突然だが、6月16日は “和菓子の日” だ。なんでも仁明天皇が御神託に基づいて6月16日に16の数にちなんだ菓子などを神前に供え、願い事をしたことに由来するという。
せっかくなので、あわせて今なお神様に奉げるお供え物として用いられる菓子を紹介しよう。餃子のような形をしており “ぶと” と呼ばれるものだ。それに倣(なら)った『ぶと饅頭』もリアルに販売されているので、購入してみたぞ。
・春日大社のお供え物として用いられる「ぶと」
奈良県の春日大社にて、現在も “ぶと” は祭事のたびに作られている。そもそもは奈良・飛鳥時代に遣唐使が伝えた、唐菓子の一種だ。
そして『ぶと饅頭』を販売するは、江戸時代から続く老舗御菓子司「萬々堂通則」。奈良県は奈良市に店を構えており、地元内外から客足が絶えない人気店である。
ぶと饅頭以外にも名物の菓子が多く、店にお邪魔するとついアレヤコレヤと買ってしまうことは、ここだけの秘密だ。
それにしても “ぶと” 饅頭とは、なんとも不思議な響きである。商品を購入すると付いて来る説明書きによれば、ぶととは「油で煮た餅と辞典にある」という。
そのほか様ざまな捉え方があるようだが、古くから使われてきた言葉のようだ。
・アレに近い味がする
購入したぶと饅頭(税込216円)は、紫色のさがり藤がプリントされた奇麗な包み紙にくるまれている。言わずもがな藤の紋様は、春日大社を表わしている。
包み紙を開くと、登場したのは少し焦げてしまった餃子のような何か。粉砂糖がしっかりと、まんべんなくまぶしてある。手でつつくと、そこそこ堅そうだ。
包丁を入れてみたところ、サクッという音と共に切れる。 “ぶと” は米粉を使っているようだが、饅頭の方は小麦粉を使用しているとのこと。
こし餡を小麦粉で作った生地で包み、油でカラッと揚げてあるのだ。切った断面を見た限りでは、皮の部分は薄目に、餡がたっぷり入っているようだ。
口に入れると、甘みが効いた歯ごたえのある生地とスッキリした餡の相性は抜群。砂糖がざらざらと舌に残る感じも、どこか懐かしい。これはアレですね。良く知っている、馴染み深い味だ。
そう、ドーナツに近いものがあるのだ。ひと口サイズの、上品な餡が入った、サクッとしたドーナツといった感じである。味はもちろん美味しい。
小ぶりなので、危うくパクパクと立て続けに食べてしまいそうになるほどだ。見た目も不思議な魅力があり、中身も間違いなしとあらば自分用はもちろん手土産にも最適。
奈良に来る機会があれば、ぜひとも立ち寄り購入してみてほしい逸品だ。どうしても気になる方は、オンライン販売もしているようなのでお試しあれ。
いやはやしかし。恐らく大陸から渡ってきたものを発端に、このような菓子が生まれていった過程を想像すると、なんともワクワクするな。
和菓子の日を機に『ぶと饅頭』をはじめ、日本の菓子について思いを巡らせてみてはいかがだろうか。
参考リンク:萬々堂通則「ぶと饅頭」、全日本和菓子協会
執筆:K.Masami
Photo:Rocketnews24.
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▼遣唐使がもたらした「ぶと」に由来する饅頭です
▼餡がギッシリ入っているよ
▼饅頭は小麦などを使って作られている模様