『サ道』というドラマをご存じだろうか? サウナーが色んなサウナやその周辺情報について語り合うのが主体のドラマで、要は『孤独のグルメ』のサウナ版みたいなものである。テレビ放送当時はサウナ自体に興味がなかったのだが、最近、サウナにハマったせいかNetflixで配信されていたこのドラマにも見事にハマった。

で、その舞台になっているのが上野にある男性専用サウナ「北欧」である。ドラマを見てたら、外気浴のスペースが広々としているのがとても良さげ。そこで行ってみたところ、ルールが独特で危うく罠にハマりかけた

・ドラマと違う点

ドラマではナカタ(原田泰造)がフラッと行って入ってる感じの「北欧」。しかし、ナカちゃんの真似してフラッと訪れてみたところ、2022年6月現在は完全予約制となっているようだ

予約サイトを確認してみると、13時から21時まで1時間おきに9つの回がある。日曜日の昼の時点で、当日の夜20時と21時、月曜日の21時から火曜日の17時までが空いていた。というわけで、予約を取って夜に出直すことに。ちなみに、利用は3時間で税込み2000円。

・初めての男性専用サウナ

なんとなく怪しい雰囲気のある夜の上野路地裏。「男性専用」という閉鎖的な響きがそこに拍車をかけるが、実態はどういう場所なのだろうか? そう、何を隠そう私(中澤)は男性専用サウナに行くのが初めてなのである。ドキドキ

・施設内へ

フロントは6階。エレベーターの階層ボタンが入口の1階以外は6階しかないので、他の階層へは階段移動のようだ。施設案内図によると、最上階の7階が大浴場で、5階にレストランとリラックスルーム、2・3・4階はカプセルルームになっている。

カプセルホテルも兼任しているだけあり、フロントはホテルのフロントのようだった。銭湯みたいな馴染みやすさよりは規律のある雰囲気の方が強いように感じるのは初めての男性専用サウナにビビってるからだろうか。それとも、デスクの天板が大理石だからか。

・手ぶらでOK

勇気を出してフロントで予約をした旨を伝えると、名前を聞かれ、ロッカーの鍵を渡された。特に会員カードとか必要ないところは楽でいい。しかし、もらえるのは鍵だけ? 館内着とかタオルは借りられないの? タオル等を持ってくるのは暗黙の了解だったのだろうか。

一瞬不安になったが、フロント奥からロッカールームに繋がる境目に棚があり、そこに一式置かれていた。ご自由にお取りくださいスタイルである。ほっ。システムが微妙に独特だが、どうやら無事入れそうだ。風呂場にさえたどり着ければもうクリアしたようなものである。と思いきや、最後の最後に罠が待ち構えていた

・罠

それはロッカールームでのこと。自分のロッカーに荷物を置いて服を入れてバスタオルを持ち、大浴場に行こうとした時ふと思った。「あれ? 大浴場遠くね?」と──。

普通、銭湯だったら大浴場の前にロッカーがあるところが多いと思うのだが、ここはロッカールームから大浴場に行くのに階段を上がらないといけない。銭湯よろしくロッカーで全裸になったとしたら、いささか全裸距離が長すぎるような気がするのである。

・混乱

だからと言って7階に脱衣場があるとは限らない。なにせ、ロッカールームはここにあるのだから。どちらのケースも対応できるのは全裸で向かうことだが、もし7階に脱衣場がちゃんとあった場合、階段で誰かとすれ違ったらめっちゃ恥ずかしい。

だが、7階に脱衣場があるかどうかは行ってみないと分からない。現状、脱衣場のある7階と脱衣場のない7階は重なり合って存在しており、私(観測者)が確認した時に初めて脱衣場の存在が確定する。言わばシュレーディンガーの脱衣場だ。

とは言え、私服で確認に行ったら、それはそれで初心者感丸出しに思われそうである。こんなプロの巣窟でそこまで初心者感丸出しにしたら舌打ちとかされるのではないだろうか? もうどうするのが正解なのか分からない。ロマサガ1かよ

・初めての人は注意

ロマサガ1と言えば、今でこそゲーム攻略はネット検索が主流だが、当時は攻略本か人に聞くしかなかったものである。そこで攻略済みオーラを漂わせている通りがかりの客に聞いてみたところ、7階にロッカーはあるらしい。ただし、鍵がかかるものではないため、このロッカールームでガウンに着替えるのだそうな

着替えて大浴場に向かったところ、恥ずかしそうに前を隠しながら階段を降りてくる人とすれ違った。どうやら罠だったのは私に対してだけではなかったようである。というわけで、ここに記しておくので初めての人は注意しよう。

・注意点その2

大浴場前の脱衣場は確かに聞いた通り、簡素なものだった。鍵がかかるとかかからない以前にただの棚である。番号とかも振られてないので、脇にある付箋とボールペンで名札をつけて使うのだが、注意すべきは……

名札をつけないと風呂上りにガチで分からなくなるケースがあるということ。ガウンも短パンも「北欧」のもので、棚に入っているものにほぼ違いがなくなるため、目印がないと見分けがつかなくなるのである。これも独特なように感じたので追記しておきたい。

しかし、なぜロッカーが2重になっているのだろうか? 軽く店員さんに聞いたところ、第一のロッカーは当日利用の客用のスペースなのだそうだ。なるほど、あくまでカプセルホテルだしな。

・注意点その3

さて、そんな『北欧』だが、サウナ設備はマジで最高であった。サウナ室は16人くらい入れて広いし、水風呂も深くて余裕がある。しかし何より余裕があるのは外気浴スペース。露天風呂サイドは広く、寝椅子3席を含めととのい椅子が全部で14席もあるのだ。多い!

1つ好みを言わせてもらえるなら水風呂が冷たい。私が入った時は11度くらいだった。サウナ室が100度ならバランスが取れそうだが、3段目より上に設置された温度計が100度だったのに対し、2段目のところにある温度計は60度。サウナ室内で差が結構あったので位置取りによって水風呂の時間を調整する必要があるかもしれない。

・大人の階段を上った

しかし、完全予約制で人数制限していることもあってか、外気浴では常に椅子のどれかが空いているのは強い。「サウナ→水風呂→外気浴」の三角形が滞ることがないのである。私が入ってる時、大浴場には30人くらいいたと思うが、結果として3時間という制限時間付きでも十分なセット数を回ることができた。

というわけで、色々と注意点はあったものの、さすが『サ道』の聖地。サウナのクオリティーは非常に高かったと言える。また、男性専用サウナという面においても、未知の世界を知って少し大人になれたような気がした私であった。ととのったー

・今回紹介した店舗の情報

店名 サウナ&カプセルホテル北欧
住所 東京都台東区上野7丁目2−16
営業時間 12:00~翌朝10:00
定休日 無休

執筆:中澤星児
Photo:Rocketnews24.