸岡RUCKには日本代表が3人いるらしいのだが……

誘ってくれた知り合いいわく「チケットは当日予約で1500円くらいだった」とのこと。ハードル低いなー。しかしながら、試合が始まると……


気付けば叫んでいた

・激アツな展開

『福井丸岡RUCK』が明らかに格上に見えたのだが、食らいついていく『さいたまSAICOLO』。前半終了時点で3対1とリードされていたため、サッカーのノリで「もうダメか」と思っていたのだが、後半になるとグイグイ追い上げる展開に。

負けじと『福井丸岡RUCK』も4点目を決め突き放す。これはさすがに厳しいか……? 手に汗握る中、『さいたまSAICOLO』が4点目をとった時は思わず「オオオ!」と声が出た。自分でビックリである。今、俺、スポーツ見て叫んでた

確かに、会場中から声が上がったシーンではあった。でも、自分がその声の1つを出すことがあるなんて。どっちを応援していたわけでもなかったのだが、考えるより先に声が出た

結局試合は4対4の同点だったのだが、不完全燃焼感は全くなかった。むしろ、良いものを見させてもらった気がする。戦況の変化が目まぐるしく、当日予約でちょっと見に来ただけでこれだけ胸を熱くさせてくれたんだから、1500円は安かったと言えよう。

・衝撃

しかし、個人的に最も印象的だったのは、選手のファンサービスである。会場の規模もあるのだろうが、試合後、常連のファンらしきグループと、談笑して一緒に写真を撮るそのファンサの距離感は思っていたスポーツ選手よりもっと身近な感じだった。どこかでこれに似た雰囲気を感じたことがある気がするのだが……


! 地下アイドルだ。「またねー!」とファンに手を振るその姿が、ライブハウスに出演するアイドルとファンの距離感にダブったのである。まさに会いに行けるスポーツ選手。

地下アイドルの作詞もしている私。その姿勢にこう思わずにはいられなかった。「スポーツと言えども、お金を払って客を集める以上、エンタメでありプロなのだ」と──。

ずっとスポーツマンと聞けば、まず「合わないかも」とマイナスから入ってきた。しかし、そう考えると、私が普段いるライブハウスとここは変わらない。現場に音楽もスポーツも関係ないのだから。初めて生観戦したスポーツの現場、そこにはただ必死な想いがあった。

執筆:中澤星児
Photo:Rocketnews24.