ロケットニュース24

【実話】74歳の父がうっかり「BL映画」デビューしてしまった話

2021年10月23日

10年前と比べると、BL(ボーイズラブ)というジャンルが完全に定着した感がある。思えば2018年に大ヒットし、その年の流行語にもなった「おっさんずラブ」もBLがテーマのテレビドラマであった。

とはいえ、私、P.K.サンジュン自身はBLの知識に乏しく、その道のイロハの “イ” もわかっていない。43歳の私がこうなんだから、ご高齢の方はBLとほぼ無縁なハズ……と思いきや。つい先日、私の父「ヨシオさん」がBL映画デビューを果たしたというから驚きだ。

・映画好きのヨシオさん

これまでも父「ヨシオさん」については何度か執筆してきた。超頑固の文字だけでは収まり切らない純粋な頑固の結晶、それがヨシオさんという人である。御年74歳、現在の生き甲斐は2人の孫のようだ。

そのヨシオさんは映画鑑賞が趣味で、私も幼い頃からよく映画館に連れて行ってもらった。ヨシオさんと遊園地に行った記憶は1度しかないが、新宿のコマ劇場には何度も連れて行ってもらったと記憶している。

当時、ヨシオさんの事務所が新宿にあった関係で、学校帰りの私とヨシオさんはコマ劇場で何作かの映画を鑑賞。今は亡き母が一緒にいたこともあったが、父と2人で映画を観た後、そのまま行きつけの焼鳥屋に連れて行かれたこともあった。

思い返せば「スター・ウォーズ」「バットマン」「スーパーマン」などを観た記憶があるから、ヨシオさんなりに子供でも観られる作品を選んでくれていたのだろう。ただし「エイリアン2」だけはトラウマレベルの恐怖であったが。


・まさかのBLデビュー

それはさておき、ヨシオさんの映画熱はその後も衰えず、私が実家にいた頃はよくDVDを観ていた。気に入りすぎて「ミッション・イン・ポッシブル3」を10回以上レンタルしていたことは理解出来なかったが、ヨシオさんは今でも映画が大好きなのである。いや、もう買えよ。

さて、そのヨシオさんがつい先日「BL映画」を鑑賞したそうだ。オチも何もないので先に明かしてしまうが、007を観ようと映画館に出かけたところ、劇場を間違えてBL映画を観た……ということらしい。

人間だもの、誰にでも間違いはある。だがしかし、話によるとヨシオさんが「これは007じゃないな……?」と気付くまでにはそれなりの時間がかかったようだ。以下でヨシオさんに言い分をご覧いただこう。


「俺はN-5っていう席に座ったんだよ。空いてたさ、俺が買ったんだから。だけどさ、なんかおかしいと思ったんだよ、妙に宣伝が漫画(アニメ)ばっかりだったからさ。始まらないなー、始まらないなーと思ってたんだよ」

「あとさ、やたらと女の客が多かったんだよな。俺みたいな歳の男なんて1人もいないよ、俺だけ。そしたらさ、漫画の男同士がキスするじゃない? これはいよいよおかしいと思って劇場を出て、係の人に “間違ってるんじゃないか?” って言いに行ったんだよ」


間違っているのは1万%ヨシオさんなのだが、なぜもっと早く「007」ではないことに気付かなかったのか? というか、ジェームズ・ボンドを何だと思っているのか? キスシーンまで行くということは、まあまあ佳境まで作品を観ている可能性が極めて高い。

その理由を「俺も最近、目が悪いからなぁ」なんて言っていたが、それならもはや映画館で映画を観る資格すら無いのではなかろうか? まあ、私的には笑えるからいいのだが、劇場内で居合わせた女性たちはさぞ気味が悪かったに違いない。息子が謝ります、うちのヨシオさんがどうもすみませんでした──。

というわけで、今回はヨシオさんのおもしろエピソードをお伝えした。私も父譲りの頑固者ゆえ、ヨシオさんとはシリアスな関係に至ることも結構多い。もういい歳なんだから、今回みたいなおもしろエピソードだけにして下さい、ヨシオさん。

執筆:P.K.サンジュン
イラスト:稲葉翔子
Photo:RocketNews24.

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