
「口寂しい」という言葉がある。筆者はこの言葉が大好きである。「特に空腹ではないが何か口に入れたい気分であるさま」といった意味だが、これを「口寂しい」と表すところに日本語の妙を感じる。どんな時も臆せず「口寂しい」と言える日本人でありたいと常に思っている。
さて、今回紹介するのは、まさしくそんな「口寂しい」気分を解消するのにうってつけと思われる商品だ。その名も「罪なきとんかつ」。菓子メーカーの湖池屋がとんかつ専門店「和幸」監修のもと、大豆たんぱくを使用してとんかつを再現した、言わばヘルシースナックである。
2021年6月28日より全国のコンビニで(スーパーなどは7月5日より)発売された同商品だが、実は湖池屋の放つ「二の矢」だ。「一の矢」は遡ること約2年前、2019年9月に初めてお目見えした「罪なきからあげ」である。
この商品もまた「とんかつ」と同様、大豆たんぱくによって唐揚げが再現されたものであり、いずれも「罪なきシリーズ」として、罪悪感を抱くことなく気軽に食べられる点が前面に打ち出されている。
衆生(しゅじょう)を罪から救済する仏のような企業になりつつある湖池屋だが、果たして今回の「とんかつ」のクオリティはいかほどのものなのか。その味を確かめるべく、筆者は実物を購入した。価格は税込159円だった。
パッケージには、1袋あたり「129kcal」、「たんぱく質5.0g」、「糖質9.1g」の表記。ヘルシーにたんぱく質を摂取できることを数値が訴えている。とはいえ、いくらヘルシーでも美味しくなければ始まらない。
などと思いつつ封を開けると、とんかつとしか言いようがない香ばしい匂いがふわりと漂ってきた。
続いて中身を取り出すと、「小さなとんかつ」がお出ましした。稚魚ならぬ「稚とんかつ」といった風情だ。とんかつの端くれのように見えないこともない。匂いと見た目の再現度に、食べる前から軽く度肝を抜かれてしまう。
が、角度を変えて見ればスナックとしか言いようがない薄さであることがわかり、抜けた度肝がゆるゆると戻ってきた。感情を揺さぶられている。目の前の食べ物が不思議で仕方ない。そしてこの不思議さは、「罪なきからあげ」の時に覚えたものと同じだ。
相変わらず湖池屋のマジックはすさまじい。しかし真にすさまじいのはここからであった。
一口かじった途端、筆者は動揺に見舞われた。その理由を端的に書くなら、自分の口にしたものが「とんかつではないのにとんかつだったから」だ。何やらとんかつ問答をしているような文面になってしまったが、そうではない。感じたことをそのまま書いただけだ。
正直、歯触りや舌触りはとんかつとは程遠い。スナック感むき出しで、サクサクではなくパキパキしている。にもかかわらず、味はとんかつに相当近い。おまけに噛めば噛むほど深い旨味が染み出てくるようなジューシーさも備わっている。
この離れ業を成功させているのは、「和幸」が監修したという特製ソースの存在だろう。コク、酸味、スパイスの要素がふんだんに盛り込まれたソースのおかげで、とんかつ感が見事なまでに跳ね上がっている。
一方で、とんかつにはない一口サイズの手頃さ、胃に収まった時の軽さも認めないわけにはいかず、なんだかもう動揺せざるを得ないというわけである。
とんかつなのか、とんかつではないのか。2個、3個と口にするほどに、脳内にエラーが生じているような感覚が強まっていく。なんなら「入力されたとんかつは不正です」とダイアログも出ている。だが紛れもなくとんかつの味がする。「とんかつではないのにとんかつ」なのだ。
何より重要なのは、そのエラーが不快ではないどころか心地良く、このスナックが絶妙に美味しいということだ。「とんかつスナック」という奇跡の新ジャンルが確立されているということだ。
この商品さえあれば、もはや口寂しさなど感じようはずもない。それくらい魅了されてしまった。ただ惜しむらくは、一口サイズのスナックが8ピースしか入っていないので、ボリュームが物足りないと言えば物足りない。
もっと食べたいのに食べられない。美味しいのに食べたくない。この心模様を「切ない」とか「もったいない」とか表すことができるのも、日本語の妙かもしれない。
参考リンク:湖池屋「罪なきとんかつ」商品HP
執筆:西本大紀
Photo:Rocketnews24.
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西本大紀









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