「PARM(パルム)」というアイスを筆者が最初に知ったのは、高校生の頃だったと思う。アダルトな高級感を売りにしたそのアイスの好評ぶりに、「へえ、大人向けなのか」と憧れにも似た感情を抱きつつ、まだ手を出してはならぬものと考え、当時の自分は距離を置いた。

そのまま「へえ、大人向けなのか」と思いながらズルズルと十数年が経過し、とうとう手を出さずに齢三十を越えた。もはや完全に大人としか言いようがない。機が熟しすぎて腐り落ちそうですらある。というわけで、今さら初実食してみることにした。

2005年の発売から年月が経ち、現在では森永乳業を代表する商品とも呼べるパルム。だが筆者と同じく、十数年のあいだ手が出せずに未実食という方もいるだろう。おそらく、いや、きっといるに違いない。

まだ味わったことのない美味を体験すべく、そして少なくないであろう同族の方々にその体験記事を捧ぐべく、筆者はパルムを購入した。何種類かバリエーションがあったが、オーソドックスにチョコレート味を選択。ちなみに希望小売価格は税抜140円だった。

はやる気持ちを抑えることなく開封すると、楕円(だえん)形のようなそうでもないような形のアイスバーがお出ましした。

食べたことがないとはいえ形状くらいは知っていたので、「ああ、本当にこんな形なんだ」と、ある種の感動さえ覚えた。ピサの斜塔を見て「本当に傾いているんだ」と思うのと同じである。

もう手の届かぬ存在などではない。今やパルムに対して気後れするところは一つもない。欲望に押されるがままに、目の前のアイスバーにかぶりつく。

その瞬間、えも言われぬ幸福感に包まれた。単に美味しいからというだけではない。美味しさと同時に、脳内に芽生えていたのは安堵だった。

正直に言えば、少々期待外れに終わることも覚悟していた。なにせ筆者の中のパルムに対する期待は十数年もの期間をかけて片時も休まることなく膨れ上がっていたわけで、その抑圧されたパルム像が現実のパルムとのあいだで不協和を生む可能性だってあった。

なぜかパルム心理学のような話になってしまったが、ともあれ結果として、現実のパルムはそんな杞憂をやすやすと打ち砕いてくれた。

あまりに滑らか、そしてあまりに濃厚であった。想像を何倍も上回る、蜜のような口溶けのチョコレートにまず驚く。次いでまったりとした、しかし絶妙にしつこすぎない、芸術的な甘さをたたえたバニラに心奪われる。なんと圧倒的なクオリティだろう。

なぜパルムが「大人向け」なのか、ようやく本当の意味で理解できた。アイスであるのに、まるで高級な霜降り肉を食べた時のような満足感。旨味、とろみ、深み、どこを取っても極上だ。多くの人がこのアイスの虜になっていることに、何の疑問の余地もない。

森永乳業の公式HPによれば、「パルム」という商品名は、イタリア語で「手のひら」を意味する「パルマ」から来ているという。手のひらのような形状と、「やわらかく」「あたたかい」イメージを伝えるネーミングとして採用したとのことだ。

パルムがもたらしてくれた温かな安堵を胸に、今度は筆者が手のひらを差し伸べる番だろう。まだ味わったことがない方へ、次はあなたの番であると。

参考リンク:森永乳業 公式HP
執筆:西本大紀
Photo:Rocketnews24.