鳥取県出身の私が東京へ移り住んで何より驚いたのは『板わかめ』の知名度が絶望的に低いということ。板わかめはほぼ全ての山陰地方民がオヤツ代わりに食べて育つご当地フードだ。てっきり全国どこの家庭でもそうだと思ってた……。
板わかめが全国的に知られていない理由は、おそらく “渋すぎる見た目” と “先入観” のせいではなかろうか。板わかめは確かにワカメではあるのだが、皆さんがイメージする一般的なワカメとは全くの別モノ。言い換えればワカメの進化系『わかめ2.0』なのだ。
この感覚、1度でいいから全国民に体験してほしい……!
・ローカル中のローカル
板わかめ1袋の全長は約40×30cmと巨大。今ふと気付いたのだが、知名度が低い理由のひとつには “大きさゆえの流通しづらさ” があるかもしれない。
板わかめの正体はワカメを板状に加工したもの。それは見事なまでの一枚板……ならぬ一枚ワカメであり、ソーッとやれば約40×30cmそのままのサイズで袋から取り出すことができる。
ただし板状のワカメは非常に脆(もろ)い。扱いに慣れた山陰民でも、買い物カゴから取り出す時などにウッカリ折ってしまうケースが目立つ。
私は今回、地元に帰省して板わかめを購入。慎重にスーツケースへ詰め込んだのだが、やはり飛行機移動中にボロボロになってしまったようだ。まぁ味は同じなのだけれど、できれば板わかめは板のままの状態が美しい。購入する際は注意してくれ。
・我が家の作法
さて板わかめの最大にして唯一ともいえる特徴は “パリパリとした食感” である。一般的にワカメとはヌレヌレでクタクタなものだから、パリパリ状態がイメージしづらいという人も多いだろう。そんなワケで板わかめは湿気に弱い。開封後はなるべく早めに食べ切る必要がある。
板わかめの保存法に関しては、同じ山陰でも様々な作法があることだろう。ヨソの家庭のことはよく分からないのだが、「少なくともウチの一族はこうやって保存してたよ〜」ってヤツを参考までにご紹介しておきたい。まず板わかめを袋ごとハサミでチョキリ……
適当なサイズに切り分けたら適当な空き缶やタッパーに入れ……
フタをすればOKだ! これならある程度は湿気を防ぐことが可能。山陰地方の食卓にはこういった謎の缶が置かれていて、各自食べたい時に板わかめを食べられるシステムが構築されているのである。
気になるお味は、ショッパくて磯の風味が濃厚。お酒のツマミに最高だ。
子供のころは “茎の部分” があまり好きではなかったが、大人になるにつれ「茎が醍醐味」と感じるようになってきた。あまり食べすぎると塩分過多になるから注意な!
・ここからが本番
さて……板わかめの大きい部分を食べ進めていくと、袋の底に細かいわかめクズが残る。
このクズたちの使い道はというと……
白米にぶっかけちゃうのだ!
板わかめの真の実力は、白米にぶっかけた時こそ発揮される。むしろ「わかめクズになってからが勝負」と言っても過言ではない。「お前ごときが山陰代表ヅラするな」という意見もあるかと思うが、私がこれほど自信を持って断言するのには理由がある。
当サイトには山陰の大先輩こと島根県出身の佐藤記者がいるのだ。
・山陰地方民の総意
全国的にみて島根と鳥取(山陰地方)出身者は非常に数が少ない。それが1つのサイト内に両方揃っている確率は、おそらく天文学的数値なのではないだろうか? よって当サイトの見解は、ほぼ山陰地方民の総意とみていいはず。
残念ながらこの日は佐藤記者が不在だったため、佐藤記者と仲がいいYoshio氏(練馬区出身)に板わかめご飯を試食してもらった。仲がいいってことは味覚も似ているに違いない。
Yoshio「うん、うまい!」
佐藤記者本人にもチャットでコンタクトを取ったところ、ありがたくもコメントを寄せて頂いたぞ。みんな心して聞くように……
佐藤「板ワカメはガキの頃からよく知ってる。おばあちゃん家の食卓にはいつもあった。でも、全然好きじゃなかった。食べると苦いし口の中の水分を奪われるから、美味しいと思ったことがなかった。
大人になって……、やっぱり好んで食べないなあ。地元の名産なのに、美味しい食べ方を知らない……」
…………いや好きじゃなかったんかーーーい!!! 山陰地方民にも色々な人がいるよネ。あ、ひょっとして佐藤記者、板わかめご飯を知らないのかな? 念のため今度伝えておこう。板わかめは1年を通して購入できるが、シーズンは春先〜初夏ごろ。つまり今が「ジャスト旬」である。
価格も質もピンキリ(だいたい300〜1000円ほど)で、島根・鳥取両県の色々なメーカーから販売されているぞ。原材料の欄をよく見ると外国産だったりする場合もあるから、山陰を訪れた際は各自の好みを探してみてほしい。通販や物産館でも買えるよー!
執筆:亀沢郁奈
Photo:RocketNews24.