絵の仕上がりは、画材によって大きく左右される。「うまく表現できないな……」と悶々としていたら、案外画材を変えただけであっさり解決したということも多い。
今回ご紹介する「顔彩耽美 グラファイトカラーズ」という絵の具もまた、作品の幅を広げられるかもしれない一品。なんと、乾いた後に磨くと金属光沢を放つというのだ。
そ、そんな宝石みたいな絵の具があるのか!? せっかくなら最大級の輝きをこの目に焼き付けたかったので、1時間みっちり磨きまくってみた!
・黒鉛入りの絵の具
「顔彩耽美 グラファイトカラーズ」は、筆ペンや万年筆など様々な文房具を取り扱っている「株式会社 呉竹」から税込1320円で販売されている。学校の書道の授業などで、この会社の墨汁にお世話になった方も多いのではないだろうか。
磨くと光る秘密は、顔料と一緒に調合されている「グラファイト」にある。これはつまり黒鉛のことで、鉛筆の芯に使われているあれのことだ。
全色に「黒艶(こくえん)」という名前がついている上、全体的に黒っぽいのはそういうことか。
この名前って、もしかして「黒鉛」とかけているのかな? もし本当にそうだったら、言葉遊びがうますぎてスタンディングオベーションしてしまう。
実際に塗ってみるとこんな感じ。風景画などに使えば、落ち着いた印象の絵に仕上がりそうだ。
しかし、この絵の具が真価を発揮するのはここから! さっそく光っていただこう。
商品ページの「面のあるもので磨くとよい」という言葉に従い、スプーンの背を使って「黒艶茶」の1部分を軽く磨いてみた。
数分後、磨き終わった「黒艶茶」がこちら。……うん? 若干色が濃くなったような気はするけど、特に輝いてはいなくない?
もしかして磨き方を間違えたか? 焦りながらちょっと紙を傾けた瞬間……
あ、ああ~!! こういうことか!!
あれだけ黒っぽかった色が、見事なまでに白く光を放っている。鉛筆でも濃く色の乗った部分がキラキラ輝くことがあるけれど、材料が同じだけあってこの絵の具でも同じ現象が起こるようだ。
てっきりスクラッチアートのような光り方をするのかな~と思っていたけれど、下に何も仕込んでいないのにそんな仕組みを作るのってかなり難しそうだもんな。納得である。
・もっと磨いてみた
それにしてもこの絵の具、随分ツヤツヤになるんだな。軽く磨いただけなのに、近づけたスプーンが映りこむほどの反射率だ。
……もしかして、もっと磨けばさらにツヤツヤにできちゃったりするのだろうか?
そう考えた筆者は、さっそくこれを試してみることにした。絵の具を濃く塗って……
ひたすら磨くゥウゥウゥ!!!!!!!
やっていることはただスプーンを前後に動かす運動なんだけど、これがなかなかどうして体力を奪っていく。う、腕痛い~! しんどい!!
しかし、さっきよりも確実にスプーンの映りこみがはっきりしている! やっぱり仮説は間違ってなかった!!
ワクワクしながら作業を続けること1時間。磨きに磨いた絵の具は……
ニスか何かですか? と言いたくなるくらいピッカピカになっていた。指でこすると「キュッキュッ」と音がする。絵の具から出る音じゃないんよ、これ。
・創作意欲爆上がり
ちなみに、一応普通の絵の具も磨けば光るのか確認してみた結果……
同じような光沢は出るものの、きれいな仕上がりにはならなかった。
手描きの作品では、小さなミス1つが命取りになることも多々ある。そのリスクを少しでも減らせるのは、絵を描く身としてはとてもありがたい。
磨けば磨くほど輝く絵の具「顔彩耽美 グラファイトカラーズ」。
この絵の具をうまく使えば、傾けた時だけ絵が浮かび上がる仕掛けを作ったり、絵の中のツルツルした物体の質感を実際に体感してもらえたりするかもしれないな。やばい、創作意欲が湧き上がってきた。
皆さんも、是非この絵の具で不思議な水彩画を楽しんでみてはいかがだろうか!
参考リンク:呉竹
執筆:うどん粉
Photo:RocketNews24.
▼普通の水彩画として書いたイルカのような何か。渋い色合いがいい
▼1時間磨いた絵の具の表面。海苔に見えなくもない