
昨年、1カ月も経たずに全滅させてしまった悔しさを胸に、再び水生生物アルテミア(ブラインシュリンプ)の飼育を始めた筆者。
観賞魚の生き餌(いきえ)としてアルテミア飼育は広く行われているのだが、成体になるまで育てた例は少ない。
大人の財力とAmazonを駆使し、専用の孵化(ふか)器や人工海水を手に入れて飼育を始めたところまでが前回である。
・2日目~7日目
いまのところ順調である。元気に泳ぎ回っている。
孵化しきれなかった卵のために、しばらく孵化器をそのままにすることを決めたのだが、移しても移しても翌日には幼生を発見し、もうあきらめて孵化器は第2コロニーにしようかと思うほどの盛況である。
毎日のように見ていると、生まれたばかりの幼生と、ある程度時間が経った幼生とを区別できるようになってきた。本当に可愛いものである。このスキルが人生でなんの役に立つのかわからないが。
3日目、本格的にエサを与えてみる。とにかく「あげ過ぎ」に気をつけて、ほんの数粒だけ。昨年は水底にカビを生やしてしまうという事件があったので、とにかく水質悪化には注意だ。
・8日目、異変が起こる
順調に生育しているかと思われた初夏のある日。異変に気づいた。心なしか数が減っている気がする。
さらに翌日。一瞥(いちべつ)してわかるほど明らかに減って、過疎っている! そしてよく見ると、複数の死骸がからみ合って筏(いかだ)のようになったモヤが水面に浮いていたり、壁面に貼りついていたりする。
1匹1匹のアルテミアは、手を広げると十字架のように見える。1mmにも満たない無数の十字架が水底に沈んでいるのである。まるで使徒だ。大量死である!!!!
な、な、な、なにが悪かったのか、そういえば昨日は室内でも30℃を超える暑さであった。あるいは人工海水が合わなかったのか。いろいろ考えたが、どの仮説も間違っていることをすぐに知る。なぜなら……
もう1つの容器、孵化器では大量死は起こっておらず、相変わらず大賑わいだったからだ! なんでや!!
並べて置いてあるので水温や塩分濃度などの条件は同じである。決定的な違いは、孵化器は「一切の世話をせず放置してある」という点。
容器を洗って片付けるまでの仮置きであり、エサも1度も与えていない。卵のカラや、孵化に失敗した卵などが混ざった水で、本来それらのゴミを分離するための孵化器なのである。
もしかして自給自足型の生物なのか? 皮肉なことに、あれこれ考えて世話した方よりも、放置した方がよく育っているというこの事実……!
・改めまして12日目(新世代の1日目)
浮上した「エサいらないんじゃないか」疑惑。真相を確かめるため、新たな検証を開始する。まずは普通に孵化させ、3つの容器に分ける。3部屋あるアパートのようなものだ。
そのうち1部屋は「エサあり」、2部屋を「エサなし」にして比較してみたい。
エサなしのうちの1部屋は、孵化用の水槽に漂っていたカラなどの浮遊物を一緒に入れておく。もう1部屋は幼生だけをスポイトで移した、見た目にはクリーンな水である。
・18日目(新世代の7日目)
やはり……エサをあげた部屋だけ、明らかに個体数が減った。キットに同封されていたペレットは、毒のエサだったんだ!!
……というはずはない。明らかに、エサを与えることによる水質悪化が原因であろう。
結果を待っている間、いろいろな飼育記録を読みあさった。いずれにしても配合飼料(ペレット)は水質悪化を招きやすい、という結論に達した。
どうも見た目には透明な水で、悪臭などしなくても、アンモニア濃度とやらが上がって致死的な水質悪化を起こしていることがあるようだ。
鍵は……水質である。
・水替えするしかない
ここまででわかるとおり、アルテミアたちはカメラにも写らない小ささで、この記事の絵面(えづら)も地味すぎるものになっている。網や茶こしに引っかかるサイズではない。そんな小さな生物の入った水を、どうやって替えたらいいのか……。
スポイトにストッキングでネットを張ることを思いついた。自分、天才か。
と思ったのも束の間。伸縮性のあるストッキングは、アルテミアよりも遥かに大きく伸びてしまう。却下。
結局、走光性(光に集まる習性)を利用してアルテミアを1カ所に集め、人口密度の低いところから1プッシュずつスポイトで吸い出していくという、これまた気の遠くなるような作業をした。たしかに多くの個体は光に集まるのだが、中にはあまのじゃくな個体もいて完璧ではない。
・無念……
そんな努力もむなしく水替えから数日後、エサをあげていた部屋は全滅。2日ほど遅れて、エサをあげていなかった部屋も全滅。
もっとも長期生存したのは、孵化器で孵化したままエサもあげず放置していた初代の1匹で、3週間が過ぎた現在でも生存中である。3部屋アパートよりも水量が多いので、水質悪化の影響が少なかったのだろう。
ただし発育は極めて悪く、とっくに成体になるはずの1カ月を迎えても2~3mmのサイズである。
・最終結論
ネットなどで集めた情報を集約すると以下のようになりそうだ。
①先駆者によると、ベランダなど自然に植物プランクトンが発生するような状況が理想的。給餌も水替えもいらず、自然界に近い循環が起こる。
②人工的に給餌する場合も植物プランクトンがベター(ただしプランクトンの培養やpHの調整などやや専門的)
③配合飼料(ペレット)の場合は、水質悪化にか・な・り注意!
筆者の検証でも「1度でもエサを入れたケース」は明らかに全滅が早かった。かといってエサを入れないケースでは、生存はしても発育が悪い。
完敗である。こんな小さな生物なのに、自然界の営みを再現するのってなんて難しいのだろう。海や池や庭にたまった雨水は、一見すると濁った汚い水でも、微生物やプランクトンが絶妙なバランスを保っているのだ。
水道水のアクアリウムは、透明できれいだけれどもすぐに死の水になってしまう。悔しい。悔しすぎる。どうにかして水質を悪化させず十分な栄養を与える方法はないのか? 生命の神秘の探求はこれからも続く…………
……かもしれない。
執筆:冨樫さや
Photo:RocketNews24.
冨樫さや














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