人は何故、地下という空間に強く惹かれてしまうのだろうか。そこにはかつての文明の遺跡や、王国の財宝、はたまたRPG世界への強い憧れがあるからだろう。そう、地下には謎とロマンがつまっている!!
そしてそれは遠い外国やゲーム世界の地下だけではない。東京都心のど真ん中にも、謎めく地下スポットがあるのだ。「何故、ここにこれが……? 」としばし狐につままれた気分になったある場所に、筆者が諸君を案内しよう。
中央区と港区の境目近く、銀座8丁目の首都高沿いの地下にそこはある。場所は汐留駐車場。私がいま住んでいる中銀カプセルタワービルと目と鼻の先である。何故その存在に気づいたのかというと、理由はかんたん、看板を見つけたのだ。
汐留駐車場への入り口の看板にあった「地下1階 中国料理 帝里加(デリカ)」という文字。これには思わず二度見してしまった。「お店がいくつかあるのかな?」と思ったが、特に他にテナントらしきものは何もなく、ただ駐車場と帝里加だけが書かれていた。
「え? 中華料理? 駐車場に?」と私はしばし理解できずにいた。その理由のひとつに「帝里加」という漢字の物々しさもあった。この当て字のような店名が、異様さを倍増している。
私はまずその場を去り、中銀カプセルタワービルの(私の部屋の)オーナーや、先輩住民にそれとなく聞いてみた。するとなんと、コロナ前は帝里加でよくカプセル住民飲み会をやっていたと言うのだ! そして更に、定食はボリュームたっぷりでコスパ抜群なうえ、出てくるのが異常に早い、などと次々と情報を得ることができた。
「めっちゃ御用達じゃないか!」
カプセル住民たちの常連具合に安心し、私は帝里加を訪れることに決めた。
ちなみにこの地下駐車場へに行くためには4つの階段があり、そのどの階段にも「帝里加」の看板がある。中銀カプセルタワービルに1番近い第2階段を下りると、そこには再び「中国料理 帝里加」の看板が! 推しに推されているこの帝里加。この駐車場のセンターポジションなのだろう。
階段を降り汐留駐車場に入って、まず驚いたことは、その広さ。こんな大きな駐車場があったとは! 普段あまり車を使わない私にはなかなか馴染みがないのだが、都心にはこういう地下駐車場がそこそこあるという。これこそ地下のダンジョン。都会のロマンである。
駐車場が広いことはわかったが、本当にこんなところに中華料理屋があるのか!? 若干の不安と疑問を抱きながらも、私は看板が示す方向に歩く。すると赤提灯の明かりが見えてきたではないか……! これはもしや……!?
ででで、でた〜〜〜〜っ!
「帝里加」だ!
中国料理「帝里加(でりか)」の登場!!
確かに存在していたぞ!
店前には手書きの看板があり、日替わりメニューが書かれていた。A定食、Bセット、E定食。なぜEにいきなり飛ぶのか。いやいや、それよりもすべて600円とは銀座の端っことはいえお手頃価格と言えよう。
入り口の階段を上がると、まず迎えてくれたのが食券機。ふむ、いま、ここで決めろいうことだな。
しかしそこにはたくさんのメニューボタンがあり、壁にもびっちりと写真つきメニューが貼ってある。これは迷ってしまう……。悩んだ末に食券を購入し、中に入ると……、
おお、なかなか広いではないか! そしてひとっこひとりいなかった駐車場と打って変わって、そこそこ人がいる。みんな男性おひとりさまで黙々と食べている。平日の昼間ということもあって、昼休憩に中華料理をかっこむ輩たちだ。
私はそんな彼らを横目にはじっこの席に座ることにした。
席について程なくして運ばれてきたのは、半チャーハン(税込370円)。噂に聞いていた定食のボリュームに怖気付いて、量が少なそうな単品にしたのだ。うむ、スープつきで美味しそう。
それから水餃子(税込370円)。余談だが私は焼きよりも水餃子派である。
両方とも異常なスピードで出てきたわけではなかったが、それは単品同士だったということもあるだろう。細かく言うと、水餃子は茹でるためか少し時間がかかった。
さて大好物の2品を前に「この量なら大丈夫!」と余裕ちゃんちゃんで一気に平らげた。とびきりというわけではないが、チャーハンも水餃子も普通に美味しかった。
「帝里加」というダンジョンを攻略し、満足して帰ったのだが何か物足りない気がした。やはり日替わり定食を食べないことには「帝里加」を語れはしまい。
ということで、後日ふたたびその地に私は出向いた。今日こそ噂のボリューム&提供スピードの迅速さを経験すべく、迷わずA定食を注文。この日のメニューは「八宝菜」だ!
席に着き、食券を渡して待つこと約3分……。
異常な速さではないが運ばれてきたのは、なるほどなかなかのボリュームの八宝菜&ごはん。いつもは「ごはん少なめ」をお願いするのだが、この日は何故か負けてはいけない気がして普通サイズに。
だが聞いていたよりも小ぶりな気がする。まんが日本昔ばなしにでてくるような山盛りごはんだと思ったのだが、もしかしたら女性ということで気を利かせてくれたのかもしれない。
定食を頼んで嬉しかったのはデザートの「杏仁豆腐」である。店前のサンプルにはなかったので運ばれてきた時に驚いたが、食後の甘いひとときを味わえて大満足した。
以上で、謎のダンジョン攻略はスムーズに終了したのだが、「帝里加」はお弁当も販売しているので何度か頼んでみた。
500円というワンコインにしてはボリュームたっぷりで、残してしまっても次のご飯タイムに持ち越せる安心感があるので、かなりお得だと言えよう。プラス50円払うとご飯をチャーハンに変えられるというオプションもあり。
ちなみに後日、食べきれなかった際に持ち帰りたい旨を伝えると、お弁当の容器をくれたので、是非こちらも活用して欲しい。残してしまう不安感を一掃できるので有り難い。
「帝里加」のお店事情についてもちょっとご紹介。ホールのお姉さんと厨房のおじさんの2人で回している。夫婦なのかもしれないが、そうでないかもしれない。
土曜日に行くとホールのお姉さんは少しおしゃれをしていることが多い。おでかけバッグなどの私物をひとつのテーブルにドーンと置いていることもあった。
ピーク時は忙しさゆえに淡々と仕事をこなしているが、駐車場ですれ違い、記事にしたいことを伝えた時は満面の笑みで承諾してくれたキュートなお姉さんである。
余談だが「帝里加」は、あの米津玄師の「Flamingo」という曲で、ミュージックビデオの撮影地にもなっているのだ。ファンは聖地巡礼も兼ね、ぜひ、汐留に来た際には地下駐車場にある中華料理屋でダンジョン気分を味わって欲しい。
・今回訪問した店舗の情報
店名 中国料理 帝里加(デリカ)
住所 東京都中央区銀座8-16先 首都高速汐留パーキング B1F
電話番号 03-3542-1270
営業時間 11:00~15:00 / 17:00~19:30
※現在の営業時間 月〜金 11:00~14:40 / 土11:00~14:30(当面の間)
定休日 日・祝
執筆:千絵ノムラ
Photo:RocketNews24.
こちらもどうぞ! → 「【まるで宇宙船】あの魅惑の建物「中銀カプセルタワービル」に住むことになった!」
[ この記事の英語版はこちら / Read in English ]
▼定番メニュー。日替わりA定食になることもあり、お値段も600円となるからお買い得!
▼お持ち帰りのお弁当もバリエーションあり、選ぶのが楽しい。何より安い!
▼メニューがいっぱいあるので、食券を買う時はいつも悩む
▼亡き者にされているCとD
▼食券機の前にもメニューがたくさん貼ってあるぞ
▼ピンクの扇風機がキュート!
▼店内は広く、宴会もできそう。かつてはアルコールの持ち込みもOKだったとか
▼友人が食べていた日替わりの麻婆豆腐定食(税込600円)。これには杏仁豆腐がついてない。女性だけのサービスなのか
▼私が頼んだ単品半チャーハンと水餃子(合計税込740円)
▼五目焼きそば(税込670円)。本当は五目ラーメンが食べたかったがオーダーミスをしてしまった
▼ある日のBセット、とり野菜メン(税込600円)。あまり食欲がなかったので麺少なめにしたのだが、ご飯がついてきてビックリ。持ち帰らせてもらった
▼木くらげ肉卵炒め定食。チャーハンに変更(税込550円)。しかし個人的には白ごはんの方が、もっちりしていてお弁当では食べやすい
▼汐留駐車場お客様専用入り口第1階段(青)
▼汐留駐車場お客様専用入り口第2階段(黄色)
▼汐留駐車場お客様専用入り口第3階段(赤)
▼汐留駐車場お客様専用入り口第4階段(緑)。カラフルなのが戦隊レンジャーみたいで良いね
▼第4階段(緑)の脇には、日替わりメニューの看板が出ているので便利!
▼中銀カプセルタワービルの目の前に第2階段入り口がある
▼おまけに中銀カプセルタワービル
▼汐留駐車場のサイトを見たら、斎藤さんのシュールな似顔絵があった
▼お近くにお越しの際は是非! 赤い提灯が目印!
[ この記事の英語版はこちら / Read in English ]