空前のアウトドアブームのなか、使用済みの焼き網や鉄板を放置などという信じられないニュースも耳にする。持って帰るのが面倒だから不法投棄だなんて言語道断だが、たしかに焦げつきや脂で汚れたグリルの始末というのは永遠の難題でもある。

100円ショップで網も五徳(ごとく)も手に入る時代だから使い捨てるのは簡単だが、そのたびに金属ゴミを生み出していてはエコじゃない。

そんな悩みを解決する、サステナブルな使い捨てグリルを発見。素材は竹やダンボールで、使用後には可燃ゴミとして処分可能だという。

……ってちょっと待て。「可燃」だったらBBQ中に燃えちゃうじゃないか! いったいどういうことだ?


・CasusGrill「クラフトグリル」(参考購入価格:税込1320円)

それはCasusGrill(カサスグリル)社の「クラフトグリル」というアイテムで、デンマーク生まれだそう。「土に還るエコロジカルBBQグリル」とある。

梱包サイズはA4をひとまわり大きくした、厚みのある雑誌のような感覚。約1kgと軽いのでトートバッグなどにも入り、抜群に持ち運びしやすい。

使用直前に開封するよう注意書きがあるのだが、それも納得。外袋を開けた途端、白い砂状の物質がバラバラとこぼれた。火山石だそうで「土壌改良材にもなり、植物に対して100%クリーンです」とある。

ダンボールの枠組みに炭がセットされており、周囲を前述の火山石が囲っている。


商品には丁寧な日本語説明書が入っている。最初に脚を組み立てるが、薄めの材質なので慎重に……。また、脚の高さもあまりないので、テーブルとのあいだに不燃材を敷くことが推奨されている。

脚を組み立てたら着火する。この炭がかなり便利! 4カ所にチョンチョンと着火するだけで、次々と隣の炭に燃え移っていく。すぐ全体に火が回った。

着火剤も不要で、むしろ他の着火剤を加えるのは厳禁とのこと。おそらくBBQ初体験の人でも、火起こしの苦労はまったくない。

全体的に白くなったら準備完了。竹棒でできたグリルをのせる。ここまでは非常~に簡単である。おそらく10分もかかっていない。到着して10分で調理スタートとは、かなりの時短。


・使用感

同サイズの炭が一面に並んだ構造で、火力は安定している。なるほど、炭の周囲をぐるりと囲んだ火山石が耐熱材となり、ダンボールに延焼することを防いでいる!

遠赤外線の効果か、焼き鳥など「ちょっと早いかな?」と思ってもしっかり火が通っている。旨い!

脂の多い食材だと竹棒が燃えることがある、と注意書きがあるが、ベーコンや豚ロースくらいならまったく平気だった。ただしアルミホイルをかけるなど、食材を覆うような調理法はNGとのこと。熱がこもらない状態を保つことが必要だ。

竹棒の隙間は2~3cmといったところか。この隙間から落ちてしまうものは焼けない。カット野菜などはあまり小さくしないよう注意が必要だろう。

実際、ときどき隙間から落下し、食材が灰まみれになるという悲劇が……。


また、これは炭なので当たり前だが、周辺部と中央部では温度が違うので、こまめに具材をローテーションさせるなど「火の番」は必須だ。生肉のような食材だと竹棒に張りつき、無理に引くとちぎれたり、グリルがズレそうになる場面もあった。

まぁ、いずれも「勝手がわからない」ために起きるもので、慣れれば問題ないポイントだ。欠点というほどでもない。

パンも焼ける。余分な水分が抜けてサックサクになり、トースターやホットサンドメーカーとはまったく違う驚きの食感に! バターだけでいくらでも食べられる!

調理可能時間は約60分間とある。実際に60分経過後に食パンを追加で焼いてみたところ、ちょっと目を離した隙に焦げるほどの火力を保っていた。普通の使い方であれば60分は十分にもつだろう。


・後始末で本領発揮

では後始末をしたい。前段までは「商品の特徴じゃなく、炭火焼きの特徴だろ」といいたくなったと思うが、ここからが本領発揮である。

炭はほぼ灰になっているので、キャンプ場などのルールに従って捨てよう。写真で焼け焦げている部分は、竹棒の隙間から落下したエリンギである。

なんといってもグリル本体の素材は竹棒とダンボール。竹棒は燃やしてしまってもいいだろうし……

ダンボールは手で簡単に分解して可燃ゴミとして処分できる。食材の脂が染みているので、資源ゴミとして扱うのは難しいかもしれないが、いずれも自治体の基準に応じることになる。

ちなみにCasusGrill社の公式ページを読むと、創業者の2人が登山中に使用済みアルミトレイが散乱する様子を見て衝撃を受け、「自然素材のグリルを作ろう」と思い立ったことがきっかけだという。

使用後に焚き火で燃やしてしまうことを想定しているようだが、この辺り日本とはちょっと事情が異なる。筆者の知る限り、焚き火のようなオープンな状態で紙類を燃やすことは、風にのって火が飛ぶなどの危険があるため推奨されない。

火山石だけは不燃物として残る。冷めたらポロポロに粉砕可能。「使用後は土壌改良材に」とあるので、庭や家庭菜園があれば再利用できるだろう。

もし廃棄したい場合は、自治体によっては回収してくれたり、業者に引き取ってもらうなどの方法があるようだ。自治体の対応によって、このグリルの利用価値がだいぶ変わる! 園芸用土の処分方法を調べておくとよさそう。


・総評

最初から炭がセットされており、チャッカマンの1本もあれば、開封から調理開始まで超高速。火力も安定している。竹棒の隙間にさえ注意すれば、どんな食材でも美味しく調理できると思う。

シンプルに炭火で焼いた肉や野菜は、ただそれだけで美味しい。小型軽量で設置もしやすく、グリルとしては必要十分。便利に使えるアイテムだ。

一方で、後始末に関しては火山石が大きなポイント。庭などがなく、火山石を簡単に廃棄できない地域に住んでいるとなると、処理に困る側面はありそう。たぶんCasusGrill社のある北欧とは住宅事情も違うだろうし。

けれど「山を美しく保ちたい」という創業者の考えにはすごく共感できる。すべてが天然素材からできているという、こだわりの商品だ。火山石を簡単に処理できる環境なら、かなりオススメである!


参考リンク:Amazon(商品ページ)、CasusGrill公式サイト(英語)
執筆:冨樫さや
Photo:RocketNews24.