
「食欲の秋」「味覚の秋」 秋を一言で表そうとすると、食とは切っても切れない。筆者が一番好きな秋の食べ物はズバリ、栗。モンブラン、栗饅頭、栗ご飯、そして……栗きんとん!
口に入れた瞬間にホロっとほどける食感と栗そのものの美味しさが味わえてたまらなく好きなのだが、小さいのにひとつ300円前後と庶民にはちょっと贅沢である。
ある日散歩をしていたら、道路に栗が落ちていた。なんともなしに眺めているとふと思い当たった。「これを使えばタダで栗きんとんが食べれるんじゃないか?」。
――しかしタダより高い物はない。栗きんとんの値段の理由を思い知らされることになったので、共有したい。
・木の実拾いは幸せ
拾ったのは野生の栗。トゲに注意しながら取り出してみると、
こぶりながらも丸々としていて美味しそう!
もしかすると筆者だけかもしれないが、木の実を採取していると身体の奥から、もっと言うならば本能的に自分が喜んでいるのがわかる。食べ物を拾うのは、生き物にとってはかなり幸せなご褒美的出来事なのである。たぶん。
調べてみたところ、どうも拾った生栗は虫に喰われていることが多いらしい。
虫に喰われた栗は水に浮くらしいが……セーフ。
実を言うと、昨年道の駅で生栗を購入したところ中身が空っぽでカビだらけだったことがあるのだ。今年は美味しい栗が食べられることを想像すると、それだけで喜びのあまり躍りたくなってきた。
ということで下処理として2分ほど煮て、日陰で乾かし、冷蔵庫で1週間ほど寝かせる。寝かせることで甘みが増すらしいぞ。
・いざ、栗きんとんを作る
1週間後、栗きんとんを作る時が来た。湿気てカビが生えないように毎日拭いたり転がしたりして情が移ってしまっているが、さっそく作っていこう。
①栗を茹でる。下処理とは違い、今度は40分ほどしっかり火を通す。
②栗をザルに上げたら冷めないうちに半分に切って、
③スプーンで中をほじくり出す。
半分に切って、
ほじくり出す。
……。
…………。
終わんないな、コレ。
途中で腰が痛くなって椅子を出してしまった。
1時間ほどかけて全部ほじくり出した。
④フードプロセッサーで細かく砕く。この工程はなくても良いが、⑥の作業がかなり楽になるぞ。
⑤栗の重さの20%ほどの砂糖を加え、よく混ぜる。
⑥すべて裏ごしをする。(この記事を書くにあたって初めて気が付いたのだが、お恥ずかしながら筆者の裏ごし器の使い方は反対だった)
裏ごしというのは目の細かい網に押し付けて通すことで、滑らかな食感にすること。
この作業に結構力が必要で、少量ずつをペタペタと「栗になんの恨みがあるんだ?」と聞きたくなるぐらいねちっこく押し付け続ける必要がある。
木べらを握る右腕がダルくなってきてもなお7割以上残る栗ペーストに、作業の終わりがまったく見えなかった。
筆者は経験がないが、素人がマラソンに挑戦する時ってこんな感じの気分になるんじゃないだろうか?
結局殻むきの倍ほど時間をかけ、しかも汗だくで作業をすることとなった。写真を撮る余裕もないほどに疲れた。
⑦ここまでくればあと少しだ。こした栗を小さく丸める。
⑧茶巾でギュッと圧迫してかためる。一般家庭に茶巾は珍しいだろう。筆者も持っていなかったため、今回はより手軽な代用品としてラップで行った。
ようやく完成だ! いやはや、本当に大変な作業だった……。
・付加価値は手間にあり
大げさな話かもしれないが、「材料さえ揃えればほぼタダで手に入る」なんてのは素人の浅はかな考えであるということを、痛いほどに思い知らされる1日となった。
これはなにも栗きんとんに限った話ではなく、ハンドメイド作品や外食など様々な分野に共通している。
よく話に聞くのが「原価が〇円だからコレは高い」なんていう話だ。
当たり前だ。材料費だけ見ると安いかもしれない。だが一番大切なのは人の作業であり手間であり、それにかける時間なのである。「高い」と思うのであれば、一度自分で作ってみるべきなのだ。
──なんてひとりで憤(いきどお)ってしまう程度には、今回の作業は本当に手間がかかった。もう1度ぐらいならしてもいいかな? とも思うが、来年の話だ。今年はもう十分。
ということで筆者は今後栗きんとんを見かけたとしても一切高いとは感じないであろう。もちろんちょっとした贅沢品ではあるのだが、正当な価格であると知ってしまったのだ。
肝心のお手製栗きんとんのお味は……
めっちゃうまい!!!!!!!!
執筆:高木はるか
Photo:RocketNews24.
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高木はるか



















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