当然のように受け入れているが、よくよく考えたらおかしくないだろうか? 似たような素材を使い、似たような調理法で作られているはずなのに、一方の天丼は500円で、もう一方は約4000円。

両商品の間に「何か大きなもの」が存在するから価格に8倍近い差が生じているのだろうけど……“そいつ” は本当にとんでもなく巨大なのか? あるいは巨大と思われているだけで実態は大したことないのか?

──ってことを私が考えてしまったのは、新宿伊勢丹で『山の上特製天重』を見つけたときのこと。価格は3780円。「山の上ホテル(てんぷら和食 山の上)」が販売しているもので、なんというか、容器からして高級感がすごいことになっている。


圧倒的な安心感。この感じなら、きっと美味いんだろうけれど……てんやの天丼だって十分に美味い。十分に美味いものがすでに世にあるにもかかわらず、その約8倍もするものが存在するのはどういうことか。

──と考えても仕方がないので、『山の上特製天重』とてんやの『天丼弁当(500円)』を両方買い、「その間にあるもの」を確かめてみた。


・見た目の差

まずは見た目で分かる部分から。それぞれの商品を並べるとこんな感じ。


なお、ホテルの天重は元々ご飯と天ぷらが分けられており、天ぷらを乗せる作業は私自身が行った。お店の人が盛り付けたわけではないから誤解なきよう。


ついでにもう1つ言うと、『山の上特製天重』は天ぷら定食としても食べられる。購入時に「天つゆにしますか? タレにしますか?」と聞かれタレ(丼ツユ)を選択したので「天丼」になったが、天ぷら定食にも化けられるソファーベッドみたいな仕様である。

好みに応じて変えられる心遣い、さすがだ。おまけに、冷めても食べられるように丁寧な説明書きまで付いてきた。読めば、天ぷらとご飯で温め方を変えるのがいいらしい。なんという細やかさか。


もちろん、タレは食べる直前にかけられるようになっている。てんやは最初からタレがかかっていることを考えたら、この差はデカい。


・具材をチェック

さて、では具をちょっと細かく見ていこう。まずは、天丼の主役とも言えるエビ。意外なことに、サイズ自体はそんなに変わらない。

ただ、てんやの方はちょい曲がりで、衣の表面には天かすっぽいのが大量に付いている。対してホテルの方はストレートで、天かすっぽいものは無し。

このあたりは職人さん的に腕の見せどころなのだろうが、見た目だけの話で味にそんなに差はない……と思ったら結構違った。味というか、食感が全然違う。ホテルの方が格段にカリっとしているではないか。

さらに白身魚も……

身の分厚さを見るとそこまで差はないが、フワっと感が明らかに違う。


・上品にして豪快

また、上品でありながら豪快さを感じる具材が多いのもホテル天重の特徴だろう。


椎茸は大きく、アスパラガスは長く、かき揚げの具は1つ1つがはっきりしている。


よって、どっちが美味いかと言われたら、そりゃあ当然ながらホテルの方。勝負にならない。圧勝である。


ただし、本企画の趣旨はどっちが美味いかを決めることではない。2商品の間に何があるのかを突き止めることだ。噛み砕いていうならば、具体的な差。

そのあたりの受け取り方は人によって違うだろうが、私が感じたものを挙げると……


細やかな心遣い、カリッと感(特にエビ)、フワッと感(特に白身魚)、上品な豪快さ


──ってことになる。よって、今回の検証では上の4つがあるから価格に差が生じていると結論づけたい。裏を返すと、上の4つをそこまで重視していない人は「てんや」へ行け! 以上!!

執筆:和才雄一郎
Photo:RocketNews24.